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一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがヤバすぎた。改訂版  作者: たまご
第六章 消えた村。

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第四十二話 調査。

「福助、〈風魔法〉!」


「にゃ!」


 ごおごおと音を立てて風が巻き上がり、魔物の群れが吹き飛ばされていく。


「みんな、かかれ!」


 りゅうたろう達がいっせいに残った魔物達に飛びかかっていく。

 すでに福助の〈風魔法〉によって虫の息だった魔物達は、あっという間に猫達にやられてしまった。


「せり、〈気配察知〉。残った魔物がいないか確認して」


 せりがぴくぴくとひげを動かした。

 やがて、せりは私の顔を見て胸を張った。

 どうやら全滅できたようだ。


 私達は村の入り口へと向かった。

 村はぐるりと先の尖った木製の柵に囲まれていて、入り口の前には武器を持った村人らしき人達が立っていた。


「あ、あんた、どうやって、ここに……」

「森には魔物の大群がいたはずだ」


「ギルドからの依頼で来ました。魔物は全滅させました」


 私の言葉に村人達は顔を見合わせた。


「じゃあ、俺達、助かったのか……?」

「やった!」


 武器を放り投げて歓声をあげる。


「怪我人の手当てをします。中に入れてください」


 村人達ははっとしたように私を振り返った。


「はい!」

「怪我人は村の集会所で、女達が看病しています」


 集会所に向かいながら、村人はぽつりと言った。


「まさか、助けが来てくれるなんて……」


 私の顔を見て、苦笑いを浮かべた。


「小さな村ですからね。見捨てられても不思議じゃないし」


「この村の出身だという人から、ギルドに依頼があったそうです」


 何週間も前から村と連絡がつかない。

 きっと何かあったのだ、と。

 たまたま居合わせた私に、調査の依頼が回ってきた。


 キングの〈空間転移〉で村の近くまで来たら、森の中は異常な数の魔物であふれかえっていたのだ。

 うん、依頼を受けたのが私達でよかった。

 あの数の魔物を相手に出来る冒険者は限られているし、一度ギルドに戻るような事になっていたら、この村は手遅れになっていたかもしれない。


 集会所に入ると、中は包帯を巻かれた人や寝込んでいる人でいっぱいだった。

 看病している女の人達もずいぶんと疲れているようだった。


「みんな、助かったぞ!」

「この人が魔物を退治してくれたんだ!」


 一瞬の沈黙のあと、歓声があがる。

 泣き出してしまった人もいた。


「チャビ、〈回復〉」


 チャビがごろごろとのどを鳴らし始めた。


「あんた、もしかして、《猫を連れた冒険者》なのかい?」


「はい」


 私はにっこりと笑って答えた。


「じゃあ、《竜殺し》の……」


 そっちには触れないでください……。





 商業都市ターコイズのギルドに戻ると、受付の女の子が書類を出してきた。


「つかささん、ギルドからの指名依頼があります」


「ギルドからっていう事は、また調査?」


「はい。いつもなら川向こうの村から品物を売りに来る時期なのに誰一人来ない、と」


 近くの街からギルドに連絡があったらしい。

 最近、この手の依頼が受ける事が多い。


 一瞬で遠くまで行き来が出来て、戦闘能力も申し分なく、なおかつ回復も出来る。

 そんな連中を遊ばせておく道理はない、とここのギルドマスターは豪快に笑って言った。

 無限収納があるから物資の運搬も可能だ。


 まぁ、どこかのアホな金持ちにドラゴンを生け捕りにしてこい、と言われるよりはましだしな。

 ちなみに、その金持ちはよつばの〈魅了〉で、身寄りのない子供を保護している施設に財布の中身を全て寄付させた。

 どうやら全財産の三分の一を持ち歩いていたらしく、しばらく寝込んだらしい。


「川向こうっていう事は、橋が落ちたとかもあるよね?」


「そうですね。川の氾濫や土砂崩れなどの可能性もあります」


 魔物ならギルドの管轄だが、自然災害は街や国が対応に当たる。


「その場合は?」


「住人の安否を確認しだい、ギルドに戻って状況を報告して下さい」


 あとはギルドが引き継いでくれるらしい。


「分かった。この依頼、引き受けました」


「お気をつけて」


 キングの〈空間転移〉で川の近くまで移動した。

 川の流れは思っていたよりも早い。

 橋は向こう側から落ちたらしく、こちらの方に残骸がぶら下がっていた。


「あー、やっぱり橋か」


 この世界の通信技術は、向こうと比べるとだいぶ遅れている。

 橋が落ちて孤立し、外部と連絡が取れなくなったのだろう。

 んー?

 でも、氾濫したってわけでもなさそうだが。


 せりがイカミミの警戒状態になった。

〈気配察知〉だ。

 ……この感じだと盗賊か。 

 わざわざこんな辺鄙な場所に来て、ご丁寧に橋まで落としている。

 おそらく、お尋ね者だろう。


「……急いだ方がいいな」


 村人を救出しつつ、盗賊を捕まえなくてはならない。

 さて、どうするか。


 ふ、とため息が出た。

 私のスローライフは、いつになったら出来るのか……。

 まぁ、いい。

 とりあえず盗賊どもをボコってウサを晴らすとするか。


「りゅうたろう、ドラゴンちゃんと上空で待機」


 ドラゴンちゃんの背中に、ひらりとりゅうたろうが飛び乗った。

 これで盗賊の気はそらせるだろう。


「せり、〈隠密〉」


 せりを抱きかかえる。

 せりと一緒に、私の姿も見えなくなったはずだ。


「キング、〈空間転移〉」


 村の中に移動すると、突然現れたドラゴンに大騒ぎになっていた。


「おかしら、どうします!?」

「ド、ドラゴンなんて、どうすりゃ……」


 上空ではドラゴンちゃんが旋回している。

 下からは、背中に乗っているりゅうたろうの姿は見えない。


「騒ぐんじゃねぇ!」


 座ったまま怒鳴り付けているあの男が、こいつらのリーダーか。


「村の連中を喰わせりゃいいだろ。腹一杯になりゃ帰るさ」


 そう言って、品のない笑い声をあげた。

 ……クズだな。


「頼む! 村のみんなには手を出さないでくれ!」


 縛られていた男の人達が叫んだ。

 顔が腫れ上がり、身体中アザだらけだ。

 足が変な方向に曲がっている人もいた。


 チャビがちらちらと私の顔を見た。

 うん、分かってる。

 私はチャビの頭を撫でた。

 もう少しだけ、待っていて。


「もちろん、一番最初に喰わせるのはお前らだ」


「……」


「逆らったら、あいつらのいる建物に火をつけるからな」


 人質がいるのか。

 男の人達は、悔しそうに盗賊どもを睨み付けた。


「なんだ、その目は!」


 蹴られた男の人が吹っ飛んだ。

 ……!!

 いや、まずは人質を解放してからだ。


「よつば、村の方にいるやつらを〈魅了〉」


 村人は閉じ込められているようだから、今いるのは全て盗賊の一味だろう。


 よつばは、もふもふのしっぽをぴんと立てて歩きだした。


「あん、なんだ、ありゃ?」

「猫じゃねぇか、ほっとけ」


 こういう時、猫はいいな。

 怪しまれずにすむ。

 しばらくして、よつばが戻ってきた。


「にあん!」


 よし、終わったか。


「行くよ!」


 突如、姿を現した私達に盗賊どもはぎょっとした様子だった。


「な、なんだ!?」

「てめえ、どっから来やがった!?」


 答える義理はないな。


「チャビ、〈雷魔法〉!」


「にゃお!」


 轟音と共に雷が落ちた。

 地面が黒く焼け焦げる。


「おこん、行け!」


 おこんが盗賊どもを引っ掻いて回る。

 チャビの〈雷魔法〉とおこんの〈引っ掻き〉を組み合わせると、麻痺の確率がほぼ百パーセントになるのだ。


「こいつ、《猫を連れた冒険者》か!」

「逃げろ!!」


 おこんが引っ掻きそこねた連中が慌てて逃げ出した。

 橋もないのにどこに逃げる気だ。

 まぁ、逃がす気もないけどな。


「キング、〈影魔法〉で拘束!」


「にゃう!」


 キングが鳴くと、盗賊どもの影が地面に張り付いたように動かなくなった。

 それと同時に、本体も一歩もそこから動けなくなった。

 あとは。


「くぅ、やっておしまい」


「あぉぉぉ!」


「あれは、まさか、《黒の魔王》!?」

「ひぃぃ!」


 盗賊どもに容赦なく火をまとった岩が降り注ぐ。


「ぎゃあああ!」

「助けてくれー!!」


 ふむ、駆除完了だな。




「チャビ、〈回復〉」


 チャビがごろごろとのどを鳴らし始めた。


「動かないでくださいね」


 ナイフで村人を縛っていたロープを切っていく。


「村の外れの建物に人質がいるんだ!」

「あいつら、逆らったら火をつけるって……」


「大丈夫。そっちは終わっています」


「え?」


 人質にされていた村人達がよつばに連れられてやってきた。

 女性や子供が多い。


「無事だったか!」

「父ちゃん!」


 無事を喜び合い、村人達が歓声をあげる。

 見張りの連中はよつばの〈魅了〉で操られて互いを縄で縛り、最後の一人は自分で木に頭をぶつけ、目を回したらしい。

 それを、今まで村人達が捕まっていた建物の中に逆に閉じ込めてきたのだそうだ。


「怪我人はほかにいませんね?」


「はい、大丈夫です」


 村長だという男の人が頷いた。

 盗賊のリーダーに吹っ飛ばされていた人だ。


「食料などの不足は?」


「保存してあったものは、やつらにあらかた食われてしまいました」

「畑は無事なので収穫すれば大丈夫です」


 なら、日持ちのするパンやチーズを置いていこう。


 とりあえず、橋の修復か。

 そっちは私の管轄外だ。

 ギルドに報告だな。


 あ、忘れていた。

 外に出て、りゅうたろう達に手を振って合図する。


「もう、いいよ!」


 村の広場にドラゴンちゃんがゆっくりと降りてくる。

 驚く大人達とは逆に、子供達は目を輝かせてドラゴンちゃんを見ていた。


「そのドラゴンも、あなたのですか?」

「じゃあ、《竜殺し》の……」


 ……お願いだから、そっちには触れないで。


 とりあえず、橋を臨時で渡れるようにしておきたい。


「向こう側にぶら下がっている橋をこっちに持ってくれば直せますか?」


「応急手当てでよければ」

「でも、流れが早くて……」


 川中での作業は無理だということか。

 多分、せりにクラーケンを召喚してもらえば何とかなるだろう。

 まぁ、その前に村人達に驚かないように言っておかないとな。


 それにしても。

 うちの子達はドラゴンちゃんも込みで有能すぎる。

 これじゃ、ギルドマスターが仕事を押し付けてくるわけだよ。

 遠退くスローライフを思って、私はため息をついた。




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