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一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがヤバすぎた。改訂版  作者: たまご
第五章 神の息吹。

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第四十一話 影。

 さて、これからどうするかな。

 武器と魔炎石との合成には一週間ほどかかるらしい。

 ガーネットに宿を取って……。

 いや、ダメだ。

 火の神様が押しかけてきかねない。

 んー?


「お、まだいたな」


 悩んでいると、ギルドマスターが声をかけてきた。


「……」


「どうした、渋い顔をしやがって」


「いや、ギルドマスターに声をかけられる時は大抵ろくな事がないもので……」


 私の言葉を聞き、ギルドマスターはにやりと笑った。


「いい勘だな」


「……で、なんですか?」


「ドラゴン退治を頼みてぇんだよ」


 本来、ドラゴン退治は百人規模の体制で行うものだ。

 しかも、ドラゴンも冒険者達もぼろぼろになってようやく決着がつく。


「私に声をかけたという事は、素材目当てですか」


 りゅうたろう達が狩ったドラゴンは、かみちぎった翼以外全て素材として使えるようだった。


「無論、それもあるんだけどよ」


 ギルドマスターがあごを撫でながら言った。


「噴火騒ぎの時に地下迷宮から逃げ出した魔物を狙って現れたらしくてな」


 魔物を狙うという事はかなり狂暴なドラゴンだ。


「今、この街にはそんなドラゴンを相手に出来る冒険者は数がいねぇしな」


 んー? どうするかな。

 キャットハウスからくぅが顔を出した。


「にゃお!」


 ……分かりましたよ。

 りゅうたろう達に先を越されたくぅは、どうしてもドラゴンを狩りたいらしい。


「ドラゴン退治、引き受けました」


「なるべく綺麗な状態で頼む」


「猫に言ってください」


 それもそうだと、ギルドマスターはくぅの顔をのぞき込んだ。


「黒焦げとかはやめてくれよ?」


「にゃお!」


 くぅはそわそわした様子で私を振り返った。


「ご飯、食べてからね?」


 でないと、〈魅了〉スキル持ちになったよつばが何をするか。

 いや、食べ物を貢がせるだけだな。

 ……ドラゴンの食べ物? いや、考えるのはやめておこう。


「場所を教えてください」


 ドラゴンの出現を待ちながら、テントを張ってご飯にすればいいだろう。

 ガーネットにとどまっていると、また火の神様の話を聞かされる気がするし……。




 ご飯を終えると、くぅ達はドラゴンを探しに出かけた。

 りゅうたろうはドラゴンちゃんと一緒に空から、あとは、くぅ、チャビ、福助の戦闘タイプの猫達だ。

 ……チャビは癒し系だったはずなのだが。


「おこん達は危ないから近くにいなさい」


 おこんだけは不満そうにしっぽをばんばん地面に打ち付けていたが仕方がない。

 さすがに、狂暴なドラゴンに単独で挑むには無理がある。


 せりは〈召喚魔法〉を使えるようになったが、クラーケンは水辺の近くでしか呼び出せない。

 よつばは食べられる獲物にしか興味がないので、元々ドラゴンは狩りの範囲外だ。

 キングは今のところ、〈空間転移〉しか使えない。

 まぁ、ほかの猫達の事を考えれば、キングもそのうち新しいスキルが使えるようになるだろう。


「気をつけて行っておいで」


 暗くなっても猫達には関係ないから、しばらくは戻ってこないだろう。

 のんびり、コーヒーでも飲みながら待つとするか。


「静かだねぇ……」


 それにしても、いろんな神様がいるものだ。

 今まで女神様としか話した事がなかったけれど、みんな自分の護るものを大事に思っている事には変わりがなかった。


「……」


 穏やかな性格のドラゴンちゃんの襲撃。

 百年ぶりのクラーケンの出現。

 数十年前に姿を消したはずのフラーの大群。

 火山の封印のための魔方陣の損傷。


 全てが不自然だ。

 その内、少なくともクラーケンと魔方陣の二つには古代神語が関わっている。


「……」


 誰が、何のために?

 今まで何度もよぎった疑問だ。

 ばれないように行動しているところをみれば、各国を守護している神様達を敵に回したくはないのだろう。


 んー?

 そういや、魔導の塔のやつが古代神語らしき言葉で呪文を唱えていたな。

 あの頃は理解出来なかったから、何を言っていたかは分からないが。


「……ん?」


 空気が震えるような咆哮が聞こえてきた。

 ばっさばっさという羽音が近付いてきている。

 ……嫌な予感がする。


 やがて見えてきた巨大な影。

 あれは、もしかして、くぅ達が探しているドラゴン……。

 何で、よりによってここに現れるんだよ!

 私、戦闘力0なんですけど!?


 巨大な影が上空を覆う。

 ヤバいな、これ……。

 せりがいないので〈隠密〉も使えない。

 隠れようにも、ここには岩影一つない。


 詰んだな……。

 いや、二回までならお稲荷さんのくれた御守りでしのげる。

 でも、そのあとはどうする?


 ふっ、とキングが〈空間転移〉で現れた。

 大きなレッドバードをくわえてご機嫌な様子だ。

 だが、私よりドラゴンに近い!


「キング! 逃げなさい!!」


 私はドラゴンの気を引こうと大声で叫んだ。


「こっちだぞ! こっち!! こっちに来い!」


 叫びながらばたばたと手足を動かし、なるべくドラゴンの目がこちらに向くように暴れる。

 だが、ドラゴンが向かったのはキングの方だった。


「キング!!」


 逃げて! 早く!!


 巨大な影がキングに近付く。

 その瞬間。

 とぷんっ、とキングがドラゴンの影の中に沈んだ。

 ……え?

 消えた? 〈空間転移〉か?


 ドラゴンの影が、ドラゴン本体から切り離された。

 夕焼けに照らされていた影は長く伸びていて、本体のドラゴンより大きい。

 巨大な影が立ち上がり、咆哮をあげる。


 影とドラゴンが戦いを始めた。

 空中で激しくぶつかり合い、互いの首に噛みつき、絡み合ったまま落下してくる。

 上になったドラゴンが影を地面に叩きつけようとした直前に影が消えた。

 次の瞬間、ふっと影がドラゴンの上に現れた。

 そのまま、影がドラゴンの頭を地面へ踏みつける。

 ドラゴンはしばらくもがいていたが、次第に動きが鈍くなり、ぴくりともしなくなった。


 ドラゴンの影は空気に溶けるように消えていった。

 そして、倒れたドラゴンの体の上にはキングが立っていた。

 もしかして、とスキルを確認する。


 キング 〈影魔法〉 影を操る。


 そうか、キングにも新しいスキルが……。

 でも、無事でよかった。


「キング!」


 キングは一目散に私の所に駆けてくると、膝の間に顔を埋めた。

 そうか、怖かったか……。

 巨大なドラゴンが横たわっているのを見ながら、私はため息をついた。

 でも、これ、キングがやったんだよな……?




「……お疲れ様でした」


 そう言って、女神様はうかがうように私を見た。


「大変、でした」


 私は、大変、のところに力を入れて言葉を返した。


「すみませんでした!」


 女神様が頭を下げる。


「神様達はみんなアレだし、猫達はエラい事になるし」


「すみませんでしたってば!!」


 だから、こうしてお詫びの品を用意していたでしょう、と女神様が言う。

 わざわざ向こうの世界から取り寄せた品物が並んでいる。

 チューブ入りのわさびもあった。


「そういえば、つかささん、新しい通り名がついたんですよね?」


「……」


 あのあと、ものすごく大変な事になっていた。

 りゅうたろう達だけではなく、キングにまで先を越されたくぅの機嫌が底抜けに悪くなり、一声鳴くだけで世界を滅ぼしかねなかったのだ。


 仕方なく、あちらこちらのギルドで狂暴なドラゴンの情報を仕入れて現地に向かったのだが。

 しかし、どういうわけか、くぅの前にだけドラゴンは現れなかった。

 ほかの猫達がドラゴンを狩るなか、くぅだけは一頭も取れず、機嫌は下降する一方だったのだ。

 結局、くぅが今までで一番大きなドラゴンを狩るまで連戦するはめになり、ついた通り名が《竜殺し》だった。


 いや、狩ったのは猫だし!

 私はその間地面に木の枝で落書きしてただけだし!!


「でも、ドラゴンの気持ちも分かりますけど」


「え?」


「怒り狂っているくぅさんの前に姿を現すなんて……」


 いえ、雄姿は見たいんですけど、ものすごく、と女神様は悶えている。


 そうか、それでか。

 ドラゴンでさえ、くぅには恐れをなしていたのか。

 どうりで、おこんやせりによつばまでドラゴンを狩ったのにくぅだけなかなか狩れなかったわけだ。


 魔王様、ご健在です……。






                  第5章 完。


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