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一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがヤバすぎた。改訂版  作者: たまご
第二章 魔導の塔。

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第十七話 魔導の塔。

「キング、〈空間転移〉。目的地はターコイズ」


 おおらかな福助と違い、見た目とは裏腹に怖がりなキングは私に近づいてこようとしない。

 嫌がってないで、さっさとしなさい!

 緊急事態なんだから!




「あら、お久し振りです。旅に出たんじゃ……?」


 私を見たターコイズの冒険者ギルドのお姉さんは首を傾げた。


「達成済みの依頼書って、どこにあるの?」


「それなら、右の棚にありますよ」


 この世界に知り合いはほとんどいない。

 ギルドのお姉さんや、ラーラ達ラピスラズリの人間が猫達に何か仕掛けてくる理由はない。

 心当たりがあるとすれば、しつこく依頼を出していた魔導の塔だけだ。


 事務処理スキル、発動!

 

 ……。

 …………。

 ……………………。


 ない!


 「おかしいな。絶対これがらみだと思ったのに…」


 んー、もしかして?

 新しく書類の束を取り出してきた。

 再び、事務処理スキル発動!


 …………。

 あった!


 小型のドラゴンの目撃情報関連の依頼は取り下げられていた。

 つまり、魔導の塔はドラゴンではなく、猫だということを認識したのだろう。

 猫を連れて歩く人間は珍しいから見つかってしまったのかもしれない。


 依頼を取り下げた日付を確認すると、コーラルの水かけ祭りの日だった。

 ……待てよ。

 コーラルでは、りゅうたろうはキャットハウスの中だったはず。

 猫を連れていないのに特定したということは。


 ……つまり。


 まずい! 私の素性がばれている!


「よつば、〈解除〉」


 よつばが前足をちょいちょいと動かし、私に仕掛けられていた「なにか」を解除した。

 これで、向こうにも私が気付いた事を知られてしまっただろう。

 一刻も早く、ここから離れないと。


「りゅうたろう、行くよ」


 小さくなったりゅうたろうが、ひらりと肩に飛び乗った。




 キングの〈空間転移〉で学園都市トパーズに移動した。

 ここは人口も多いし、よその街と違って様々な人種がいる。そう簡単には見つからないはずだ。


 猫神の神殿に向かう。

 猫神を祀った場所に、猫を連れた人間がいても気にはならないだろう。


「さて、このあとどうするか……」


 神殿の隅に腰を下ろし、対策を練る事にした。


 多分、女神様なら喜んで猫達をかくまってくれるだろう。

 だけど。

 女神様はみんなに慕われている。

 これ以上、私達だけのために動いてもらうのは申し訳ない。

 しばらく身を潜めるべきなのだろうか。


「……」


 ………なんだろう。すっげームカついてきたわ。

 今後の事を考えているうちに、ひどく腹が立ってきた。


 そもそもは、くぅをひどい目に合わせた魔導の塔の連中が悪いわけだし。

 それなのに何で被害者のこっちがおどおどびくびくせにゃならんのだ。


 私達はこの世界を自由に旅したいだけなのに。


「……いっちょ派手にかましますか」


 そうと決まれば行動あるのみ。

 私は立ち上がり、猫達をキャットハウスから呼び出した。


「キング、〈空間転移〉。目的地は」


 アレキサンドライト、魔導の塔。


「くぅ、ぶちかますよ!!」




「これか」


 キングの〈空間転移〉した先は、あの時、くぅがいた鐘のある高い塔だった。

 塔はぐるりと蔦でおおわれていた。


 チャビの〈回復〉で建物は真新しくなっているはずだから、この短期間で蔦が生えるわけがない。

 入り口が見当たらないところをみれば、この蔦で外部の人間が入り込むのを防いでいるのだろう。


 一見さんお断り、ってとこか。

 生意気な。

 我が愛刀、草刈り鎌の切れ味を思い知らせてやる!


 猫達を離れさせ、私は片手に草刈り鎌をかまえた。


「行くぞ!!」


 ずばずばと蔦を切り裂いていく。

 蔦の残骸が積み重なる。

 ピコン!

 スキル〈草刈り〉がレベル7になりました。

 そんな言葉が頭に響く。


 ふっ。また、つまらぬものを刈ってしまった。

 庭の雑草なめてんじゃねーぞ、コラァ!


 さて、気を取り直して。


 猫達を振り返り、それぞれに指示を出す。

 私に仕掛けられた『何か』は、よつばのおかげですでに効果はない。


「せりは〈気配察知〉。危ないと思ったら、みんなに教えて」


 せりがひげをぴくぴくと動かした。


「よつばは〈解除〉。結界とか魔方陣とか、かたっぱしから解除してね」


 よつばは、もふもふのしっぽをぴんと立てた。


「キング」


 キングは大きな目で私を見上げた。


「あんたは危ないと思ったら、せりとよつばを連れて逃げなさい」


 せり達は戦闘向きのスキルを持っていない。


「チャビとおこんは、キャットハウスで待機」


 チャビとおこんも同様に戦闘向きではない。


「りゅうたろう、大きくなって」


 ひらりと肩から飛び降りたりゅうたろうが、虎ほどの大きさになった。

 最大で、建物ごとぷちっ! も有りだろうが、それじゃこっちの気がすまない。

 楽に逝けると思うなよ?


「福助、全力で〈風魔法』〉」


 キリッとした顔で、福助が魔導の塔を見上げる。

 張り切ってるな、福助。


「くぅ。好きなだけやりなさい」


 くぅの金色の目がぎらりと光った。


 まぁ、猫の目は元々光るんだけどな……。


「行くよ!!」




 いやー、派手にやってるなぁ。

 大暴れする猫達を見ながら私は半笑いになっていた。


 福助は風魔法で部屋をめちゃくちゃにし、くぅは水魔法で水浸しにしている。

 りゅうたろうが叩き壊した変な形をした壺から出てきた怪しげななにかは、よつばが解除した。

 ……なんか向こうの世界を思い出す。


「ふすまとか、ぼろぼろにされたっけ……」


 ん?

 そういえば、こんなに部屋を荒らしているのに壁には傷一つついていない。


「魔法で造ったレンガとかなのかな……?」


 それにしても、こんなに派手に暴れているのに誰一人来ないとは。

 おそらく、どこかで罠でも仕掛けて待ち構えているのだろう。

 さて、どうするか。


「上に行くか……?」


 悪い奴は大体高い所にいるものだ。

 しかし、悪巧みの仕掛けは何故か地下にあったりする。

 どちらを優先するべきか。


 悩んでいると、せりが下に向かう階段の前で私を振り返った。


「下に、何かあるんだね?」


 イカミミの警戒状態ではないから、それほど危険でもないだろう。

 のぞき込むと階段の下は暗くて私にはよく見えなかった。

 ただ、私と同じように下をのぞき込んだりゅうたろうはけろりとしている。


「いいよねー、猫は」


 暗くても見える猫達と違って、私には灯りが必要だ。


 えーと。


 周囲を見回すと、灯りのともっていない蝋燭を見つけた。

 近くにあった燭台に突き刺し、くぅに火を着けてもらう。


「ちょっと待ってよ」


 ゆっくりと歩く私を置いて、りゅうたろう達はさっさと階段を降りていってしまった。

 降りた先で、せりが扉をカリカリ引っ掻いている。


「開けてほしいんだね?」


 両手で扉を押す。ひどく重い。

 ……そういえば、よつば、あんた開けられるんじゃ?

 振り返ると、よつばは知らん顔で顔を洗っている。

 単に面倒だっただけだな!?


 蝋燭をかざして部屋の様子をうかがう。


「!」


 大きな魔方陣の中心に女の子が座っていた。


「あ……」


 女の子が身体を動かすと、じゃらりと音がした。


「!?」


 女の子には鎖のついた首輪がつけられていた。

 あの時、くぅの足元に落ちていたのと同じものだった。


「よつば、魔方陣と首輪を〈解除〉」


 よつばが前足をちょいちょいと動かすと、首輪が音を立てて落ちた。


「大丈夫?」


 声をかけると、少女は驚いたように私の顔を見た。


「エルフ語が話せるの?」


 エルフ語?


 蝋燭をかざすと、長い金色の髪の間から尖った耳がのぞいていた。

 エルフだったのか。暗くて気付かなかった。


 この世界の言語は、基本的には統一されている。

 地域ごとに独特のなまりがあるくらいだ。

 ただ、種族が違うとなまりがきつくなるらしく、それを「人語」「エルフ語」「ドワーフ語」などと呼んでいるらしい。


 私は女神様に自動翻訳機能をつけてもらっているから、あまり関係ないんだよなぁ……。


「立てる?」


 エルフの少女はこくりと頷いた。


「とりあえず、上に行こう」


 地下から出ると、少女は眩しそうに目を細めた。

 明るい所で見ると、薄汚れてひどく痩せていた。


 急いで無限収納から水と蜜飴を取り出した。

 差し出すと、水をがぶがぶと飲み、口一杯に蜜飴を頬張った。


「そんなに一度に食べると喉がつまるよ」


 口をもぐもぐとさせながら、少女は涙ぐんでいた。


「空蜂の蜜、懐かしい……」


「……」


 これで、はっきりした。

 魔導の塔の連中はおかしい。

 くぅだけでなく、こんな女の子まで鎖に繋いで飢えさせるやつらは許さなくていい。


 私の顔を見た少女が、一瞬怯えたように肩をびくりとさせた。

 ごめん、怖かったかな?


「ルッコの実で作ったジュースもあるよ。飲む?」


 本当はスープとか食べさせてあげたいが、今の状況では難しい。


 少女はぎゅっと、木で作られたコップを握った。


「ごめんなさい」


「大丈夫だよ。たくさんあるから」


 少女は小さく首を振ると、うつむいてしまった。


「……猫達のこと、あいつらに教えたの私なの」


「え?」


 「私、私には、〈とおみ〉の力があって、それで、猫達の、事が、見えて、だから……」


 途切れ途切れに、少女が言葉を紡ぐ。


 なるほど、〈とおみ〉っていうのは遠くが見えるって意味か。

 それで、私の素性がここの連中にばれたんだな。


「ごめんなさい……」


「仕方ないよ。ひどい事されてたみたいだし」


 それに。


「見てたんなら、うちの猫達の凄さが分かるよね?」


 少女が顔を上げた。


「この塔、ぶっ潰しに来たんだよ」


 私の言葉を聞いて少女は笑った。


 ……もしかして、ラーラ達が隠れて住んでいたのも特殊な力があったから?


 まあ、いい。

 今やることは決まっているのだから。






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