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26話 次への可能性

「これが狩人の世界だ。今更、引き返す事はできない。だから、強くなれ!」


 右手を大きく振りながら、レオンハルトは低い声で告げた。そして全員が前を向く。


「確かに怪異は怖い。どれだけ訓練を積み重ねても、本物の前では手が止まる場合がある。それは恥ではない。それが正常だ。だが正常であり続ける理由にはならない。正常を超えて、動けるようになるまで、繰り返す。今日は、その一回目だ」

「……次はもう少し動けますか、私……」


 細い声でルシアが言った。


「動けるかどうかはお前が決めろ。俺が決めることではない。……ただ、手が震えた状態で銃を構え続けたのは事実だ。お前は逃げなかった。銃口を下げなかった。それは動けていた部分だ」

「でも……撃てなかった……」

「ああ、確かに撃てなかった。しかし、構えていた。構えていたからこそ、次は撃てる可能性がある。逃げていたら次はない」

「はい……次は撃ちます」


 ルシアは少しだけ外套の裾を握る。まだ黒く染まっていない、新しい外套の裾を。


「ああ、そうしろ」


 それだけ言うとレオンハルトは死体(怪異)の処理を行う。

 呪術薬品を死体に塗布し、特殊な燃料で焼いた。


 雪の上で燃える怪異の死体は、通常の火とは違う色をした炎を上げる。

 青白い炎が、夜明けの光の中で、薄く燃える。その炎を全員が黙して見ていた。

 炎が消えた後、路地には何も残らない。ただ雪の上の黒い血の染みだけが残った。


「……よし、帰還するぞ」


 腕を組みながらレオンハルトが指示を出す。そして、一班が歩き出した。

 来た時と同じ道を、来た時と違う重さで歩く。外套の重さが、行きと帰りで、違うように感じた。


 ルシアは前を向いて歩く。隣にはマリアンヌがいた。

 彼女(マリアンヌ)は何も言わない。ただルシアの隣を歩いていた。

 王都の夜明けが、石畳を橙色に染めてゆく。

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