前へ目次 次へ PR 95/107 バイバイ、アゲハ 緑のサナギが羽化した朝 透明の抜け殻のそばに 蝶がぶら下がっていた 黒と薄黄色の翅が ステンドグラスみたいな ナミアゲハは 網戸でしばらく休んだ後 目を離したすきに いなくなった 広い世界へと 羽ばたく瞬間を 見たかったのに そう思った時 南側のベランダを 過(よぎ)った小さな影が 東の窓を横切った それから わざわざUターンして また南へと飛び去った それから 初夏の景色に紛れて消えた バイバイ、アゲハ 空(くう)を見た バイバイ、アゲハ 見えなくなったアゲハを ふたたび 青い空に探した