前へ目次 次へ PR 94/107 魔女の住処 汽笛のように風が鳴る 遠い記憶の部屋 裏の林で拾った栗は 硬くて小さくて 手から滑って 古畳に転がった 風の鳴る小さな家は 魔女の住処のようで 薄ら闇のあちこちに 何かが潜んでいた つましい食事をする 笑わない魔女の 骨ばった手を ただ眺めていた 優しさと孤独 寂しさと自由 そんな手だった 月の不思議を物語る 低い声 すすり泣くような 風の声 現像されずに 仕舞い込まれていた フィルムの潜像が 遠い記憶として 顕(あらわ)れる夜 あの人はやっぱり 魔女だった そう思いながら なぜか安堵して 眠りにつく