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幻影水晶
ゆらゆら揺れる黒髪
きらきらキラめく鱗
シャチの巨大な影を横切り
熱帯魚が群れをなす
トロピカルな輪をくぐり抜けて
人魚が海を潜ってゆく
ガーデンイールが
一斉に頭を出した
海の底で見つけたのは
砂に埋まった心臓
光と影が揺らめいて
ハートの形の水晶が
鼓動していた
なぜだかわからぬまま
人魚は涙を流した
涙は海水に混ざることなく
ポロリポロリと砂に落ちた
ゆらゆら揺れる
海の果てを見上げ
それから
ずっと昔に住んでいた
空の果てを思った
水晶の58個の切子面が
きらきらと光を放った
星の記憶を放つかのように
すべては泡のよう…
人魚のつぶやきが泡になって
ひとつずつ水中光をのぼり
消えていった




