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第16話 想像力よどこへ行く

少し、時間が開きましたが、投稿させていただきます。


 

 あ~この人達いつも突然こんな事やってるんだ。これは目立つし、アホな事やってるんやなぁ、と見ていると周囲の人達はの中には、おっいつもの二人じゃないの、またやってるねぇと声をかける人もいた。あ~日常なのねこれ・・・鏡は苦笑していた。


 お騒がせしてすいませんと、慎と優希は周囲に向かってペコペコを頭を下げ、三人は足早にその場を去った。

 どうやら優希君は、打ち合わせも終わり打ち上げという事で、スタッフ達と食事に行っていたそうだ。その打ち上げの店に行くときに偶然ホテルに入って、車を停めて歩く二人を見かけたのだという。たしかに、あの車目立つもんね・・・。しかも、この辺りで慎君がいきそうな店は、あの焼き鳥屋くらいしかないはずという当たりをつけていたそうだ。

 さすが・・・慎君の親友だわ・・・行動範囲把握されちゃってるよ。あれ?でも、出る時間まではわからないよね?行くときと、行った場所は分かったとしても、出る時間まではわからないよね・・・まさか、待ち伏せ?などと考えていると。


「あ~ちなみに、焼き鳥屋の斜め前にあるあの店見てみてよ。」

 指をさした先のお店には、ガラスの向こうでさっきのスタッフ達が手を振っていた。呆気にとられる慎の顔をみた優希が、すまんな出るとこ見てたんだわ。そして、進む方向を走って先回りして突撃したってわけだ。と説明したところで、慎に立ったまま肘関節を極められていた。

「ヘ~ルプ!いや、ほんとごめん、今回は悪ふざけが過ぎたし、怪我までさせちまって悪かったと思ってるから・・。イタタタ、マジ勘弁してくれ・・・ギブギブ。」

 そう言いながら、慎の体をタップしていた。

「ほんと、やめろよなぁお前・・・今回は、ちょっと痛かったぞ~?なにより恥ずかしいだろ。」

 関節技を解除され、優希はまた両手を合わせ謝っていた。そのやり取りを見ていた鏡は、普段からこんなやり取りばっかしてるのかと思うと、慎君体大丈夫なのかな・・・あっそうだ、慎君頭から血を流してたんだった!止血しないといけないと思い出した鏡は、

「慎君、頭の怪我大丈夫?これで、傷口押さえて病院行かないと・・・」

 心配そうにハンカチを渡し、優希に向かい直し

「優希君!これはひどいと思うの、こんなに血を流すなんて、大怪我やで。当たり所悪かったりしたら、何が起こるかもわからへんで。こんなんこれからはやめてほしいわ!」

 その勢いに、たじろぐ優希は心底申し訳なさそうだったが、慎が鏡の肩を掴み慎に自分へ手繰り寄せ、

「心配してくれてありがとう。鏡さん、でも本当に大丈夫だよ?ほら、血も止まってるしさ。それにこれくらいの傷はたいした事ないんだよ。もっと、酷い怪我をすることが稽古やってるときは、多々あるからこんなのは軽傷のうちなんだよ。だから気にしなくて大丈夫なんだ。優希も反省してるし、許してあげてほしい。それに、酒を飲んでいたとはいえ、油断してた俺にも問題があるからさ・・・」


 そう諭すと鏡は、そんな大怪我するような稽古って、普通じゃないでしょと思いながらも本人が許しているのだから、仕方がないなと諦める。

「慎君がそういうならしょうがないよな。でもなぁ、お酒を飲んでたとはいえ、油断してたって言ってたけどねぇ。慎君、あんたどこの武人やねんなぁ。命狙われるような事ないやろうに、まぁ優希みたいなやつがいるから油断でけへんのやろうけど・・・」

「いやぁ」と言いながら頭を掻いている優希を睨みつけると、優希は「あははっ」と乾いた笑いを浮かべた。

「大体な、彼女になったんやから、他の人より慎君のこと心配して当たり前なんやで?だから、心配させらんといてや・・・?」

 瞳を少し涙で潤ませ、上目使いキター!と全俺の細胞が乱舞してますよ!これは、いかん抱きしめていいですか?いいよね?いっちゃっていいよね?と自問自答し、そっと両手を伸ばし恐る恐る鏡を抱き寄せた。


「ありがとう・・・そんなに心配してくれて、ホント嬉しいよ・・・ありがとう・・・」

 それ以外に言葉が見つからない。俺は、なんて語彙が少ないんだ・・・この気持ちを言葉に表現できないのがもどかしかった。

 そして鏡も、慎の背中に手をまわし抱き合った。


 たまったもんじゃないのは、優希君。

「あの~、ゴメン。取り込み中で悪いんですが、俺打ち上げに合流しないといけないんで、戻っていいですか?」

「「いいよ。」」

 溜息をつきながら、とぼとぼと去っていく優希だったが、思い出したかのように振り返り、


「なぁ、慎。初彼(はつかの)おめでとう。鏡さんも、慎の事気に入ってくれてありがとう。慎の事、よろしくお願いします。」深々と頭を下げる優希を見た二人は、


「さっきは、感情的になっちゃってごめんなさい。驚いて、血が出て心配しちゃったから・・・。私にとっても、初彼(かつかれ)だから色々デートコースとか教えてね。あ、あと慎君の昔話とかね!」ウィンクをされた優希は、了解と微笑みながら、サムズアップで返事をしていた。


「あ~、優希悪かったな。また、今度会ったときゆっくり遊ぼうな。」

「気にすんな。また連絡するよ。じゃ、また」

 照れくさそうな慎をみて、優希もまた嬉しそうに去って行った。


 優希が去った後、二人は顔を見合わせそっと手を繋ぎ、歩き出した。歩き出したものの、カラオケに行く気分にはなれない二人は、そのままホテルに戻り、鏡が慎の怪我をしたところを確認しようとすると、

 血は止まっているから、大丈夫だよと笑いながら拒否された。だが心配していた鏡は引くことはできなかった。

「慎君からは、怪我の状態みえないでしょ?縫わないといけないような傷だったらどうするの?」

 優しく諌めるように、慎をまっすぐ見据えて説得する。諦めた慎は、「わかりました。お願いします。」と言葉短く、不安そうに鏡を見る。そんなに不安なら、駄々をこねずにとっとと見せればいいのにと考えながら、慎の頭部の怪我の状態を確認しようとした。血が固まり、髪が絡まっている事を見た鏡は、顔をしかめる。

 こんなに血が出てたんだ・・・それが、軽傷だなんて信じられない。優希君も、出血に関して慌てている様子はなかった・・・どうして・・・まぁ、それよりも傷の状態を確認しよう。


 傷口を確認するため、髪の中を優しく探りながら傷口を探すが、見つからない。血の出ていたであろう場所には、傷がないのだ。ひょっとしたら、別の場所かもしれないと頭部をまんべんなく確認するが、見当たらないのだ。腕を組んだ鏡の頭の上に、「?」が飛び交っていた。

 それに気づいた慎は、引きつった笑顔で「ねっ?血が止まってるから、大丈夫でしょ?」とこの話は、終わりにしましょうと声をかけ、汚れたからシャワー浴びてきますねと逃げるように浴室に入っていった。まぁ、体に問題がないのなら心配する必要もないかと、釈然としないが無理やり納得する事にした。なぜなら鏡にとって今問題なのは、慎がシャワーを浴びている事だった。


 わかってるんだよ、わかっているんだよ?吹っ飛んで汚れたり、流血で汚れたりしてるからだってことは・・・他意はないってことくらいは・・・でも、付き合った当日に、ホテルって早まりすぎたかな・・・だって・・・キャー~まさか、そんなことならへんよね?チューもまだなんやで?やっぱ、今日はチューだけして寝ちゃおうかな、でも、そんなんしたら、慎君も男やもんな・・・我慢できなくなったら、やっぱくるんかなぁ。きたら、どないしたらいいかな・・・などと自問自答しながら、枕を抱きしめベッドの上で悶えていた。


 その頃、シャワーを浴びていた慎はというと、

 あ~、よかった・・・傷の事深く追求されなくて、気味悪がられたりしないか不安だったけど、そんな事はなくて心底安心していた。

 頭の傷口は、自然治癒力を促進させることで、驚異的な速度で傷口を塞ぎ、出血量を抑えた。また、流れた血は、体の造血力を意識的に向上させ補完は完了した。焼き鳥屋で、食事をしていたおかげで、造血するにあたっての栄養分は事足りていた。

 嫌な能力(ちから)だ・・・これのおかげで、自分が人とは違うと幼いころから父や祖父から、隠すことを教え込まれていた。そして怪我をしないようにと身を守るためにと、爺さんから色々と稽古を受けていたが、稽古の時の怪我や流血のほうがよっぽどまずいんじゃないかという事が、多々あったのは懐かしい話しだ。

 溜息をつきながら、髪にこびり付いた血や、埃を洗い流し排水溝に流れる血混じりの湯をじっと見つめていたが、透明な湯に変わると慎は目を見開いた。

 そして、何かを確認するように唾を呑み込み、突然両手で頭を抱え、その場にしゃがみ込んだ・・・


 なんてこった・・・ホテルで鏡さんと二人っきりしかも、我先にとシャワーを浴びている・・・これって、どうなんだ、ありなんだろうか?いや、俺は怪我をしていた、流血をしていたというのも分かってるはず、だから意味深にはとられていないはずだ!あわわわわ・・・どうしよう、付き合っていきなりホテル取るとかもよく考えたら、意味わかんねぇよな、引かれてる?いや、引くよね・・・まだ、キスもまだなのにホテル取るとか、一瞬で輪廻転生するみたいなもんじゃないのよ。いや、まずは落ち着け素数を数えるんだ・・・


 二人は、同じように慌てふためいて今後の起こり得るであろうエロスな想像などに耽ってしまうのだった。


 俺は、落ち着きを取り戻しまずは、バスタブを洗おうと思い立った。血が混じった湯がバスタブについていた為だ。後で、シャワーを浴びるであろう鏡さんに気持ち悪がられるとたまらない。そうだ!お湯も張ってゆっくり浸かって、今日の疲れを癒してもらおうと考え、バスタブを懸命に磨いていた。


 そんな事をしているなんて露知らずな鏡は、慎君遅いな・・・なんかあったのかな、やっぱりあんなに血を流してたからお風呂で倒れてたりしないのかそう心配を始めるのだが、もし単に長風呂だと恥ずかしいイベント発生するのは目に見えているため、バスルームに踏み込むかどうしようか悩んでいた。

 そうだ、別に踏み込まなくても、声かけるだけでいいやん!なんで、踏み込むことしか考えてなかったんやろ?べ・別に慎君の裸を見たいからそれしか思い浮かばなかった訳じゃないんだからね!


 慎の安否確認をするため、バスルームの外で

「慎君、大丈夫倒れたりしてない?」恐る恐る声を掛けドアに耳をつけ返事を待つと、うっすらと、よいしょよいしょと掛け声をしながら、なにかやっている。なにをしてるんだろ、男の子が掛け声しながらする事って・・・まさか・・・一人で・・・

 などと見当違い甚だしい想像をしていた鏡だった。そうとも知らずに、懸命にバスタブを洗い続ける慎であった。


 バスタブを洗い終わり湯を張り始め、備え付けの寝巻を身に纏い一仕事を終えた~と恍惚とした表情でバスルームから出ると、じっとりとした目で慎を見る鏡がいた。

 あれ?俺なんかしたかな、はっ!まさかいきなりホテルだなんて、はしたないとか呆れてるんじゃ・・・でも、それなら最初の鍵をもらった時にそうなりそうだしな・・・う~ん

 悩む慎を相変わらずじっとりと見つめていた鏡は

「慎君!お風呂でナニしてたん?お風呂長いから心配してたんやで?倒れてへんかと思ったんやで?声かけても返事ないし、なんか掛け声みたいなんだけ聞こえてきたから、大丈夫やと思ったけど。」

 あぁ、長風呂で心配してくれていたんだ申し訳ない事をした・・・そう思い、

「ごめんなさい。ちょっと、一生懸命にやりすぎてたんですよ。」そう返事をすると、やっぱり・・・と呟き鏡の顔がみるみる真っ赤になり、視線を逸らされた。なんでだ?なんか変なこと言ったか、俺?

「あのね、慎君・・・男の子やから、色々我慢できない事もあると思うけどな。うちと二人でいる時に、その・・・一人でする事ないと思うねん。ゴニョゴニュ」言葉尻が小さくなっていくのを、聞いていた慎は、あぁお風呂を一緒に洗いたかったのかと、これまた見当違いをしてしまった。


「大丈夫ですよ!一人で十分ですよ?だって、こういうのって、一人でするもんじゃないですか。」これを聞いた鏡は目を見開き、

「やっぱりそうやったんやね!もう~、慎君なんぼ気持ちいいからって、お風呂長すぎるし、そんなんする為にお風呂使わないほうがいいんちゃうかな?後から入るうちも恥ずかしいわ・・・」


 ん?何か噛みあってないな・・・そう気づいた慎は首を捻り考える。

 お風呂入る→汚れ落として気持ちいい→俺、風呂洗う→掛け声出す→満足して風呂から出るこうした流れだったはずだ。しかし、カガミンは顔を赤くしているそして、さっきなんて言った?一人で何してた?気持ちいいから長い?少し、考えると、まさか、でもそう考えると今の状況に合致するよな・・・・あぁ・・・神よ・・・カガミンは大きく勘違いをし、奈落の底に落ちてしまったのか・・・

 結論がでた慎も顔を真っ赤にしながら、

「いやいやいや、あのですね。僕一人Hなんて風呂でしてませんからね?ほんとに!」

「嘘や~。だって、一人で十分って言うてたやんか、それに気持ちよさそうな顔で満足そうやったし、よいしょよいしょなんて掛け声まで!どんだけ気合入れてんのって思ったんや・・・」

「あの・・・バスタブ洗ってたんで、掛け声みたいなのは出てたんでしょうけど、そもそも一人Hでそんな掛け声しないでしょうに・・・。血の付いたバスタブだと、気持ちのいいもんじゃないでしょうから、洗ってたんですよ!」

 それを聞いた鏡は、あわわわと慌てふためき更に顔が赤くなった。そして両手で顔を隠しながら、バスルームへ逃げ込んだ。

バスルームからは、「ごめんなさい!壮大な勘違いでした!ごめんんささい。」恥ずかしさを紛らわすかのような、噛み噛み謝罪が聞こえてきた。

若干、能力が出てきてどうなることやら・・・

不安いっぱい夢いっぱいです。

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