第15話 予期せぬ攻撃
結局、お酒を飲むことになるので、焼き鳥屋近くのホテルに部屋を取って車を停め、店に向かった。部屋を取るときはお互い気恥ずかしい空気が流れたが、二人はへらっと照れ笑いをしながら部屋の鍵を貰った。
二人は、チューハイで乾杯し焼き鳥に舌鼓を打ちながら、
「あっおいし~!つくねお願いしま~す。慎君は何追加する?」
「そうですねぇ。皮を塩でお願いします!いやぁ、しかし、うまいですねぇ!」
そういいながら、他にいくつか追加注文をする。
この店は、爺さんに何度も連れてきてもらったことのある店で、普段から優希とも来ている。店長も、覚えてくれているようで、
「あいよ、追加ありがとう。しかし、久しぶりだねぇ。慎ちゃんは、優君とよく来てるけど、左衛門さん元気?ここ二ヶ月ほど見かけないもんだからさぁ。」
少し心配そうに店長は、聞いてくる。たしかに、ここ最近は、来てないなと思いながら、
「あぁ、これでもかってくらい元気ですよ。店長心配してたから、顔出せって言っておきますよ。いや、連れてきますわ。あはは。」
「そりゃ、結構なことだ!あの人、酒強いからいくらでも飲むからなぁ、売り上げもよくなるよ。」
ガハハと気持ちの良い笑い声が、店に響いた。相変わらず、元気で気持ち良く話しするおっちゃんだな、と思いながら笑っていた。すると他の席から注文の声がかかったので、後でなと慎たちの席を後にする。
鏡は、嬉しそうに笑いながら慎に
「よく来てるんだ、ここ。」と話しかける。
「えぇ、口にあってるんで、焼き鳥ならここですよ。優希ともよくきますしねぇ。まぁ、もともとは爺さんに連れてきてもらったのが、きっかけですけどね。」
「今まで、他の女の子と来たりしたことは~?あるでしょ~?やらしいんだ~♪」
顔を斜にして、悪戯っぽく笑いながら聞いてきたので、慎は噴出しそうになったが、惨事にはならないよう両手で口を押さえ、
「いやいやいや、二人っきりで来たことなんかないですよ!三人以上でならありますけど!鏡さんとが初めて・・・です・・・。」
言ってて恥ずかしくなってきた・・・どうしよう・・・
「ふふふ・・・そんな思いっきり否定せんでも、ええやんか。余計疑ってまうわ。」
鏡は、笑いながらそう答えた。慎は、思い出した。出会った時の台詞そのままだった事に・・・
「今の台詞、神社で初めて会った時の台詞そのままですね。」
懐かしそうに、鏡を見るとみるみるうちに鏡の顔が紅くなっていく、
「・・・そんなん覚えてくれてたん?・・・」
もう心臓バクバクですね、こんな表情見たら抱きしめたくなりますが、ここは公衆の面前です。そんな事をしたら、他のお客様に迷惑です!なんてことを考えながら、萌え死にしそうな慎だった。
「おぼえてますよ~。だって、あのシチュエーションはなかなか忘れることできないですよ?鏡さんとの、出会った思い出ですからねぇ・・・まさか、いきなり突っ込みがはいるとは思いませんからビックリしましたよ。」
しみじみと思い出すと、あの場所で出会えたのも神の思し召しかな、まさか両想いになるなんて、思わなかったもんなぁ・・・神様!ありがとう!脳内でガッツポーズする慎だったが、
「慎君、どうしたの?ガッツポーズなんかして・・・」キョトンとした表情で慎を見つめていた。
声は、出ていなかったが、行動はしてしまっていたようで、顔が紅くなり、いやいやなんでもないですと、適当にごまかす事にした。それから、二人はお酒のおかわりと料理の追加をして、話し続けていたがいい感じにお酒が回ってきた慎は、
「これからどうします?カラオケとか、いきます?それいいですねぇ、鏡さんの声もっと聴きたいですしね。聴かせてくださいよ~。」
気分がよくなり、体を揺らし話し方がおかしくなっているのは、自身にはわかっておらず、純粋に鏡と一緒に遊びたいと思いながら、誘っているのだが、その様子をみて鏡は苦笑していた。
「慎君、ちょっと酔ってるね~。大丈夫?もうお腹もいっぱいだし、とりあえず出よっか?カラオケ行くまでに、酔いさまそうね。お愛想お願いしていいですかぁ?」
やった~っと嬉しそうに、返事をする慎をみた店長が、
「はいよ。ありがとう!しかしまぁ、こんな嬉しそうに、無邪気な慎ちゃんみるの初めてだわ。御嬢さん彼女さんかい?」
鏡がにっこりと頷くと、鉢巻をした店長は顔を綻ばせ
「そうかいそうかい、そりゃよかった。昔からいつも、おとなしくいい子だったけど、こんな風になってる慎ちゃん初めてだから、嬉しくなっちゃうよ。背伸びした子供みたいな子だったからねぇ。これから仲良くしてあげてね。」
慎が、どれだけ気にかけてもらっているか分かり、嬉しくなった鏡は
「はい。わかりました。今度来たときは、昔の慎君の事も教えてくださいね。本人が嫌がっても聞きますから。」
朗らかに笑いながら、近いうちに来ることを伝えると、店長はそりゃいいや、ちょっと意地悪でもしようかね、と気持ちよく笑っていた。あれ?なんか慎君静かだねぇ・・・と思ったら、うとうとしてるじゃないの。お酒がそんなに強くなかったようだ。勘定をすませた鏡は、慎の体を揺らし、起きてもらい店を後にした。
カラオケ屋に向かうため軽い足取りで、ニコニコと笑っている慎をみて、鏡はこんなに素直に好意を向けてくれることに、幸せという水で満たされたプールに浮かぶような感覚を覚えた。
そんな感覚に浸っていると、進行方向十二時から、「おぉお」と声を上げながら猛スピードで駆けてくる男がいた。その男は、その勢いのまま慎とすれ違うことなく、二人の手前で跳ねた。
「食らえ、慎~!天空十字アタックぅぅ~!」
楽しそうにそう叫びながら、男は両腕を記号の「×」のように交差させ、慎に向かって突進してきた。
そのまま慎君にぶつかって慎君は吹っ飛んだ。どうしようどうしよう~慎君、大丈夫?と慎に駆け寄るが、慎は手を使わず体が跳ねるように立ち上がった。首を回し、ゴキゴキを音を立てていた慎を見た鏡は少し安心した。だが、次の瞬間に慎の顔を見た鏡は、声が出なかった。
「おい・・・お前なんで、ここにいるんだ・・・・しかも、気分よく酔って、鏡さんと至高のひと時を過ごしているというのに・・・」
完全に酔いがさめているようだったが、慎君の頭からは血が流れていたのだ。眉間を伝い、顎から滴り落ちていたのだ。慌てて、ハンカチを出して、顔を拭おうとしたが、慎に手で制された。鏡は、さっきの跳躍攻撃をしてきた相手を見て驚く・・・。
「優希君、なんで・・・?」
なんでいるの?なんでこんな事するの?など頭に浮かぶが、言いたいことが色々あって言葉にできない。
血を流している慎を見た優希は、少し慌てていた。
「えっ・・・慎・・・・マジかよ・・・受け身とらなかったのか・・?」
「いきなりすぎて、とれなかったんだよ!大体、お前と外であったらいつもいつも激しすぎるんだよ!あ~クソ!いてぇなぁもぅ・・・」
「す・すまん・・・。まさかおまえが、こんな大雑把な攻撃をまともに受けるなんて、初めてだったから・・・え~と、いや本当にすまん。」と驚きと、申し訳ないという気持ちが全面に出し、両手を合わせながら頭を下げていた。




