第13話 幸せな食卓
読んでいただきありがとうございます。連続投稿です。
二人が警察署を出ると、外は日が落ち真っ暗だった。慎は時計を確認すると、針は8時を指していた。
「少し時間かかりましたね。お腹へりません?」
「当たり前~ですよ~。今日は、エネルギー使いまくりですから、カロリーの消費半端ないですよ。」
にへら~と笑う鏡を見て、さっきまでの事情聴取の緊張から解放されるのを感じた。
夕食のため、車を走らせどこに行こうか悩んだが、慎の頭に浮かんだのは、お好み焼き・ラーメン・ハンバーグ・焼肉の4つだった。これってどうなんだろうと、考えていたが
「今日の私は、高カロリー摂取希望ですよ。焼肉・ラーメン・ハンバーグなどなんでもござれですね。」
鏡の言葉を聞いて、笑ってしまった。考えていたメニューが一緒だと思い、
「あはは。僕も、同じメニュー考えてました。後、お好み焼きもありましたけどね。」
笑いながら答えると、
「おっ、お好み焼きいいねぇ。それに決定しませんか?」
首を傾げながら慎の顔を見る。だめだ、早く何とかしないと・・・何を?と自問自答しながらも、鏡の可愛らしさに、ノックアウトされている。
「わっかりましたぁ!おねぇ様!我々はお好み焼き屋に突撃します!」
左手で敬礼の真似事をして返事をすると、鏡もまた右手で敬礼の真似事をして
「うむ!よきにはからいたまへ。」
妙なテンションになりながら、お好み焼き屋へと向かうが、ここで忘れていたことが一つあったのだ。慎はすっかり失念していた。
二人はお好み焼き屋に到着すると、順番待ちをしている家族連れが皆、こちらを見て、指さすのだ。そう、お好み屋では、まぁ見かけることのない車のためだった。しまったと思ったが、ここから別の店に行くのも面倒なので、並ぶことにする。並んでいると、幼い子供たちが、お兄ちゃんかっこいい車だね~、と満面の笑みで話しかけてきたので、
「そうかい?よかったら中に乗ってみる?」
と思わず言ってしまった。しまったと思ったが、もう遅かった。
「「乗る~!」」
兄弟の手を引き、すいませんすいませんと連れて行こうと頭を下げる母親だったが、子供たちからのブーイングに根負けしたのか、父親に順番待ちしてもらい、連れて行くことなった。
「すいません。迂闊なこと言ってしまって、ご主人さんに申し訳ないです。」
母親は、いえいえこちらこそ貴重な体験させてもらってありがとうございます、と謝意を伝え
「ほら、早く交代で乗らせていただきなさい。あっ写真撮ってもいいですか?」
慎に、確認をしてきたが、子供乗せるのなら写真は当然撮るものだと認識していたので、問題ないですよ、どうぞと伝えると、嬉しそうに写真を撮っていた。どうやら、母親も車は好きなようだった。反対にご主人さんは、車にそれほど興味がなく、おっすごい車がきたな程度らしい。
ある程度写真を撮って、順番の席に戻ると待っていた鏡が微笑みながら
「慎君って優しいよねぇ。嫌な顔せず乗せてあげるんだねぇ。」
なにか嬉しそうに話しかけられ、慎は少し照れてしまった。
「いや、そんな事ないですよ?だって、乗ってみる?なんて言ったのは僕なんですから、やっぱダメなんて言えないですよ。」
「ううん、それでも子供の夢を叶えてあげたって事には変わらないんじゃない?だから、良いことなんだよ、きっと。そうじゃないと、あんなに幸せそうにあの子達笑わないよ?」
そう言ってさっきの兄弟に目をやると、父親に車に乗った感想や、走ってもいないのにすごく速かったんだよ、ロボに変身するんだよ、ボタンいっぱいあったんだもん!など、想像を興奮しながら話している。父親は、
「すげぇなそれ!父ちゃんもロボに変身するバイクとか欲しいな!お前ら、いつか創ってくれよ!」
「「まかせとけ!!」」
父親は、どうやらバイクのほうが好きなようだったが、子供たちの将来、一つの目標となる夢ができたんなら嬉しいと思う慎だった。
順番が回り、席でお好み焼きを焼きながら、鏡が今日はほんとイベント多すぎだったねと少しお疲れ気味のようだった。しかし、充実した一日だったという空気が充満していた。
「でも、イベントと言うには、最後はハードだったよね。慎君、命の危険にさらされたもんね。あれ本物だったんでしょ?」
そう、あの男がもっていた銃のような物は本物の銃だったのだ、どこから入手したのかは、これからの捜査だそうだが、慎は半分玩具だと思っていたのだが、どちらでも変わりはないさ、と軽く考えていた。
「そうですよね~玩具だと思ってたから、ビックリですよ。怖いですよね。」
嘘だ、まったく怖くなんてなかった。仮に本物だとしても、回避し対処は十分できたので、万に一つの怪我も考えられなかった。慎にとって最悪のパターンは、殺してしまうことだった。
「でも慎君、余裕だったでしょ?焦りもなにも感じられへんもん。やっぱ慎君おもしろいわぁ。あれって、似非カフェで話してたやつやんなぁ、お爺さんの稽古ってどんなんやったん?きつかった?」
見破られている事に苦笑しながら、今までどんな稽古をしていたかを話すことになったが、それはあくまで話せる範囲だ。正直あまり話したくはないのだ、ほんと死ぬかと思ったことは何度あった事か・・・それに比べたら今日の事なんて、防具をつけた剣道の試合のようなもの程度にしか感じなかった。興奮気味に、話しを聞いていた鏡は、
「ねぇ慎君」
「ん?なんですかね。」
「今日一晩一緒に過ごさない?」
突然のお誘い文句で、口に運んでいたお好み焼きで火傷をして、落としてしまった。その狼狽ぶりに、鏡は自分の言った言葉を思い返し、
「いや、あの、そういう意味でゆうたんちゃうで?明日も休みやから、もっと話し聞きたいなぁと思ってな。無理なら、断ってくれたらいいんやで?車の中とか、ファミレスとかで話せたらなぁと・・・」
顔を真っ赤にしながら誤解を解こうとしている姿を見て、ほんと可愛い人だなと思いつつ明日の予定を思い返すと、明日の予定はなにもなかったはず、だから問題なしだが、いいんだろうかと腕を組む。
「そんな深く、考えんでもええで?カラオケでオールするみたいなもんくらいに考えてくれたら。」
あぁそう考えたらねと、気持ちが軽くなる慎だった。
快諾した慎は、自分たちの周囲の空気が重くなるような感覚を覚えたので、見渡すと周囲のテーブルに座っている客達が負の思念を体に纏って、慎を横目に見ていた。
あっ前は俺そっち側にいた人だったな・・・気持ちはよくわかります・・・と少し俯きながら、お好み焼きを食べ、店を後にすることにした。
本当に文章って難しいですね。思い描いたものを言葉にして、イメージしてもらうのが・・・




