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第10話 撮影終了

 堀と話している慎を見つけた鏡は、顔赤くして何か堀に言ってる姿を見て、クスリと笑い久保の指示の配置につき、撮影が開始される合図を待っていた。


 神事の手伝いをするときのように、心を落ち着かせようとする。身を捧げるようイメージし、遥か上空を見るともなく見て心の波風を鎮める。鼻から空気を吸い込み、ゆっくりと口から吐き出す。


 自然と笑みが浮かび、視界に久保が入った。久保は、頷き合図を送る。

 優希と視線を合わせ、にっこりとお互い微笑みながら動き出し、それに合わせて周囲には先ほどまでの慎の重圧とは全く違い、そう時間がゆっくりと流れるように感じ優しい時間に包み込まれるような感覚に安心感を覚え始める。


 二人はまるで舞を舞っているように、いや風に吹かれ飛ばされたタンポポの綿のように、自由にそれでいて優雅に近づき、そして交差し離れていく様を久保は何かにとり憑かれたかのように、シャッターを切る。

 そうしているうちに、久保が終了の合図を送ってきた。


 鏡は、キャンプ用の椅子に腰をかけ足を伸ばし

「あ~、緊張したし足疲れましたよ~?慎君、足でもマサージでもしてくたまへ!」

 軽口を叩く鏡をみて、くすくすと笑い、はいはいわかりましたお姉さまなどと言いながら、片ひざをつきながら自然に脹脛(ふくらはぎ)を足首から上にさするようにマッサージをする。

 マッサージをすると、鏡の顔が少し紅潮していた。どうしたの?という問いには

「いや、そんな自然にマッサージしてくれるなんて思わへんかったから、恥ずかしくなっただけやわ。」


 その回答に、慎はしまったと思い、

「ごめん、俺みたいなのが気軽にこんなことしてしまって・・・冗談だったんだね。ゴメン。」

 あたふたと焦りまくる慎を目にした鏡は


「ちゃうちゃう、嫌とちゃうよ?あんまりにも自然で、さも当たり前のように膝く姿が、ちょっとかっこよかったと思ただけやねん。」

 顔の前で、手を振りながら弁明する。慎は、カッコいいなどと言われ恥ずかしいのか、視線があさっての方向に飛んでいた。


 そんなやり取りを見ていたスタッフたちが、絵になるねぇ、羨ましい限りですよなどと冷やかしてきたので、二人とも益々顔が赤くなっていく。

 優希と話していた久保が、二人の下に足を運んできた。


「さて、少し休憩したら最後の三人での撮影に入るんで、今のうちにお茶とかしといてね。今日はホントいい撮影ができてるよ。だから、あと少しなんでがんばってね。」

 ウィンクをしながらサムズアップして、機器の調整をするため、お茶を飲みながらスタッフと打ち合わせを始めた。


 優希と合流し、優希と話し始める

「いやぁ、慎よ、お前ならきっとやれる奴だと信じてたよ!でも、鏡さんは思ってた以上にすごいねぇ。ほんとモデルやったほうがいいと思うよ?よかったら、うちの事務所とかどう?堀さんも喜ぶと思うしさぁ。」

「いやいや、買いかぶり過ぎですよ~。そんなたいした事できてないと思いますよ?いっぱいいっぱいでしたもん。」

 照れ笑いをしながら、頭を掻いていた。そこへ、堀が足を運びなんかいい話ししてるねぇと話しに混ざってきた。


「鏡さん。いやぁ、実際ここまでやってもらえるとは思わなかったから、びっくりしてたんだ。今まで、スカウトとかされなかったの?」

 たしかに、スカウトされていてもおかしくないなと、不思議に思う慎だった。

「いえ、声をかけられたことはありましたけど、どんなとこ連れて行かれるかわからないので、すべて興味ないです!の一言で断ってました。今回は、目の当たりにしていますし、慎君のお知り合いでもあるので、安心できたから、お話しを受けさせていただいたという事になりますね。」

「それは、嬉しいねぇ。どうですか?これからはうちの事務所で、やってみない?優希も同じだし、赤坂君も一緒だよ?」

 ん?なんだと?堀の言葉を反芻し少し考えてから、

「ちょちょちょ、待ってくださいよ。何で俺がすでに所属した話しになってるんですか。バイトだけでしょ?えっと、さっきの話は今日のお手伝いのお話しだけで、所属の話しじゃなかったじゃないですか。」

 からからと笑いながら、堀はあっさりと

「だから、今してるんじゃないのさ。」

 満面の笑顔をみた慎は、あ・・・逃げられない・・・と確信したのであった。そんな姿をみて、優希は腹を抱えていた。


「え~慎君やらないの?慎君も一緒ならと思ったんだけどなぁ。あっでも、大学の勉強もあるんで、ちょっと難しいですねぇ。」

「そうそう、単位とらないとね!学生だしね!」

 慎は鏡の言葉に相槌を打つが、


「だから、無理のない範囲でやってくれればいいんだよ。こちらからオファーを出して、日程が無理なら断ってくれればいいしさ。学生の本分だからね。それに、経験できないことを経験することで、これからの視野が広がったりするだろうから、やれるうちは色々やってみるべきじゃないかな?」


 う~んと首を捻り出す鏡を見て、慎はいやな予感しかしなかった。きっと、所属したら鏡さんはともかく俺は、やろうよ~大丈夫大丈夫、学校とは僕が話しつけてあげるからさぁとか、言い出しかねないんだこの人。


 そんな話しをしていると、休憩も終わり準備ができたようで声がかかった。

 最後は、三人で車を使った撮影だ。慎は、気持ちを切り替え撮影に挑むことにする。さっきの話しはとりあえず後で考えようと、頭を軽く振って久保の下へ足を運ぶ。


 その後、無事撮影が終わり久保は恍惚の表情を浮かべ、満足げに握手を求めてきた。

「是非、これからも君たちと仕事をやりたいと思うし、誘いたい。だから、うちの事務所にこない?」

 さっきの堀と同じ、流れになり苦笑することになった。それを聞いていた堀が、久保とだめですよ~うちの子になるんですから~と、抗議を始め、ギャーギャーと言い合いが始まることになった。


「その話しは、すぐには答えだせないんで、後日またお会いしましょうよ。今日は、この後予定あるんで・・・」

 慎はそう切り出し、あぁそうだったねとプロレスの力比べ状態で、ガッツリ手をつかんだままの久保と堀が振り向いた。


 最後にバイト代を受け取りスタッフの皆に挨拶をして、その場を離れることにする。優希は、次回の撮影の打ち合わせがあるとの事だったので、挨拶は手を振るだけにする。手を振り返したのを確認し、デートの再開が始まった。


少し疲れた慎は、もう今日はこれで終わりにしていいんじゃね?と思ったが、鏡が、さぁ次はドライブだ~!と右手を高々とあげながらスキップしている姿を見て、元気百倍とばかりに鏡を追い越し車に向かうのであった。

読んでいただきありがとうございます。


やっと、撮影編おわりました。無理やり終わらせた感が半端ないですが・・・


《どうでもいい話》

天気がいいと、走り出したくなりますが、心と体は別物なので、走り出すことはない作者です。

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