神様からの手紙
――コンコン
神様が居なくなった外を呆然と眺めていると、扉をノックする音が聞こえた。
どうしようかと悩んでいると、また誰かが扉をノックする。
「…はい、どうぞ?」
「失礼します。おはようございます、お嬢様。今朝は、お早いお目覚めですね。」
メイドの格好をしたお姉さんが、朝の挨拶をしながら、部屋に入ってきた。
「おはようございます。メイド…さん?」
何て言えば良いのか分からず、取りあえずメイドさんへ朝の挨拶を返してみる。
すると、メイドさんの動きがピタリと止まった。
「お嬢様、どうしたんですか?私に敬語など、お止めください。まさか、どこか体調が優れないのですか?」
メイドさんが、慌てて私の元に走り寄り、心配そうな顔であちこち確認する。
「だ…大丈夫…よ。どこも何ともないわ。」
「本当に大丈夫ですか?どこか具合の悪いところはありませんか?」
「平気だから、それより顔を洗いたいから準備してくれる?」
お嬢様と言われるくらいだから、お金持ちの家なのかも。大体そういう家の主人は、身支度も手伝ってもらうのが当たり前よね。
何故だか、そうしなければいけない気がして、メイドさんに声を掛ける。
私が指示を出すと、メイドさんは安心したように、手早く準備を始める。
「今日は、学園の入学式がありますから、いつもより気合いを入れますね。」
その後は、メイドさんに着替えやメイクに髪も綺麗に整えてもらい、それなりに可愛い姿にしてもらった。
「お嬢様、とても綺麗です。流石、私のお嬢様です。」
「なんか照れるけど、ありがとう。」
お世辞だと分かっていても、綺麗だと褒めてもらえるのは素直に嬉しい。
「そうだわ。貴方の名前を教えてくれる?」
メイドさんの名前をちゃんと呼びたくて、名前を尋ねる。
「私は、メイドのメイです。よろしくお願いします。」
「メイね。こちらこそ、よろしくね。メイ。」
名前を呼ぶと、メイは嬉しそうに笑顔を見せてくれた。
それにしても、メイドだからメイって名前じゃないよね。もしも、そうだとしたら、物凄く安直すぎる。
――コンコン
また、扉をノックする音が聞こえた。メイが私を見たので、開けるようにと合図する。
「失礼します。お嬢様、お手紙が届いております。至急、読んで欲しいとの事です。」
別のメイドさんが、手紙を持って部屋に入ってくる。
手紙を受け取ると、差出人は――神様。
「ありがとう。今すぐ読むわ。ところであなたも私付きのメイドかしら?」
「おっしゃる通りです。」
「あなた、名前は何て言うの?」
違っていて欲しいと願いを込めて、手紙を持ってきてくれたメイドさんへ名前を聞いてみる。
「私は、メイツーと申します。」
「メイツー…、わかったわ。ありがとう。」
(やっぱりかぁ…)
メイドから取って名前がメイで、メイドの二人目だからメイツーってことだ。こうなってくると、三人目のメイドの名前が非常に気になる。
しかし、もう少しちゃんとした名前を付けてあげて欲しいな。キャラクターもちゃんと生きているのだから名前は大事よね。
こういうところは、相変わらず適当なんだから、仕方のない神様だ。
「メイ、手紙を読むから少し一人にしてくれる?」
「それでは、何かあればお呼び下さい。」
メイが、部屋から出ていったのを確認して、神様からの手紙を開く。
みんなを元の世界に戻すため、助手の私に大変な負担と責任がのし掛かっているが、神様からの手紙に救いを求めて、祈るように読み始めた。
《 助手の君へ
やあ、先程ぶりだね。どうかな私の作った世界は、素晴らしいだろう。
ただ一つ納得がいかないのが、乙女ゲームと言えば、魔法を使えるファンタジーな世界にしたかったのに、神様規約に引っ掛かるから、僕には、この世界を魔法の世界にすることが出来なかったんだ。本当に残念。だけど、それだと現実と変わらなくて意味がないから、魔物は出るようにしたよ。戦いながら、愛を深めていくってのも良いよね。魔法があれば簡単なのに、どうか恋をする前に死なないで、頑張って生き延びてね。因みに、剣を使った戦いがお勧めだよ。騎士とか格好いいよね。弓もいいかも。是非とも君の好きな方を選んでみてね。
話が逸れたね。では、本題に入ります。さっきも話したけど、この世界には縁を結ばなければいけない男女が数人いるから、僕の助手だとバレないように手助けしてあげてね。
最初なので、簡単な二人からお願いするね。なんと、二人は既に両想い。それなら、どうして縁を結ぶ必要があるのか。それは、両想いなのに、相手を想いすぎて逆に近づけないのだよ。お互い相手の気持ちを察してはいるのに、なかなか距離が縮まらない。そんな二人の恋を成就させてあげて欲しい。
どう?簡単でしょ?既に好感度はMAXで、これ以上ないくらい想い合っている二人だよ。君なら、上手くやってくれると信じているよ。えっ?なんだって?流石に一人じゃ大変だって?それなら、もう一人助手を付けてあげよう。嗚呼、僕って優しい神様。
もう一人の助手には君の事を伝えてあるから、向こうから接触してくるはずだ。細かいことは彼に聞いてね。
それでは、お助けキャラとして、モブとして目立たず騒がず、恋する者達を幸せに導いておくれ。
僕は、君たちの奮闘と恋の過程を楽しみながら見守っているね。
最高の結末をみせてくれ。
ゲーム大好き縁結びの神様より》




