神様の助っ人
沢山の作品の中から選んでいただき、ありがとうございます。
ふと、目が覚める。
「あれ?朝?ヤバい!準備しなくちゃ…。」
そう言ってみて、「何を?」と考える。
「おはよう!やっと目覚めたね。あまりにも目を覚まさないから、少しだけ心配したよ。」
声のする方へ視線を向けると、そこには綺麗な顔立ちの男性が、愛想の良い笑顔で立っている。
「えっ?誰…?まさか…不審者?」
「ちょっと、ちょっと、失礼だな。こんなにイケメンの不審者がいるわけないだろう。僕はね、神だよ。」
ドヤ顔で、とんでもないことを口にするイケメンに、疑いの目を向ける。
「んんっ、君、疑っているね。でもね、正真正銘、僕は神なんだよ。縁結びの神様さ。」
自分で神様だと言う人は、詐欺師か頭の少しおかしな人かもしれない。
相手にして、何かしら悪影響があっては困る。
(よし、無視しよう。)
無視を決め込み、ベットから出ると、そのまま部屋の様子を窺う。
綺麗に整頓された机に、沢山の本が並んだ本棚もある。
何の本か気になり一冊を手に取ると、恋愛小説だった。他の本も同じ作者の恋愛小説がズラッと並んでいる。
「無視するなんて酷いな。あっ、その小説、気に入った?それね、僕の作品なんだよ。」
「……。」
私は、無言でそれを本棚に戻した。
「あとで感想聞かせてね。それで、何故ここに僕が居るのか説明しないとね。」
突然、真面目な顔を作り、落ち着いた声で、真剣に話し始める。
「君は、縁結びの神である僕の助手なんだよ。」
「……はい?」
訳が分からず、聞き返す。
「だからね、君は、僕の助手なの。人間の縁を結ぶのが僕の仕事なんだけど、その手伝いをするために、君はここに居るんだよ。それを伝えたくて来たのに、無視するなんて酷いよ。」
――人間の縁を結ぶ?
「私が、神様の助手?それじゃあ、私も人間の縁を結ぶ仕事をしているの?」
目覚めてから、暫くして気づいたが、私は自分の事が分からない。
ここが何処なのか、自分の名前も顔も思い出せない。
「記憶が混乱しているね。ここに来た弊害なのかな。まあ、いいや。君は神じゃないから縁を結ぶことは出来ない。但し、人間の縁を結ぶ為に、僕の手助けをすることは出来るよ。」
私は神ではなく、あくまで助手だから、凄い力は使えないってことなのかな。
「僕はね、乙女ゲームが大好きなんだよ。僕には、人見知りの知人がいるんだけど、彼女が乙女ゲームが大好きでね。リアルで彼氏は居ないけど、ゲームの中では恋愛を楽しんでいるタイプでさ。毎日、乙女ゲームばかりしてるから、一緒に見ているうちに、僕もハマってね。折角、縁結びの神を名乗ってるから、乙女ゲーム作って縁を結んじゃえって事で、この世界を作ってみたんだよ。」
(この神様、この世界を作ったと言った?)
――ということは、この世界は作り物で、現実ではないということ。
嘘のような話なのに、そう言われると、何故か納得してしまう自分がいる。
「今、この世界には、現実の世界から数人の男女が連れて来られている。それぞれが結ばれるべき人達なんだけど、神の力でちょちょいってのも良いけど、乙女ゲームの様に、困難に立ち向かい、二人で手と手を取り合って…の方が、ロマンチックじゃない。」
「そう……でしょうか。ちょちょいってして貰った方が、早くて助かるのでは?」
私の言葉に神様が、信じられないって顔で詰め寄ってくる。
「君は、何を言ってるんだ。そんなのつまらないだろう。恋愛は障害が有れば有る程に燃え上がる物なんだよ。そして、結ばれた二人は永遠に別れることはない。そうだろう。」
私には、恋愛経験も乙女ゲームとやらの記憶も全く無いので、同意を求められても良く分からないが、否定しても面倒くさそうなので、素直に頷いた。
「やっぱりな。君なら分かってくれると思ったよ。それじゃあ、あとはお願いしてもいいよね。僕は見学しながら、この世界を楽しむことにするよ。」
「いやいやいや、ちょっと待ってください。」
そのまま何処かに行こうとする神様に、後ろから抱きつき捕獲する。
「な……何?君って意外と大胆だね。」
何だか神様の言葉に腹が立ち、前に回って神様をギッと睨んだ。
「神様が乙女ゲーム好きで、この世界を作ったのは分かりました。それで、私はどうしたらいいのですか?」
このまま、この世界に放り出されても、何も分からないままだと困る。
この世界に居るということは、私にも何か役割があるのかもしれない。
「だから、助手って言ったよね?君は、この世界が上手く回って、みんなが恋愛成就するように助けてあげてよ。つまり、ゲームのお助けキャラって事だよ。因みに、恋愛成就しないと、その人達は元の世界に戻れないから、失敗しないように気をつけてね。バッドエンドだけは絶対に駄目だよ。」
そういうと、神様は手を振りながら陽気に窓から飛び降りた。
驚いた私が窓を覗くと、下には誰も居なくて、神様は綺麗さっぱり消えて居なくなっていた。
「私が、お助けキャラで恋愛成就しないと、みんなが元の世界に帰れない……。」
思ったよりも重要な役割に、ドキドキしてきて、神様の消えた外をもう一度確認する。
私の沈んでいく気持ちとは裏腹に、外は雲一つない綺麗な青空が広がっていた。




