神様の助手の助手
「とても、ふざけた手紙だったわ。魔物が出るなんて聞いてない。遭遇したら死ぬしかないじゃない。ここは、一体どんな世界なの…。」
神様の手紙で分かったことは、魔物が出ることと、魔法のない世界ということ。
そして、主人公たちの好感度がMAXスタートということ。
「それよりも、肝心の名前が分からないのだけど、一体誰を助けたらいいのよ。」
部屋の中で、途方に暮れる。
神様が大雑把過ぎて、助手としては苦労する。
「そういえば、もう一人助手が居るって書いてあったな。あちらから接触してくると書かれていたけど、どんな人だろう。」
まだ、接触がないと言うことは、家族や使用人とは違う人なのかもしれない。
どこに行けば、助手の助手に会えるのか悩んだ末、まずは入学式への参加を優先することにした。
縁を結ぶ二人は、学生だと思うので、学校へ行けば会える可能性が高い。
助手も必要だけど、彼や彼女に会って現状を確認しないと、お助けキャラとして何が必要か分からない。
それに、私に出来ることがあるなら、頑張ってハッピーエンドを迎えたい。
「好き同士なのに、結ばれないなんて悲しすぎる。」
神様は、簡単な二人だと言っていたので、一番難易度が低い二人なのだろう。
恋愛初心者の私でも、流石に両想いの二人をバッドエンドにする失敗はしないと思う。
「さっきまで、責任の重さに押し潰されそうだったけど、最初は楽勝かも。少し安心した。はぁ、良かった、良かった。」
神様からの手紙を丁寧に封筒の中へ戻すと、扉をノックする音が聞こえた。
「お嬢様、そろそろ出発しないと入学式に遅れてしまいます。」
(メイの声だ。)
手紙を読むために、部屋を出てもらったが、そろそろ時間が迫ってきて、急いで声を掛けに来たようだ。
「わかったわ。今行きます。」
私は、新品の上着に袖を通して、そのまま部屋を後にした。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
(乙女ゲームだから馬車なの?)
玄関を出ると、そこには立派な馬車が用意されていて、戸惑う私を乗せて学校へと動き出す。
初めての馬車は不安だったけど、思ったよりも快適で、お尻も全然痛くならなかった。
「お嬢様、王立学園へ到着しました。」
馬車の扉が開いて、従者が手を差し出す。その手に掴まり、ゆっくりと馬車から降りれば、そこに広がるのは桜並木。
遠くの方に、校舎らしき建物が見えるが、そこまでの道には、風が吹く度に、桜の花びらが舞い、とても幻想的で綺麗だった。
「校舎まで遠くない?どれだけ広いのこの学校……。」
「王国一の学園なので、広さも国一番ですよ。」
メイが得意そうに説明してくれる。
「そうなんだ。それより、メイに確認したいことがあるのだけど、私は新入生でいいのかな?」
今更ながらの質問に、メイも驚いて表情が引きつる。
「お嬢様、どうされたのですか?もしかして、緊張してます?大丈夫ですか?勿論、お嬢様は、今年から学園に入学するので、新入生になりますよ。」
「そうだよね。そうじゃないかと思ってたの。念のための確認よ。」
笑って誤魔化しつつ、人が多く集まる場所を目指す。
すると、「新入生は、こちらです。」という、呼び声が聞こえてきた。
「メイ、新入生はあっちに集合みたいだから、私も行ってくるね。」
メイに一旦、別れを告げて、新入生の集合場所へと急ぐ。
(この中に、縁を結ぶはずの男女が居るんだよね。手紙の二人もいるかな。)
キョロキョロと周囲を見渡し確認するが、手紙の二人が誰かも、助手の助手が誰なのかも分からなかった。
「こんなに、分からないことばかりで、お助けキャラとして、やっていけるのかしら。」
ふと、弱音を吐くと、私の言葉に明らかに反応した人が一人。
「今…きみ…、何て言った?」
目の前の男の人と、バッチリと目が合った。
「あっ…えっと…」
正体がバレてはいけないと言われたので、何て返事をしようか困っていると、彼の口から待ち望んでいた言葉が聞こえた。
「君が、神様の助手さん?僕も助手なんだ。君と会うように言われて探してたんだ。」
安心したように、ほっとした顔で笑顔になる助手の助手さん。
「あっ、私も…、探してました。」
まさかの男性の助手に、緊張で心臓がドキドキとうるさい。
「神様から、君の手伝いをするように言われていて、詳細説明も任されているんだ。それで、取り敢えず、今は入学式に参加して、終わったら話したい。時間いいかな?」
「それで、大丈夫です。」
優しそうな笑顔に、恥ずかしくて直視できず、視線を逸らして何とか返事をする。
「良かった。それじゃあ、新入生同士よろしくね。みんな移動してるから、僕達も行こう。」
私は頷いて、そのまま彼の後ろを着いていく。
私は気づいてしまった。
私は、とんでもない人見知りで、人と話すのが苦手で、特に異性とは会話したことも殆ど無いような人だった。
(これは、お助けキャラの前に、人見知りの私自身を助けて欲しい。)
神様の助手の助手さんとの会話に、間に入る誰かが欲しいと神様に願ってみたが、案の定、反応は無かった。
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