退職理由
―古着屋 元アルバイト あいなさん(仮名)の話―
――「今まで接客業が多いんですね。……この店は勤務期間が短いですけど、どうして退職されたんですか?」
面接に来たあいなさんの職歴を確認しているときに聴いた話だ。
あいなさんは古着屋の初出勤日に倉庫に案内された。
倉庫には店の備品や什器、古着のストックが置いてあり、ストックの服は畳まれて棚に置かれた物、段ボールに入った物、ハンガーラックに掛けられた物と仕分けられていて、売場に並んでいる在庫の数倍あった。
倉庫で仕事の説明を受けていると、どこからかキィキィという音がする。
音のする方に目をやると、ハンガーラックに並んだ中の一着がブランコを漕ぐように左右に揺れている。
あいなさんの視線に気づいた先輩が、説明に集中するようにあいなさんを窘めた。
「あんなのはしょっちゅうあるんだから気にしちゃだめだよ」
………先輩の言う通り、同じようなことがいくつかありまして……それが古着屋を辞めた理由です。
――「何か質問はありますか?」
面接の最後にそう訊くと、あいなさんは
「こちらのお店では何か変な事はありませんか?」
と質問してきたので「特にないですよ」と返答して面接を終えた。
面接の翌日、あいなさんから辞退の連絡をしてきたため、採用はしていない。




