出雲会議
旧暦十月の出雲会議。現世では冬。祝呪隊の祝詞隊は神々をもてなす準備と会場の設定で忙殺されていた。祝詞隊でなくても部隊長の付き添いも忙しい。俺もせわしなく動く。時折、神の使いと連携する。会議の進行の確認もする。開催地は毎年、現世の出雲地方だが現世の人間達に感知されないようにしている。
会議は議論と宴が交互に行われる。神々が議論する時、俺達は後方で黙って控える。宴の時は供物や御酒等を配膳したり、舞や演奏を披露する。
霊圧が高い。油断していると気絶する。それでも俺達は会議の進行を支える。これでも神々達は霊圧を抑えているようだ。
会場は円状になっており、発言者を囲む様に神々が鎮座し、俺達は後ろで待機している。人類の事、自然環境の事、災害について。議題は様々だ。地震や津波や台風等の巨大な災害についても語られる。神々が自然の営みを調節するのだ。
侃侃諤諤とした雰囲気から急に静まり返った。俯いていた俺は会場の中央を見やる。補陀落と松助が立っている。補陀落が船体を揺らしながら暗い声で、
「こちらで決めた事を違えて実に申し訳ございません」
傍らにいる松助が土下座した。
神々は議論を再開した。罰するか否か。罰するとなるとどんな罰を与えるべきか。そもそも皆、大なり小なり人類の業に対して嫌悪を抱いている。補陀落達に同情的な神々も少なくなかった。それに、補陀落達の計略は失敗している。
太陽の神が、
「気持ちは分からなくはないが、この会議を傷付けた罪は重い」
厳かな声が響いた。海神が、
「では、どの様な罰が下るだろうか」
太陽の神は、
「私の用意した檻に十年入ってもらう」
神々はしばらく沈黙した。太陽の神が、
「異論は無いか」
「異議無し」
誰かが答えた。他の神々は黙っている。すると、船の補陀落でも簡単に入れるほどの大きな檻が上から現れ、降下していった。檻は床に着くと同時に、補陀落と松助を吸い込むように入れた。
補陀落と松助の霊圧が下がっていく。二人は黙っているが少し苦しそうだ。太陽の神は、
「生かしてはおく。その中で大人しくせよ」
檻が上がっていく。会場の天井に着くと、神々は議論を再開した。金筬姫はどうなるのだろうか。俺は気になったが、神々達は話題にしない。少なくとも金筬姫を罰するつもりはないようだ。
罰は想像より軽く済んだ。それが妥当なのかどうか分からない。けれども縄に振り向くと縄は安堵した様子だった。
議案が次々と出されて、可決していく。気が付けば長い会議が終わる。神々が席を立っていく。閉会の合図の後、俺達は後片付けを始めた。松助と補陀落は檻ごと太陽の神に連れて行かれた。
「冬空とはお前の事か?」
後から低い声がしたので振り向く。海神が人の姿で立っている。俺は持っていた資料を下ろして跪いた。海神は、
「頭を上げてこれを受け取れ」
と、短刀を差し出す。黒一色。俺が呆然とすると海神は、
「拒むな」
俺は両手で短刀を受け取った。海神は踵を返して立ち去った。俺は鞘から刀を少しだけ出した。青白く光っている。俺は鞘に収めると懐に入れた。
掃除と片付けが済むと、俺達祝呪隊は楽土に帰還した。




