↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冬空  作者: 加藤無理
PR
18/24

台風

 縄は松助に負けてから半月ほどで復職している。俺も五日ほど謹慎を受けたが復帰している。松助の方から攻撃を仕掛けたとはいえ、楽土での争い事は極力避けなければならない。謹慎が解かれた時、高麻呂部隊長は、

「仕事に励め」

 と、叱咤激励した。


 松助に負けたからもっと鍛錬したかったが、謹慎処分の間、俺は家事に専念していた。翠は、

「ありがとう」

 と、何度も労った。翠のいる刑務隊は縄が休職していたので忙しくなっていた。それでも俺と翠は話す時間があった。


 二ヶ月経った。現世では六月の強い梅雨前線。海も時化だ。そろそろ松助が何か仕掛けてくるのではないか。そんな予感がした。翠は最初、否定しようとしたが、最近では翠も不安を抱いている。翠は心配そうに、

「責任を感じて無茶をしないでね」


 ある日。俺が現世に部下達を送り出した後、事務作業しながら待機している時。突然、元帥が直々に召集をかけた。俺達は祝詞隊の基地の広場に集まった。呼ばれたのは大隊長以上の階級の者ばかりだ。通常業務が有るので全員は来なかったが、それでも千人はいた。部隊長も何人かいる。


 全員が整列するのを確認すると、元帥が、

「現世で異変が起きた。今、外交隊と土木隊が現場で対応している」

 と、言うと、観測隊隊長の赤門(あかもん)が説明を加えた。


 早朝、フィリピンと台湾の東側で巨大な霊圧が認められた。既に時化が続いていたが、その霊圧に反応して台風が四つも生まれてきた。四つの台風はそれぞれ、北側の日本、東側の台湾、南側のオーストラリア、西側のアメリカに向けて成長しながら移動を始めた。


 不自然に気付いた観測隊は元帥や他の部隊に報せ、元帥は外交隊や土木隊に台風を抑えるように命じた。本来ならば自然を司るのは神々だが、この台風は出雲会議の決定とは違った事象である。祝呪隊が急いで対応する事にした。


 異国の世界でも不審に思ったのか、祝呪隊の外交隊を通じて、台風を一緒に抑えて協力している。今は台風を結界で閉じ込めているが、膠着状態である。結界が破れて台風を逃がせば現世の人間に甚大な被害が出る。


 松助の仕業だ。俺はそう感じた。しかし、海神から信頼され、金筬姫と結婚できたとしても、松助の単独でここまでの事をしでかすのは難しい。


 俺は斜め後ろから前に立っている縄を見やった。無表情で話を聴いているが、顔色は青白い。責任を感じているようだ。


 観測隊隊長の赤門の説明が終わると、元帥が部隊編成した。前線には既にいる外交隊と土木隊の他に捜索隊と祝詞隊が行き、後方には医療隊と観測隊と憲兵隊が現場近くで控えている。俺達戦闘隊は戦況を確認次第、祝詞隊率いる元帥の指揮で結界に入り、台風を生み出した者と戦う。他の部隊は作戦に参加している部隊の通常業務を支える。膠着状態が続けば、炊事隊が武器や食糧を補給する。


 元帥が最後に、

「⋯⋯他に何か有るか?」

 その時、縄が挙手した。ちなみに俺達祝呪隊は小指と薬指を軽く曲げて挙手する。元帥が振り向くと縄は、

「僕も最前線に行かせていただけないでしょうか」

 元帥は縄を見つめたまま、黙っている。受け入れるかどうか逡巡しているようだ。縄も真っすぐ元帥を見返している。元帥は低い声で、

「足手まといになったら俺が先に斬る」

 縄は一度頭を下げ、

「かしこまりました。有難うございます」

 刑務隊からは縄の他に三十人が前線に参加することになった。


 千人中、七百人が現世に向かった。残りの三百人は待機か他の部隊の通常業務の手伝いをする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。