第二百五十話
感想欄にて指摘され気付きましたが、二百十三話が二つ存在していました(白目)
タイトルの数え間違いですが修正するとなるとかなり時間がかかってしまいますので、スルーしていただければ幸いです。
内容的には問題はありませんのでご安心ください。
第二百五十話です(本当は第二百五十一話)
イオさんに案内されヴィングル王国の街中を歩いていた僕達は、建物が立ち並ぶ街並みから一転して木々の目立つ人気の少ない場所に出ていた。
木の葉が掠れる音と小鳥の囀る鳴き声を耳にしながら、僕はリファーナと手を繋いでいるイオさんへと声をかける。
「もうすぐ到着かな?」
「正確には既に到着しているんですよ?」
「え? どういうこと?」
既に到着しているとは?
首を傾げる僕に微笑んだイオさんは説明してくれる。
「先ほど門を通りましたね? そこを通ったその時から、既に屋敷の敷地に足を踏み入れているんです」
「え、嘘……」
たしかに門らしい門はあったけれど、屋敷は見えなかったしそういうものだと認識してしまっていた。
それがまさか、今歩いているところまで敷地内とは思いもしなかった。
「ルージェス家はヴィングル王国において名のある家柄でありまして、その現当主がセーラ様なのです」
現当主……? でもセーラさんは僕達と変わらない年代としか……いや、これはあまり深く聞かない方がいいな。
親しき仲にも礼儀ありだ。
「本来、皆様には王国側が用意した宿に待機していただくはずだったのですが、セーラ様が『拠点が同じ方が計画とか立てやすいんじゃない?』と提案したことから、皆様はセーラ様の屋敷を拠点とすることになったそうです」
「セーラさんの声真似うまいね……」
「従者ですから」
心なしかドヤ顔のイオさん。
手紙には色々と愚痴や悩みなどが書かれていたけれど、それでも文面からはセーラさんに対する親愛さは感じられていたので、二人の間で確かな信頼関係は築かれているのだろう。
そう考え、頷いているとイオさんに手を繋がれているリファーナが僕を見上げた。
「ねえ、カイト。私の……リーファの物まねしてみて」
「なぜに……?」
「イオに負けてられない。従者力を見せて」
またもや無茶ぶりを仕掛けてくるリファーナ。
別に従者勝負をしているわけじゃないんだけどなぁ……というより従者力ってなんだ。
とりあえず、無茶を振られたからには乗らなければな。
「むげぇ、腹減ったー」
「そんな変な言い方してないよっ!」
「いつもお腹すいてるじゃん」
「空いてるけど、品性まで捨てたわけじゃないからね……?」
冗談だけれども。
正確には、むぅー、お腹すいたー、だな。
まあ、どっちにしても意味は同じだ。
「到着しましたよ」
リファーナの抗議の声を聞き流しながら歩いていると僕達の前に、大きな館が現れる。
見た目は西洋の洋館のようで、イメージする貴族の屋敷に合致する。
屋敷の近くには大きな花壇があり、綺麗に整えられたそこに様々な種類の花が植えられている。
「おお、綺麗なところだな」
「イオが管理しているからな。他にもたくさんあるのであとで兄上にも見せよう」
「うむ、それは楽しみだ」
花壇を見てそんな会話をする黒猫たちにほっこりしていると、イオさんが館の中に入るように促してくれる。
彼女に従い客間へと案内される。
「フッ、ようやく来たわね……!」
客間の席には赤みがかった髪色と琥珀色の瞳が印象的な少女が座っていた。
彼女は優雅な様子で紅茶を手に持ちながら僕達を迎えた後に―――ちらりとイオさんに視線を移し、すぐに視線を逸らす。
「待ちくたびれて、ケーキを三つも食べてしまったわ……!」
「セーラ様。食い意地を張ってお客様用のケーキを爆食いしたことに言い訳はありますか?」
「ごめんなさい……!」
ヴィングル王国の勇者、セーラさん。
セントレアル以来の再会ではあるが、相変わらずの彼女に苦笑せずにはいられなかった。
●
ようやく今後の活動拠点になるであろうセーラさんの屋敷に到着した僕達は、案内された先の客間で話し合いを行っていた。
まずは、最初に驚かれるであろうリーファとニーアの融合した姿、リファーナについて説明しておく。
「へぇ、リーファとその姉のニーアが融合ねぇ。セントレアルに襲撃した魔王軍幹部の処遇だけは不明だったけれど……子供の姿にさせられているのは結構な罰よね。……ねえ、ケーキ一人で食べられる?」
「なにこいつ……気遣うフリして、ケーキ取ろうとしてくるんだけど……! ほっぺをつんつんするなぁ!」
「やだかわいー」
「むおおおお!」
リファーナから分離したニーアは、セーラさんの独特なノリに困惑しているようだ。
つんつん、とニーアの頬を突ついたセーラさんは満足そうな笑みを浮かべながら僕とリーファの方を向く。
「まさか、貴女達が先に来るなんてねぇ」
「セーラは私達以外に来る勇者を知っているの?」
「まあ、ね」
当然、ヴィングル王国側は伝えられているはずだろう。
少し言葉を濁したセーラさんは、イオさんが差し出したカップをを口にする。
「貴方達以外に集まるのはフィルゲン王国のチサトと、ニルムガーナ王国のヘキルね」
「チサトは知っていたけど……」
ヘキル君か。
セントレアルでいい意味でも悪い意味でも印象的だった少年。
彼が来るということはその従者であるハルトさんも来るということなのだろうか?
「チサトは明日あたりにこちらに来るらしいけれど、ヘキルはここには来ないことになったと先日伝えられたわ」
「え? そうなの?」
「彼はまだ幼いから今回の戦いには参加させるには不適格とニルムガーナ王国が判断したらしいわ」
ヘキル君、年齢的には子供状態のニーアと同じかそれ以下だもんなぁ。
彼は勇者であるけれど、それと同時に子供であるから国側が止めるのも理解できる。
「元より、魔王軍との戦いは数年単位を予想していたから、ここまで早い決戦はあちら側も想定外だったようね」
「それじゃあ、私達は三国だけで今回の戦いを? さすがに無謀じゃないの?」
リーファの言葉に僕も頷く。
恐らく、他の二つの場所では五国以上の勇者が集まっているはずだ。
戦力的にはここは明らかに不足しているだろう。
「セントレアル側は、ヴィングル、ヘンディル、フィルゲンの三王国の勇者の力量があれば問題はないと言っているわ。……まあ、私から見るとチサトとリーファの実力は勇者、二、三人分くらいあるからあまり文句はないけれど……」
「けれど?」
「なーんか、話が出来すぎな気がするのよねぇ」
テーブルに肘をついたセーラさんは悩まし気な表情を浮かべる。
「これは私の勘だけど、私達が攻める拠点に魔王はいるわ」
「根拠は?」
「勿論、ゼロよ」
ものすごい自信だ……!
しかし直感というのもバカにはできない。
「だって出来すぎじゃない? セントレアルの襲撃から半年も経っていないのに魔王軍の重要拠点を発見って……しかも三か所同時に? 適当な理由をこじつけているけど、わざわざ勇者を集めて出向かせている部分も私には“特定の誰か”を体よく動かしているようにしか見えないのよね」
「……確かに」
そういう考えがなかったわけではないが……いや、あまり考えないようにしていたってのが正しいな。
そこまで考えれば僕はセントレアルにいるリオンさんを疑ってしまうから。
彼女は確かに怪しい。
怪しいが、理由もなく疑うべきじゃないのだ。
少なくともセントレアルでは僕の命を助けてくれたし、可能な限りに僕の要望を聞いてくれたりしたのだ。
「カイトって神獣に関係しているんでしょ?」
「え、うん」
思考に耽っている僕に投げかけられたセーラさんの質問に頷く。
セーラさんの傍に控えていたイオさんは、驚いた表情で僕を見ている。
……ん? 待て、今僕は……。
「「カイト!?」」
「あっ!」
シフとリーファの声で我に返る。
セーラさんは僕が神獣と関わりがあるということは知らないはず。
思わず頷いてしまったが、どうして彼女がそのことを―――、
「ふぅん、やっぱり神獣と関係しているのね」
「ど、どうして……?」
「うーん、これは貴方の周りの騒動と、セントレアルでの出来事からそう判断した感じね。あと、直感」
直感怖すぎだろ……。
僕が神獣と関わっているという判断材料はあれど、確信に至るものはなかったはずだ。
「あとはそうね……巨獣の侵攻時に現れたというフィーリヘルトと、明らかに貴方を害そうとした雷の神獣を見たからね」
「それだけで……?」
「それだけって……もうその言葉の時点でおかしいわよ。神獣なんて一生に一度見れるか見ないくらいに滅多に現れない存在なのよ?」
なるほど、だからか。
僕と周囲に神獣に対する認識の食い違いがあったことを自覚し頭を抱える。
バレたのはセーラさんだからよかったけれど、他の人に気付かれたら大変だ。
「貴方って色々な騒動に巻き込まれやすい……というより、巻き込まれるように仕向けられている節があるから今回も同じと見るのも間違いじゃないかもしれないわよ?」
「そうであってほしくないなぁ……」
本当に心の底からそう思う。
しかしそれでも考えなければならないのが現実だ。
もし、今回の件に神獣が関わっているとなれば、それは誰だ?
リオンさんか、それとも別の知らない神獣か。
それを考えるだけで頭痛がしてくるよ……。
ほぼほぼ直感で確信を突く勇者、セーラ。
そして年齢制限で不参加となったヘキル君。
尚、本人は納得がいかずにものすっごい不機嫌。




