第二百四十六話 報告書回
第二百四十六話です。
今回は日記回とは少し違って変則的な報告書回となります。
カイトの記した報告書の後に※※※で挟まれた文面がジェシカからの返信となります。
神獣の雷。
夜の闇夜を切り裂く、雷を地に落とす常識外れのもの。
光り輝く雷光、地平の果てまで響き渡る轟音。
まあ、つまりなにが言いたいかというと―――、
『今回、貴方達を呼んだのは他でもないわ。この都市で起きている正体不明の落雷について調べてほしいの』
当然のように騒ぎになったよね。
そりゃ三日間連続で正体不明の雷が街の近くで落ちていたら何事かと思うよね。
そして真っ先に僕とリーファがジェシカ様に呼び出され、危うく大事になりかけたが、そこは僕が白状したことで大きな騒ぎにならずに済んだ。
自分でも、焦っていたのだろう。
この危険な力を自分のものにしようと、肝心の報告を怠ってしまっていた。
そんなこともあり、ジェシカ様にこってりと叱られてた僕は神獣の雷の訓練は五日に一度という制限を命じられた。
それに加えて、リーファとニーアを含めた僕達に訓練に関しての報告書……を出すように指示されてしまった。
『貴方達から目を離すと、大変なのは分かったから絶対書いてね? 絶対よ?』
ものすごく鬼気迫ったような表情で念を押されたので僕達も無言で頷くしかなかった。
報告書1
アリハラ・カイトです。
これをジェシカ様が読むとなるとものすごく緊張します。
この世界の文字も大分書けるようにはなりましたが、少々読みにくい部分があるかもしれないのでその部分についてはご理解いただければ幸いです。
今回はこの五日間、行ってきた訓練について報告いたします。
訓練以外に、冒険者としての依頼をこなしていたこともあり、それほど報告できる部分が少ないかと思われます。
内容につきましては、神獣の雷を用いた神獣フィーリヘルトと一度のみの訓練。
落雷を人為的に起こすことを可能にするクルックライザーさんの権能は、現状の僕では応用することが難しいと判断しました。
しかし、感覚的にはここから何かをすることができるという漠然としたものがあります。
これからも騒ぎにならない程度で、試行錯誤を行っていきたいと思います。
※※※
予想の30倍、丁寧な報告で少しびっくりしているわ。
報告書といっても、そこまで堅いものではないから貴方の思ったことや、感じたことも書いてくれるといいわ。
女王としての立場で貴方を叱りはしたけれど、貴方の焦る気持ちはよく理解できる。
思えば、貴方とゆっくりと話したことはなかったわね。
貴方は勇者であるリーファの従者であるけれど、それと同時に私が護るべきヘンディル王国の民の一人でもあるわ。
なにか悩みがあったら相談してね。
※※※
報告書2
アリハラ。カイトです。
お返事の方、拝読させていただきました。
自分の身を案じてくださったこと、本当に嬉しく思います。
僕自身、今の現状を受け入れていることもありますが……本音を言うなら家族が恋しく思う気持ちがあります。
いつもはできるだけそれを考えないようにしています。
考えるとしても、誰も……使い魔達が眠っている夜とかに一人で……とかです。
みんなに心配をかけさせたくない。
僕は悩めば、みんなを不安にさせてしまう。
恐らく、このような場でなければ僕はずっと自分の本心を言葉にすることはありませんでした。
ここまで書き記して、心が軽くなったような気がします。
訓練に関しましては、大きな変化はありませんでした。
強いて言うなら、近いうちにベオル・ヒドゥンさんの眷属、ナーヴァさんとの組手をすることになるかもしれないということですね。
※※※
正直、この日誌に目を通した時、私はしばらく呆然としてしまったわ。
自分はこれまで何を見てきたのかしら……。
心のどこかであなたなら大丈夫と思い込んでいたけれど……貴方もまだ十七歳の子供なのよね。
この世界に突然一人で放り出されて、その上元の世界に帰ることができないことが決定づけられて、なにも思わないはずがない。
貴方の悲しみを和らげることはできないけれど、力になることはできるわ。
今は魔王軍のこともあって手が離せないけれど、近いうちに貴方は医者に診てもらうべきよ。
貴方にまず必要なのは精神的なケアと、仲間達からの理解よ。
※※※
報告書3
気遣ってくださりありがとうございます。
そうですね、何度か病んでいるのではないか、とシフやリーファ達から指摘されているのでお医者様にかかることになるかもしれません。
訓練に関しましては、ナーヴァさん……ベオル・ヒドゥンさんの眷属である方と手合わせという形の訓練をしました。
神獣の雷を習得してから大体一か月ほど経ちましたが、彼女との手合わせはとても実りのあるものとなったと思っております。
彼女との手合わせは、常に命がけです。
彼女が軽くパンチを繰り出せば僕は壁にめりこんで化石の気分になりました。
しかし、僕も負けてはいません。
奥の手として隠していたアルゼンチンバックブリーカーなどを繰り出してやりました。
どれも彼女に有効な技にはなりえませんでしたが、それでも怯ませることができたので上々でしょう。
ナーヴァさん、僕のジャーマンを真似して地面に叩きつけようとしていましたが、見様見真似で繰り出そうとしたジャーマンはクラッチが甘く簡単に切り返し、ジャーマン返しをしてやりました。
ジャーマン返しジャーマンですね^^
日常的には訓練より冒険者として活動している時間の方が長いかもしれません。
本当は金の冒険者としての任務をしてみたいという思いもありますが、現状は自分もよく理解しているので依頼は街の中でできるものに留めておいております。
しかし、街の方々と交流できることは僕にとっても楽しいと思えることなので、不満という不満はありません。
あと心配なことが一つありまして……。
時折、小ライオン状態のリファーナがすり寄ってくることが多くなりました。
宿の中で練習しているのか、いつのまにか膝の上に飛び乗ってきて眠ったりくつろいだりしているのですが、彼女が神獣の力を制御できていないのは少し心配になってしまいます。
この場合、どうしたらいいでしょうか。
アドバイスなどをいただけたらと思います。
※※※
前回の報告と温度差が凄すぎて風邪を引きそうだわ。
訓練の内容の八割を理解することができなかったけれど、これは貴方がこの世界の文字にまだ不慣れだったということはないわよね?
実はもう精神的にキテているとかないわよね?
貴方達の冒険者としての評判は城にまで伝わっているわ。
すごく好意的に見られているから、私としてもとても鼻が高いわ。
ヘンディル仮面の活動のこともあって、子供人気も上がったし、これは次のヘンディル仮面の活動が望まれるわね♪
リファーナが膝の上に乗ってくる……ですって?
おかしいわね、たしかリーファとニーアの報告では二人は子ライオン状態の姿ではある程度意識を保てるようになったと記してあったのだけど。
あの子達が嘘をつくとは思えないけれど、まずは様子見してはどうかしら?
そういえば、融合している時って二人はそれぞれの意識があるんですってね。
リファーナとしての人格はちゃんとあるようだし、なんとも不思議なものね。
※※※
ナーヴァ「すごく楽しかった」
リーファとニーアの高度な連携プレーでした。
時系列的には、前話でジェシカにセントレアルからの書状が来る前までの報告書となります。
もしかしたら、前話よりもこちらの方が先の方が良かったかもしれません……。




