第二百十九話
寝る前に殴りテイマー書こうと思ったらメンテで朝まで書けなくて焦りました(笑)
第二百十九話です。
森の中にある遺跡へと続く亀裂。
その先にリーファとニーアに宿る力の大本である神獣がいるかもしれない。
昨夜シーナさんからそれを聞いた僕達は、今日さっそくその準備へと取り掛かることになった。
まずは遺跡にという何があるか分からない場所に向かう際の心構え、閉じ込められた時の対処法、などなど。
午前中はそれらも合わせてロープ術の練習も行ったので、かなり濃密なスケジュールとなった。
「リーファ、本当についてくるのか?」
「むん」
午後はシーナさんに買い物を頼まれ、僕達は街のほうに出ることになったけれどまさかリーファもついてくるとは思わなかった。
黒色の外套についてるフードを被っているリーファを横目で見ながらそんなことを思う。
「やっぱりというか、僕のことは結構知られているみたいだね」
「うむ、まあ、それは仕方がないことだ」
街を歩くと視線を感じる。
先日、勇者の従者として自分で正体を明かしてしまったので、その噂がもうかなり広まっているのだろう。
「やはり変装するべきだったか……」
「覆面は返さないよ? むしろ、あれを被ったら悪目立ちする」
むぐぐ、覆面のことになるとリーファは頑なだな。
「むしろ、当然だと思う。信じられないが、ここには従者としてのおぬしよりもヘンディル仮面の方のおぬしの方を知っている者がいるようだからな」
「嘘でしょ……? どういうことなの……?」
「この目で見たからな……ハハ」
驚愕の面持ちのリーファとどこか諦めた様子のシフ。
昨日声をかけてくれた人か。
本当に覆面がなかったことが悔やまれるなぁ。
「そ、そういえば昨日、チサトと魔具で話していたみたいだけど、どうだった?」
「どうだったって?」
「私と姉さん、あの後すぐに寝ちゃったし」
唐突にリーファがそんなことを聞いてくる。
突然、話題を変えたことに首を傾げていると、彼女は続けて言葉を発する。
「母さんもいたんでしょ? なにかなかったのかなって」
「なにかってほどじゃなかった気がするけど……うーん」
シーナさんや、彼女の一族が経験した冒険などを聞いていただけだし。
でも興味深いことをたくさん聞けてよかった。
「さすがのチサトも最初は緊張していたみたいだよ。相手が君の母親だからね」
「へぇ、ちょっと意外」
「話している最中、突然“なにこの親族のいない三者面談!?”っていって混乱していたよ」
「それはいつものチサトなんじゃないのかな?」
僕の紹介の仕方も悪かったからな。
さすがにいきなり話させるのではなくシーナさんのことを教えておくべきだった。
サプライズ感を意識しすぎてしまった。
「あ、でも僕が席を外している間に、なんだか仲良くなってたよ」
「なんでその場にいなかったの……!!」
「シーナさんなんて、チサトを“娘にしちゃいたいくらいです”って冗談も言うほど、彼女のこと気に入っていたし」
「知らないうちに娘の立場奪われそうなんだけれども……!」
そんなことはないと思うけれど。
とにかく、昨夜のチサトを交えた話は楽しかった。
「……リーファ、あのお店かな?」
「あ、そうだよ。全然変わってない」
シーナさんに渡されたメモ用紙に記されているお店の特徴と同じ、建物を見つける。
リーファにとっても馴染み深い店なのか、懐かし気に目を細めている。
買うのは食材。
さすがに裏庭で育てている野菜だけでは、リーファ達の食事を賄えるはずがないので買い物を頼まれたのだ。
早速、八百屋のような感じの店に訪れると、店主らしき人物は僕の顔を見て驚きの表情を浮かべる。
「おお、従者さんじゃないか。うちには買い物で?」
「はい。それで、このメモに書かれた食材が欲しいのですが……」
噂が広まるのは速いなぁ、と思いながらメモ用紙を見せる。
メモを見た店主さんはすぐに、袋に食材を詰めて渡してくれる。
「しかし、あんたも大変だなぁ。昨日、あんな騒ぎに巻き込まれるなんてなぁ」
「ははは……」
「俺も途中から見ていたが、よく手を出さなかったな。あんたほどの力があるなら一捻りだっただろ?」
一瞬、怒りに任せて殴りかかろうとしてしまいましたけどね……。
それでも一線を越えなかったのは、僕が従者という立場にいるからだと思う。
「それに、アレもすごかったな。地面を足で砕いたアレ」
「……あっ、あれって公共のものですよね? やっぱり弁償した方がいいんでしょうか?」
威嚇のために砕いてしまったけれど、よく考えればあれは街の中のものだ。
慌てた様子の僕に目を丸くした店主は、豪快に笑う。
「気にしなくてもいいんじゃないか?」
「え、ええ?」
「他の奴ならまだしも、従者様がやってくれたってんなら話は別だろ。後すこしすりゃ、観光地にでもなってんじゃないか?」
「えぇ……」
足跡刻みつけただけで観光地とか恐れ多いな。
でも、この街の盛況ぶりを考えたらそうしてもおかしくないのが怖い。
「それとな、聞きたいことがあるんだが、いいかい?」
「構いませんよ?」
「勇者様……いや、リーファちゃんは、今はどうしてんだ?」
店主の質問に少し違和感を抱く。
さりげなく店の外にいるリーファを見ると、暇そうにしながら足元の小石を蹴っている。
いや、やることが子供か、あの子。
「……元気ですよ?」
「そうかい、それはよかった。この街は、今はこうしちゃいるがあまりあの子には優しくなかったからな」
「……そう、ですか」
「ここに帰ってきているんだろう? まあ、あの後ろにいる黒いのがそうなのは丸わかりなんだが……」
「えぇ……」
「シーナがうちに買い物に来た時、あの子が暇そうに店の外で待ってる姿とそっくりだ」
どれだけ昔から変わってないんだ、あの子は……。
変わったのは身長だけなのかな……?
しかし、やっぱりリーファと知り合いなんだな。
シーナさんが買い物場所に指定するあたり、ここは昔から利用していた店なのだろう。
「久しぶりに顔を見たいところだが、ここで顔を見せるわけにもいかないのは分かるからな。元気だってことが分かればそれでいいさ」
「……伝えておきます」
「ああ……」
食材の入れられた手提げ袋を持った僕は、店主さんに別れを告げた後に軽く頭を下げた後に店の外へ出る。
そのままリーファと合流してから店主さんと話したことを話す。
「変わってないなぁ、あの人」
「やっぱり知り合いだったのか?」
「うん。不気味がられてた私達に、普通に接してくれた人」
そう言葉にしたリーファはフードを目深に被る。
「帰る前にカイトが足跡つけたところ見に行こ?」
「え、なんで?」
「どうなっているか気になるから」
……気になるけど、同時に怖くなる。
だって、あそこ、僕が巨大魚釣って、足跡刻みつけた場所でしょ?
「……いや、むしろ、魔魚釣りテイマーとして名を馳せることになるのでは……!?」
「そんなのいいから早くいこうよ」
「あ、うん……」
「リーファもカイトの扱いがうまくなってきたな……」
そんなやり取りを交わしながら港の方へと向かおうとすると―――、
「———はぁ、はぁ、まったく、ようやく到着したよ……」
向かおうとしている道の先の路地から一人の男性が、やや疲れた様子で出てくる。
背中には大きなカバンを背負った大柄な男性。
短く切られたくすんだ金髪に、少し野暮ったい眼鏡。
今から登山かキャンプにでも行くのかと思ってしまうほどの荷物を持った男性は、僕とリーファの姿に気付くと一瞬だけ目を丸くしながら、こちらに歩み寄ってくる。
「も、申し訳ない。ここから一番近い宿の場所を教えてもらってもいいかな?」
「宿ですか? ……リーファ、知ってる?」
「多分、あっちだった気がする」
唸ったリーファが、街のある方向を指さす。
「ありがとう……! 初めて来る場所だから困っていたんだ……!」
「え、ええ、それよりその荷物は……?」
「ああ、これねっ。これは僕の仕事道具さっ!」
そう言ってにかっと笑った男性は、お礼を口にしたあとに宿があるという場所に向かって行ってしまった。
なんだか不思議な人だったな。
旅人っぽい感じだったけれど、ここに仕事に来たのだろうか?
「さ、行こ。カイト」
「あ、うん。そうだね」
リーファに急かされ、港へと移動する。
港にはすぐに到着したわけだが、僕が足跡を刻みつけた場所には立ち入り禁止の如く、立て看板が立てかけられていた。
普通に危ないから入るなって意味かと思いきや、そこには―――、
『従者! アリハラ・カイト様の足跡!!』
と、無駄に達筆な文字で書かれていた。
観光地にするの早すぎじゃないですかね……?
他にも木の板をくりぬいて作られた等身大の魔魚が吊り下げられている光景を見て、もう色々とお腹いっぱいな気分になってしまうのだった。
ちょっとした重要キャラ登場回でした。




