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第百八十二話

あけましておめでとうございます。

新年、最初の更新となります。

 魔物による襲撃を受けたセントレアル。

 空に浮かぶ船から放たれる砲撃は、都市の至る場所に降り注ぎ大きな破壊をもたらしている。

 中でも僕達のいる施設には大量の魔物と、その背に乗る魔王軍兵士の姿を確認できていた。


「黒髪と自らが戦うテイマー! 間違いない!! こいつがアリハラ・カイトだ!」

「要警戒戦力の一人!」

「ならこいつを始末すりゃ、大手柄ってことじゃねぇか!」


 そして僕の前にもどこから侵入してきたのか、魔王軍の兵士と思われる荒くれもの共が現れた。

 三人の兵士と、傍で涎を床に垂らしてこちらを唸る赤色のオオカミ、レイジウルフがいる。


「……」


 彼らの前には、硬く閉じられた扉があり、その奥からはたくさんの人の気配がする。

 僕は黒猫が変身したマフラーで口元を隠しながら、彼らとの会話を試みる。


「どうして、魔物を使って人を襲うんだ?」

「ああ?」


 僕の突然の言葉に一人の兵士は乱暴な口調を返す。

 しかし、すぐに嘲りの笑みを浮かべると、後ろの扉―――恐らく、魔物から逃げた施設の従業員が立てこもっているであろう扉を、強く蹴る。

 扉の奥から複数人の誰かの悲鳴が上がる。


「んなもん、奪うために決まっているだろうが」

「むしろそれ以外に何があるんだ?」


 下卑た笑みを浮かべる兵士達に心が冷える感覚に陥る。

 一度、聞いてみたかったことだが、もう彼らから聞くことは何もない。


「それより、お前を殺せばたんまり褒美がもらえんだ。だから大人しく殺されろ!」

「ガァァ!」


 兵士の一人がレイジウルフをけしかけてくる。

 獰猛な唸り声と共に飛び掛かってくるレイジウルフを目にしながら、小さく吐息を漏らした僕は、気持ちを切り替えると共に―――レイジウルフの横っ面に蹴りを叩き込む。

 ただそれだけで、僕の後ろに転ぶように崩れ落ちたレイジウルフは動かなくなる。


「な、お、お前らも行け!」

「「ガァゥ!!」」

「黒猫さん、電撃」

「……う、うん」


 薙刀に変形したライムが電撃を帯びる。

 それを確認すると同時に肉体強化で身体能力を上昇させ、その場を跳び出す。

 すれ違いざまに二体のレイジウルフの胴を一振りで薙ぎ払いながら、兵士の一人のみぞおちに薙刀の柄尻を叩き込む。


「ぐ、おげ……!?」

「このッ!」


 我に返ったもう一人がその手に持った剣を振るうが、それをユランの魔力を纏わせた手刀で弾き、胴体に掌底を食らわせる。

 二人目が崩れ落ちたところで、最後の一人が取り乱しながら僕に飛び掛かってくる。

 だけど、その前に僕の伸ばした左腕が兵士の頭を掴み取る。


「……」

「ば、化物がぁ……!」

「僕からすれば、貴方達の方が化物だ」


 笑いながら人のものを奪ったり、傷つけたりする方が恐ろしい。

 だけど、それをどうこう言うのは無駄なのは、デウスとのやり取りで分かっている。

 電撃を浴びせ、気絶させた兵士を地面に落とした僕は、扉に近づき声をかける。


「もしもし、聞こえますか? 僕はヘンディル王国の従者のカイトです」


 僕達が争う音が聞こえていたのか、それとも僕のことを知っていたのかは知らないけど、返事はすぐに返ってきた。


『そ、外の賊は!?』

「倒しました。中には何人いますか?」

『に、二十一人です! 騒ぎが起こった時、偶然休憩時間でして……』


 二十一人……多いな。

 一旦シフのことを後回しにして、中にいる人たちを安全な場所に移動させようと考えていたけど、これは逆に外に連れ出す方が危険かもしれないな。

 僕も二十一人も守り切れるかは分からない。


「今、セントレアルは魔王軍の襲撃を受けています」

『ま、魔王軍……!?』

「この施設だけではなく都市全体が攻撃に晒されているので、今貴方達を外に連れ出すことはできません。……中に戦える人は何人いますか?」

『……私を含めて4、5人ほどです』


 一人もいないよりはいいか。

 いや、むしろ戦える人がいるからこそ、ここに留まる選択肢が選べたのだろう。

 取り乱して外に出てしまえば、間違いなく魔物達の餌食になっていただろうからな。


「窓をテーブルや椅子などで防いで、できるだけ音を出さないようにしてください。それと魔物は血の匂いにも引かれます。もし怪我をしている人がいれば、しっかりと手当てさせた上で窓や扉から離れた場所に移動させてください」

『は、はい。あの……できれば、ここにいて欲しいのですが……』


 そう願い出るのも当然だろうと思いながら、扉越しに僕は首を横に振る。


「……すみません。僕の魔力の性質上、魔物を引き寄せてしまいます。僕がここにいることで逆に皆さんを危険に晒してしまいます」

『そんな……』


 この階層にいる魔物は全部倒した。

 他の階層にはまだまだ魔物がいるだろうし、ここにいる人たちと同じように助けを待っている人がいるかもしれない。


「この施設内に安全な場所はありますか?」

『勇者の皆様が利用していた訓練場が避難場所となっております。あそこは構造上、頑丈に作られているので他の従業員もそこにいるかもしれません』

「……考えがあります」


 二十一人も移動するには、ここにはあまりにも魔物が多すぎる。

 ここは4階、階段を降りるにしても魔物と鉢合わせしないとは限らない。

 幸い、魔王軍兵士の数はそれほど多くないことは救いだ。


「施設内の魔物が一斉に下の階に降りていく音が聞こえてしばらくしたら、訓練場の方に移動してください」

『で、でも危険なのでは……?』

「僕がこの施設全ての魔物を外に惹きつけます」

「ッ!?」


 首のマフラーがぎょっ!? とした感じに震えるが、もうこれしかないだろう。

 扉の奥の人々もざわつきを見せているが、もう手段は選んでいられない。


『……分かりました』

「あと少し、頑張ってください。きっとうまくいきます」

『カイトさん、ご武運を』


 こちらの覚悟を慮ってくれたのか、苦し気に了承してくれる。

 最後に言葉を交わした僕は、扉から離れる。


「カイト、なにを考えているんだ? 君が純魔の魔力で魔物を惹きつければ、大量の魔物が君の元へと押し寄せてくるんだぞ?」

「うん、分かってる」

「自殺行為だよ……?」

「今のままならね。だからこそ―――」


 魔物によって破られた窓に足をかける。

 シフのいる場所は一階の秘密の部屋―――って話だったよな?

 本当は魔物を片付けながら下に降りて、シフと合流する手筈だったけれど、時間も限られているし手段を選んでもいられない。


「僕の一番の相棒を連れていく。よし、飛び降りるぞ。黒猫さん、頼む」

「は!? な、なにをするつもり―――」


 勢いのまま窓から飛び降りる。

 地上四階からのダイブ―――この世界に来る前までなら死を覚悟するような高さだけれど、今の僕にとってはへっちゃらだ。

 僕の首に巻かれた伸びたマフラーが、施設の壁に突き刺さり落下の力を和らげる。

 壁に手をついた僕は、そのまま下方を睨みつけ壁を走る。


「き、きき君はいつもこんなことをしているのか!?」

「ははは! 楽しいだろ!?」

「生きた心地がしないよぉ!」


 マフラーが壁に突き刺さっては引き抜かれ、僕の動きを補助していく。

 四階、三階、二階、と降りたところで壁を思い切り蹴った僕は、一旦空中に投げ出されながら右手で握りしめたライムをロープ状へと伸ばす。

 そのまま壁に吸着、引き寄せながら一階の窓を蹴破り中への侵入を果たす。

 当然、一階にいる魔物がこちらにやってくるが―――、


「押し通る!」


 大鎌へと変形させたライムを大きく振るい、薙ぎ払いながら目的の場所へ向かう。

 目的の古びた扉を見つける。


「黒猫さん!」

「うん!」


 マフラーの先端が鍵の形に変わり、扉に差し込まれる。

 がちゃりと音を立てて開かれた扉の先には、暗い地下室へと続く階段が見えた。

やっぱりカイトに振り回される黒猫さんでした。

マフラーってイメージしやすいからいいですね……。


別作品ではありますが、

『対毒スキルの間違った使われ方』


を、一時的に更新再開させました。

興味を惹かれた方は、そちらもよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 休みすぎです
[一言] 風に靡くマフラーはヒーローの流動さを高める・・ 姫ヒーローじゃなかった プリンセスオーガ 黒猫さん、ここを乗り越えれば楽しい日々がきっと!!!
[良い点] 補助動作するマフラーも浪漫があって良いなぁ・・・ 漆黒のマフラーを靡かせて全身金色に発光しながら変態機動するヤベーヤツ すっかりカイトの行動が超人枠に入ってて面白いです [気になる点] シ…
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