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第百六十話

第百六十話です。

 セントレアルでの二日目の朝。

 僕達は泊まった施設の食堂で、朝食を食べていた。

 さすがはセントレアル、しっかりと使い魔達の分までご飯を用意してくれていたので、お皿を余分に用意せずに済んでよかった。


「しかし、昨日見たシフはなんだったんだろうか」

「カイトが見た幻とか?」

「君は僕がどれだけ猫に飢えていると思っているのかな?」


 お皿いっぱいにのせられた料理を口に運んでいるリーファ。

 隣で野菜中心に盛り付けされたお皿を持ってきたチサトが凄い目で見ていることに気付かないのだろうか? と思いながら返答する。


「違うの?」

「いや、違わないけどさ」

「違わないのか……」


 同じテーブルにいるシフが呆れたようにそう口にする。

 先日見たシフではない黒猫。

 思わず抱えて連れて行きそうにはなったが、まさか別人ならぬ別猫とは思わなかった。


「もしかして、シフが分裂して……」

「するわけないだろう!? おぬしは私はなんだと思っているのだ!?」


 いや、ここは異世界。

 なにがあるかは分からない。

 ふとした拍子でやんちゃなシフと今のシフに分裂したってこともあるかもしれない。


「一目で見分けをつけられないとは、くっ、不覚だったな」

「カイト君。でもその猫、喋ったんだよね?」

「うん。少し声が高かったかな」


 自分のことをボクとも言っていたな。

 たしかに思い返してみれば、シフとも違う点がある。

 いや、待て。

 そもそもの問題がある。

 普通の猫って、喋れるのかな?


「チサト」

「なに? カイト君」

「もしかして、元の世界でも猫って喋れたの?」

「君は一体何を言っているのかな?」


 意味が分からないといった反応を返されてしまった。

 これは、もう少しだけ説明が必要か。


「いや、ふとした拍子にシフみたいに人間の言葉を話したり……」

「私は、君の動物の縁の無さを侮っていたようだ……!」


 額に手を当てたチサトはくわっと目を見開きながら、顔を上げる。


「いい、カイト君。普通の猫はね、喋らないんだよ!」

「そ、そうだったのか……!」

「あとインコは本当に喋るんだよ……!」

「嘘だろ!? 声とか加工されたものだと思っていたのに!?」


 インコとか僕を見るなり「キェェェェ!?」と悲鳴を上げて全然喋らないから、よくある一発芸を仕込んだ選ばれた一部のインコだけに許されたものだと思っていたのに。


「ライオンの狩りは雌ライオンの仕事なんだよ!」

「それは知ってる」

「あ、はい……」


 さすがに動物の雑学に関しては知っているよ?

 あくまで図鑑とかで得られる知識だけに限られるけど。


「この会話をおかしいと思ってしまうのは悪いことなのかな……」

「全然悪くないと思うぞ」

「キュウ」

「シャァ……」


 リーファと使い魔達になんだか冷めた目で見られているような気もしなくもないが、これでまた一つ動物に詳しくなったな。

 インコ型の魔物を使い魔にしたときには、沢山言葉を覚えさせよう。


「ちょっといいかしら?」


 僕達以外の誰かの声。

 一旦インコのことを忘れて、声のする方に振り返るとそこには朝食がのせられたトレーを持った二人の少女がいた。

 一人は、昨日チサトとリーファに話しかけていた人だな。

 赤みがかかった髪色と、琥珀色の瞳が印象的だ。


「あ、セーラ。おはよう」

「おはよう」

「おはよう、リーファ、チサト。朝食、一緒に食べてもいいかしら?」

「いいよー」


 二人は昨日既に知り合っているのか、気軽にオッケーを出す。

 リーファが頷くと、彼女の隣に移動する形に移動するセーラと呼ばれた少女。

 しかし、従者らしき少女は後ろに控えたまま座ろうとしない。


「イオ、貴女も座ったら?」

「いえ、従者が主である勇者様と同じ席に座るわけにはいきません」

「お堅いわねぇ」


 なんだろう、僕も立っているべきだろうか。

 イオ、と呼ばれた少女の言葉にぐさりと来るものを感じる。

 それに気づいたのか、セーラと呼ばれた少女は気軽な様子で話しかけてくる。


「この子の言葉は気にしなくてもいいわよ。私はセーラ・ルージェス、ヴィングル王国の勇者よ。で、後ろの子が従者のイオ。よろしくね」

「よろしくお願いします。アリハラ・カイトです。ここにいるのは、僕の使い魔達です」


 僕の声に顔を上げた使い魔達がぺこりと頭を下げる。

 そんな使い魔達を見て目を丸くした彼女は、興味深げな笑みを浮かべる。


「すごいわねぇ、見慣れない魔物ばかり」

「頼れる相棒達ですよ」


 すると、今度はチサトがセーラさんを見ながら口を開く。


「セーラとは昨日知り合ったの」

「ええ、話を聞いてる間に仲良くなったのよー」


 なんだろう、マリーナさんとは違う。

 こう、ぐいぐい無理やり割って入ってくるんじゃなくて、するりと自然に会話に入りこんでくる感覚だな。


「あらリーファ、凄い食べるわね」

「私、太らないから」

「んー、これ喧嘩売られてるのかしら? 比率的にもっと野菜を食べなさい。ほらほら、私の分けてあげるからー」

「や、やめて……痩せちゃう……」

「どういう体の構造してるの……?」


 無理して会話に入る必要もないので、というより男女比的に会話に入りこむ余地がないのでゆっくりと目の前の食事に集中しようとすると、不意にセーラさんがこちらを見ていることに気付く。


「……?」

「いえ、二人の勇者共通の従者と聞いて興味はあったけれど、昨日の戦いはすごかったわね」

「そ、そうですか?」

「テイマーが使い魔なしに、戦闘系の魔法使いを圧倒するって結構おかしな話なのよ? 」


 たしかにそれは自覚している。

 でも、それは肉体強化という反則技を使っているようなものなので、それほど誇れるものでもない。


「正直、スカッとしたわね。ああいう物言い、好きじゃないもの」

「セーラから見てもそうだった?」

「多分、あの場にいたほとんどがそう思っているんじゃない?」


 まあ、関係なくても誰かの悪口とか聞くと気分が悪くなったりするからな……。

 周りもそんな感じだったのかな?


「ああいうの美しくないじゃない? リーファが受けなければ、私が決闘を持ちかけていたところよ」

「え、そうなの?」


 驚くリーファにセーラさんは頷く。

 心なしか後ろにいるイオさんは、困ったような表情をしている。


「例え、偽りだとしても勇者という肩書を持つからには責任が伴うわ。むしろ私達は国を代表して来ているのだから、貴方達への無礼な発言は見過ごせないものだったの」


 ……なんというべきか、言葉に力を感じさせるな。

 どことなくジェシカ様に近いように見える。

 もしかして、貴族とか王族の方だったりするのかな……?


「ようやくまともそうな勇者に会えたような気がするな、カイト」


 セーラさんの言葉を聞き、感心したように僕に話しかけるシフ。

 それに頷いていいか分からずにいると、セーラさんの視線がシフに向けられていることに気付く。

 彼女は驚いたような、興奮したような表情のまま背後のイオさんへと振り向いた。


「イオ、見て! 猫が喋ったわよ!?」

「私はシェイプシフターだぁっ!」


 あ、久しぶりのやり取りだ。

 セーラさんが心なしかはしゃいでいるように見えるが、そこらへんの振る舞いは僕達と同じ年頃に思えた。


「かわぃぃ……」

「ん?」

「ゴホンッ!」


 微かに聞こえた呟きにイオさんへと視線を向けると、わざとらしい咳払いをされてしまった。

 ……聞かなかったことにしよう。


『訓練場で―――』

『他の勇者達が―――』


「ん?」


 なにやら食堂の入り口近くが騒がしいな。

 何かあったのだろうか?

 同じ声を聞いたのかリーファも首を傾げながら入り口の方を見ている。


「訓練場で何かあったみたい」

「気になるわね。朝食を食べたら行ってみない? もちろん、一緒に」

「そうしよっか」


 セーラさんの提案に頷いた僕達は、目の前の朝食に集中する。

 それにしても訓練場で何が起こっているのだろうか。

 事件が起こったって空気じゃなかったけど、なんだか胸騒ぎがするな。



お爺ちゃんは早起き(偏見)


勇者と従者を全て名前アリで出すと個性の殴り合いが始まります。

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― 新着の感想 ―
こいつの胸騒ぎは絶対に碌なことが起きないやつだぞ。絶対に。
[一言] でもテイムオーガが殴り勝つんでしょ?(純粋な目)
[一言] お爺ちゃんは起こさなきゃいつまでも寝てるタイプと夜中の2時ぐらいから活動を開始する2タイプがあるぞ(偏見
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