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第百二十三話

第百二十三話です。


感想欄を見て、やべぇキャラの上位争いが激しすぎることに気づいてしまう。

 オロチに浅く突き刺さったライムが変身したノコギリ。

 それを持つ僕の手に掌を添えた彼女の言葉に、僕は一瞬だけ呆気に取られてしまう。


「やめろ……!」


 我に返って腕に力を籠める。

 メリアも加減しているのか、嬉しそうにしながら僕が抵抗する力と同じ力で圧力をかけてくる。

 ノコギリの刃が震え、オロチが恐怖の声を上げる。


「ギ、ギィィ!?」

「優しさ、というのを過小評価しているわけではありません。むしろ、貴方様のそれは美徳とも言える。しかし、過度なものは貴方様の重荷となってしまいます」

「やめろ! オロチはもう戦う気はないんだ……!」

「あぁ、カイト様。この愚図は元は私が作り出した命、貴方様の糧になるのならば本望でしょう」


 恐怖の声を上げるオロチ。

 また“死にたくない”という強い感情が伝わってくる。

 こいつはユランを殺した。

 それは、絶対に許されないことだけれど、これは(・・・)違う。


「ッ! がぁぁ!!」

「あら?」


 肉体強化で無理やり腕を振り払う。

 その際に捕まれていた左腕から骨の折れる音と激痛が走ったが、それでも右腕のみでライムを掴み取った僕は、力の限りにノコギリ型の刃を振るう。

 肉体強化と風の力を籠めた全力の横薙ぎ。

 神獣相手に容赦の必要はない! 迷いなくメリアの首に叩きつけられた刃は―――、


「貴方様が怒るのは当然のこと。お叱りは受けましょう」


 ―――大きな金属音を響かせ、弾かれてしまう。

 刃が直撃した部分には薄っすらと白色の鱗が浮かび上がり、彼女の頬までそれがのぼっていた。


「ふふふ、愚図との戦いを経て成長なされたようですね。私、自分のことのようにとても嬉しく思います」

「……っ!」


 攻撃されても尚、一切の怒りを抱いていない様子のメリアは僕の全身を見る。


「傷を負ってしまいまいましたね。すぐに癒してさし上げます」


 メリアが無防備に僕へと手を伸ばしてくる。

 僕はその手を跳ね除ける。


「?」

「君は、何がしたいんだ?」


 弾かれた手を見たメリアは不思議そうに首を傾げるだけだ。

 正直、身体が痛すぎて意識が朦朧としている。

 治してくれるなら治してほしい―――が、僕はこいつを素直に信じることができない。


「全ては貴方様のためです」

「……君自身のためじゃないのか?」

「はい、私のためでもあります。つまりは貴方様のためになることが、私のためにもなるということです。……いいことづくしですね」

「……」

「他に、なにかお聞きしたいことはありますか?」


 開き直った……。

 いや待って、開き直ったのか!?

 微塵も嘘を感じさせないメリアに言葉を失う。


「あ、そういえば、愚図に勝つことができたら貴方様の願いを聞き入れる約束でしたね」


 まさか、約束を守ってくれるのか?

 普通に破られる可能性の方が高いと思っていたけど―――、


「申し訳ありませんが、約束は破らさせていただきます」

「うぐ!?」


 伸びた両手が僕の頭を掴む。

 必然的に身長の低いメリアを僕が見下ろすように無理やり視線を合わされる。

 やっぱり守ってくれないのかよ!?

 しかもメリアの瞳に浮かぶ怪しげな光は、もしかして、これは……!


「ま、まさか僕を洗脳するつもりか……!?」

「はいっ!」


 なんで嬉しそうなんだぁ!

 凄まじい力で僕を抑えつけた彼女は、視線を合わせたまま僕へと語り掛けてくる。


「まずは、時間を掛けて互いの理解を深めていきましょう?」


 僕の意識に何かが入り込もうとしている。

 メリアの瞳から視線を逸らすことができなくなる。


「ライムッ、逃げ……ろ……」

「許可できません。そのスライムは必要です」

「キュゥ!?」


 手から離れようとするライムをメリアが睨みつけると、それだけでライムは金縛りにあったように震えて動かなくなる。


「あの役立たずは……逃げたようですね。まあ、いいでしょう。アレは貴方様のお力を引き出すのに役に立ってくれましたから。今は見逃してあげましょう」


 役立たず? 逃げた? 誰のことを言っているんだ?

 もうまともな思考すらもままならない。


「まずは、そうですね。貴方様を追ってこの遺跡に足を踏み入れようとしているゴミ共を相手に、貴方様のお力を確認させてみましょうか」

「———……ッ!」


 そんなこと誰がするものか!

 そう声に出そうとするも、最早僕の声は僕のものではなくなっていた。

 まともに声が出せなくなった僕に満足そうに頷いたメリアは、さらに目の光を強める。


「カイト様、私の名前をお呼びください。私との縁が結ばれれば、貴方様は私の力の一部をその身に受ける資格を得ることができます」


 駄目だ。

 言うな。

 必死に意識を保ち、催眠に抗う僕の頬にメリアが手を添える。

 その時、フィリの時と同じように視界にノイズが走り、今見ている光景とは別の景色が映り込む。


『その封印は、貴女を外に出さないためのものよ。メリア』


 目にしたのはメリアの記憶。

 透明な鎖のようななにかに縛り付けられているメリアの前に、金髪の女性がいた。


『こんな方法をとってしまってごめんなさい。でも、貴女は地上の人間を皆殺しにしようとするでしょう?』

『……』

『失望、してるよね』


 何も喋らないメリアに女性は表情を暗くさせる。

 服装を見るに、どうやらどこかへ戦いに向かおうとしているように見える。


『でも、もう止められないの。私は行かなくちゃならない』


 悲しそうに、それでも笑顔を浮かべた女性に視界が揺らぐ。


『……事が済んだらベルンが封印を解いてくれるわ』

『……』

『さよなら、メリア』


 最後にそう言い残した女性はそのまま背中を見せて、どこか向かっていってしまう。

 すると、鎖に繋がれた手が女性の背中に伸ばされる。

 ――この時の彼女は、なにを思っているのだろうか。

 ライムやオロチを平気で殺そうとしたり、言動の端々に残虐な部分がある。

 洗脳されかかっているからか、ぼんやりとしたまま目の前の光景を眺める。


『———いかないで』


 あまりにも小さく、弱々しい声。

 その呟きが届かなかったのか、金髪の女性は足を止めずに暗闇へと進んで行く。

 虚空に伸ばされた手が力なく下がる。

 その光景を機に視界が元に戻る。

 元に戻った視界には、メリアが驚愕の表情のまま僕を見上げている。


「カイト様、まさか、そんな……この記憶まで……見られるなんて……」

「———メ、リア」

「……え?」


 彼女の名前を呟いたのは僕の意思か、催眠によるものか分からない。

 ただ僕の中にはフィリの時と同じ―――いや、それ以上の悲しみの感情が深く、渦巻いていた。

 縁が繋がり、彼女の存在をより強く感じる。

 それに伴い僕の意識が限界を迎え、視界が暗くなっていく。

別作品のオーガはそもそもの精神耐性がえぐいので普通はこうなります(先制)

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― 新着の感想 ―
???「ぼっ、僕を洗脳する気か!?」 「はいっ!」 ???「ヌンッ!」 「....ゑ?」
[一言] あいつか〜・・・
[一言] 「治癒魔法の間違った使い方」のウサトと似ていると思えばウサトとは決定的に違うところもあってとても面白いです!
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