飲み込んでから喋りなよ
「ありがとうございましたー!」
購入したワンピースをそのまま着せて店を出る。
深く頭を下げた店員さんにつられて、リタとフィルも頭を下げる。
「さて、次はどこに行く?」
「さっきの食べたい!」
そう言ってフィルはぐいぐいと手を引っ張る。
今度はリタが引っ張られる番だ。
「うわ、ちょっと」
「行こー、行こー!」
走り出すフィルのワンピースの裾が少しめくれ上がり、白い太ももがちらりと見える。
「ちょ、走らないで!」
食べ物は逃げ出さないから、とフィルの腕を強く引く。
むぅっと膨れたフィルは、早歩きで目的地を目指す。
少し歩いた先で立ち止まったフィルが香ばしいにおいのする屋台を指さす。
「リタ、これー」
この町から少し離れた海でよくとれる大きな貝にソースをかけて焼いたものを売っているようだ。
駆け寄るフィルに気づいた店員の男性が笑顔で話しかけてくる。
「お嬢ちゃんたちいらっしゃい! 一ついかがかな?」
「ください!」
屋台に体当たりしそうな勢いで返事をするフィルを引きとめ、リタは一つ分のお金を支払う。
「まいどありー!」
紙の皿に乗った商品を嬉しそうに受け取ったフィルが手を振ると、店員の男性も振り返してくれた。
「フィル、それ何か分かって買った?」
「なんかいい匂いしてたから! なにこれ?」
貝だよ、とリタが答えるが早いか、フィルはかぶりついていた。
「おいしー! リタも食べなよー」
そう言って口元に差し出すので、リタは口を開けて少しかじった。
「ん、おいしい」
「でしょー!」
得意げに胸をはったフィルは、残りを一気に口に放り込む。
「ふいはあっひにいほう、いは」
「全部飲み込んでから喋りなよ」
ちょっと待って、というように片手をリタの方に向けてあげ、咀嚼を続ける。
ごくんっ、とようやく飲み込んだフィルは笑顔でリタの手を取る。
「じゃあ次はあっちねー」
服屋さんまでの道で目についたところを覚えているのだろうか、フィルはまっすぐに目当ての物まで歩いていく。
「次はこれ! おいしそうだよねー」
次にフィルが食べたがったのは、細かく削った氷に甘いシロップをかけたものだった。
赤、青、緑、黄色、と様々な色のシロップがあるようだ。
「じゃあねー、赤いの! リタは?」
「私は青をお願いします」
そう注文すると店員は奥の箱から大きな氷の塊を一つ取り出した。
その氷を削る用の機械にセットし、上についた取っ手をまわす。
するとどうだろう。機械の下に置かれた器に細かくなった氷が山になっていく。
二つ分の山を作り、赤と青のシロップをかけて出来上がりだ。
「はい、お待たせ」
店員さんが器にスプーンをさして、赤をフィルに、青をリタに手渡す。
「ありがとー!」
「ありがとうございます」
フィルは冷たい器を太陽に掲げ、キラキラだーと声をあげる。
リタが、溶けるよと声をかけると急いでスプーンを手に取った。
フィルは、シロップが一番かかっている山のてっぺんをすくって口に入れる。
「あっまーい!」
目を輝かせるフィルを見て、リタも氷をすくって口に運ぶ。
甘い。疲れた体にちょうどいい甘さだ。
ゆっくりと冷たさと甘さを味わっているリタとは裏腹に、フィルは一気にかき込む。
すると案の定フィルは頭を抱える。
「頭、いたい……」
そう言ってしゃがみ込むフィルの向かいにしゃがみ、自分の器をフィルの額に当てる。
冷たい食べ物で起こった頭痛にはこれが効くのだ。理由までは知らないけれど。
「おー、治った! ありがとー」
「うん。ゆっくり食べなよ」
そう言ったリタの顔にフィルがグイと近づく。
「わ、リタの舌あおーい!」
「フィルの舌だって赤いよ」
もっと見せて!と、はしゃぐフィルにべーっと舌を出す。すると真似をしてフィルもべーっとする。
青い舌を見て笑うフィルにつられてリタも笑い出す。
「甘くて楽しいねー!」
「そうだね、楽しいね」
ね!と笑い、残りの氷をかき込んで頭痛で眉間にしわを寄せるフィルに、リタはおなかを抱えて笑った。




