表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

45/246

フィルの描いた魔法陣で涼しくなりたい



「あつい……」


 フィルはリタの太ももに頭を乗せてボソボソと呟く。


「クレアさんから貰ったやつは?」


 リタがそう尋ねると、フィルは面倒くさそうに立ち上がり、サクから貰った厚い本の間から二枚の紙を取り出した。


「これー?」

「涼しくなるにはそれしかないよ」

「読んでー」


 ダラダラとソファに戻り、リタに紙を渡す。そのまま再びリタの太ももに頭を置いた。

 リタはびっしりと字の書かれたメモに目を落とす。真ん中に大きく魔法陣が書かれていて、その周りにクレアの可愛らしい字でアドバイスが書かれている。


「なになに、冷たい空気は下に落ちるから出来るだけ上に描くとよい?……どうやって?」


 リタはその一つを読み上げて首を傾げた。


「クレアにきいたらー?」

「ちょっとこれ貸してね」


 フィルの首にかかったペンダントを握る。

 リタのものは、まだただのペンダントだ。そんなに急ぐこともないだろう、とリタはフィルに魔法をかけることをお願いしなかった。


「えーっと、クレアさん? あの冷気を出す魔法陣について質問なんですけど」

『ああ、なんでも聞いてくれ』


 少し眠そうなクレアの声がリタの頭に響く。


「魔法陣を上の方に描く、ってどうやるんですか?」


 リタが思いついたのは、せいぜい台を持ってきてそれに登って描くぐらいだ。しかし、魔法なのだから他に方法があるのかもしれない、とリタは考えた。


『あー、そういえばボクも知らないなあ』

「え、クレアさんも描けるんですよね?」

『描けるのと、描くのは違うだろう? そういうのは全部使用人がやってくれるんだよ。何て言ったって、ボクは魔王だからな!』


 ちょっと聞いてくるから待ってろ、という言葉を最後にリタの頭の中は静かになった。


「ねえ、クレアさんのお城で誰か見たことある?」


 未だ膝でゴロゴロしているフィルに尋ねる。

 リタは城でクレア以外の人を見たことがなかった。少し席を外している間に食器は片付けられ、脱衣所には綺麗なタオルが用意されていた。その上、城はどこもかしこも綺麗に掃除されていていた。


「見たことあるよー」

「え、どんな人?」

「うーん、お料理出したり下げたりしてる人? いっぱいいたけど、みーんな同じような格好してたよー」


 フィルは何かを思い出すように顎に手を置き、そう答えた。

 やっぱりいるんだ、とリタが思っているうちに、ペンダントが青く光り再びクレアの声が頭に響く。


『待たせたな、リタ。なんでも、脚立で登って描いてるらしい』

「あ、地面に描いて移動させるーとかっていうのはないんですね」


 自分の想像を上回らない答えに、リタは肩を落とした。魔法も結局そんなものなのだろうか。


『そうだな。それか諦めて届くギリギリに描くかだろうな』

「そうですか、何か登れるものを探してみます。ありがとうございました。

……上に描くしかないってさ」

「えー、そんなの無理だよー」


 面倒くさそうに舌を出したフィルに、リタは考え込む。前回は地面に下書きしたけど、家の壁に何かで下書きをするわけにもいかない。


「あ、サクに描いてもらうのはどうかなー」


 ポンと手を叩いてそう言ったフィルの額を優しく叩く。全く痛くないはずなのに、フィルは眉間にシワを寄せた。


「フィル、そんなんじゃ成長しないよ?」

「暑くなくなれば何でもいいもーん」


 そう言って頬を膨らませ、唇を尖らせる。リタはそんなフィルの頬をつついた。ぷにぷにと柔らかい。


「私、フィルの描いた魔法陣で涼しくなりたいなー」


 わざとらしい言葉だったが、フィルはピクリと反応して勢いよく立ち上がる。照れたように頬をかいて、リタから少し視線を逸らした。


「もー、わかったよー」

「よし、やってみよう!」




 倉庫の中を一通り探したがハシゴは見つからず、諦めたリタは椅子を使うことにした。リビングの壁近くに椅子を移動させ、フィルがそれに登る。隣にもう一脚運んで、それにはリタが登った。


「これ、よく見てね」

「うーん、見てもわかんないー」

「とりあえず丸を描いてみようか」


 コクリと頷いたフィルは、目をつぶって壁に大きく丸を描く。何を思って描いているのかリタにはわからない。しかし、描かれた円の内側がキラキラと輝き、とりあえず成功したのだということがわかった。


「じゃあ、とりあえず簡単そうなところから描いてみたら?」

「どこが簡単なのー」


 フィルはリタを見て頬を膨らませる。紙に書かれた魔法陣はどこもびっしりと模様で埋まっているのだ。クレアが透過の呪文だと教えてくれた部分は、より一層模様が詰まっている。


「あはは、じゃあ上の方からいこうか」


 リタは苦笑いでそう促した。フィルは頬を膨らませたまま、円の上部に指を乗せて紙をジッと見つめた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ