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帰ってきたー



 村中が青い光に包まれる。

 光の中心は、リタの家のちょうど真ん前だ。


「んー、帰ってきたー!」


 先に目を開けたフィルはそう言って伸びをする。

 手にはきちんとサクから貰った魔法陣の本がある。


「おかえり、フィル」

「ただいまー」


 フィルは笑って真正面からリタに抱き着く。

 あまりの勢いに、リタは少しふらついた。


「これ、サクに教えてもらってから帰ってこればよかったかなー?」

「誰にでもできるって言ってたから大丈夫なんじゃない?」


 フィルはリタから離れて、本をパラパラとめくってみる。

 わかっているのかわかっていないのか、フィルは眉間にシワを寄せて難しそうな顔をする。


「じゃあやってみようよ!」


 そう言ってリタは目を輝かせる。

 自分にはない力にとても興味があるようだった。


「んー、今日は疲れたしやめとく」

「まだ何もしてないよ?」


 本を閉じ、リタの背中にベッタリとくっつく。


 うーん、と何かを考えている様子のフィルを半分引きずるように、そのまま家の中へ入る。


「今日はもう……寝る!」


 玄関のドアを閉めたところで、フィルが声高らかにそう宣言をした。


「え、さっき起きたところだよね」

「よく寝れなかったからー」

「いや、寝てたよ」

「そうかなー? でもちょっと眠いかも……」


 フィルは大きくあくびをした。

 あまりにも寝すぎではないか、とリタは少し心配になる。


「じゃあ私は町に行ってくるから、寝てる?」

「はーい、いってらっしゃーい」


 目をこすって寝室へと向かうフィルを見送り、リタは再び家を出た。





 町ではいつも通りの買い物をした。

 八百屋の店員さんは今日も変わらず元気だ。


 フィルが美味しそうに食べていたので、クッキーも買って帰ることにした。

 クッキー屋台も相変わらず列ができていた。





 リタは最後に、カティと一緒に来た花屋に向かった。


「いらっしゃいませ。今日は何をお探しですか?」

「えっと、植物の種って売ってますか?」

「花も野菜もございますよ」


 こちらになります、と店の端へ案内してくれる。

 そこには色とりどりの植物の種が並んでいた。


「うーん、じゃあこのお花と……」


 リタは数種類の花と野菜の種を選ぶ。

 花にも野菜にもあまり詳しくないので、適当に目に付いたものを選んだ。


 お金を払おうと店主に渡すと、各植物の育て方についてのアドバイスを話し始めた。


 この花は水をあげすぎないほうがいい、こっちはたくさん太陽の光に当てたほうがいい。

 フィルの魔法で育ててもらおうと思っているリタは、話半分で聞き流していた。






「ありがとうございました」


 店主は笑顔で頭を下げて、リタを送り出す。リタもペコリと頭を下げた。


 思いの外遅くなってしまった、と少し早足で帰路についた。





 帰り道、リタは花屋の店主の話を思い返していた。


 『愛情たっぷりで育ててあげてくださいね! 必ず綺麗な花を咲かせますよ!』

 長いアドバイスの最後を、彼は笑顔でそう言って締めくくった。


 リタは森の中で、手に持った花屋の袋を覗き込んで考える。


 ――魔法で育ててもらおうというのは間違いなのだろうか? 


 モヤモヤと考えているうちに家に着いていた。


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