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パジャマパーティだ!



「パジャマパーティだ!」


 クレアは両手を高く突き上げる。


「この城に誰かが泊まりに来るなんてはじめてだ!

よーし、まずお風呂だな!」


 両手を上げたままぴょんぴょんと跳ねる姿はまさに子供だ。

 満腹でぐだっとしているフィルの背中を叩く。


「いーたーいー」

「な、お風呂行こう!」

「やだー、もう寝るー」

「さっきまで寝てただろー!」


 クレアはフィルに覆いかぶさり、体重を預ける。


「なー、お風呂!」

「リタと行って来たらー?」


 フィルは大きくあくびをする。

 面倒くさそうなフィルを諦め、リタに近寄る。


「ボク、三人で入りたいんだ……」


 うつむき加減で弱々しくそう呟いた。

 リタはクレアの頭に手を置き、フィルに話しかける。


「フィル、今日食べて寝てしかしてないでしょ」

「だってー、お腹すくし眠いもん……」

「美味しいご飯作ってもらったよね?」

「うぅ……そうだけどー」

「クレアさんと一緒にお風呂入る?」


 フィルは、チラリとクレアを見てしぶしぶ頷いた。


「わかったよー……」

「本当か!!」


 ぱあっと明るい顔になり、クレアは再び跳ね上がる。


「ありがとう、リタ!

じゃあ二人ともついてこーい!」






「うひゃー、すっきりー!」


 脱衣所で勢いよく服を脱いだフィルは突然はしゃぎだす。

 嫌がるそぶりは見せていなかったが、よく考えれば二日連続で服を着ていた。

リタは、偉いねー、と撫でようとして頭まで持っていった手を引っ込めた。


「どうしたのー?」

「あ、いや、なんでもない」


 首を傾げたフィルは、後ろで服を脱いでいたクレアの方に目をやる。


「あ、クレア、リタと一緒だねー」


 何を言っているのか、と目線の先を見ると視線は完全にクレアの胸元にある。

 それに気付いたクレアはムッとして声をあげる。


「な、リタと一緒にしないでくれ!

ボクはまだまだ成長期なんだ!」

「ふーん」


 ニヤニヤと胸を張るフィルと、ぐぬぬとタオルの端を噛むクレア。

 完全に巻き込み事故にあったリタは落ち込んだ。


「リタ、着たままじゃ入れないぞ?」

「……わかってます」

「先に入っているからなー」


 クレアは角を外し、楽し気にフィルの手を取る。


「お風呂では取るんだ……」


ポツリと呟いたリタをよそに、二人はお風呂場に入っていった。








「リタ……ボクはもう無理かもしれない……」

「ちょっとのぼせただけですよ」


 お風呂場ではしゃぎすぎたクレアは、真っ赤な顔で大きなベッドに横たわる。

 なにを大げさなことを、とリタは思ったがクレアはいたって真面目な顔だ。


「はい、お水飲んでください」

「リタ……魔族はみんないい奴らばっかりなんだ……」


 リタから受け取った水を一気に飲み干し、クレアは涙目になる。


「だから、ボクが死んだら魔族はリタとフィルに頼むからな……」

「クレアさん、のぼせただけなんですから」

「だってぇ……」


 クレアはなぜか大粒の涙を流し始める。

 リタは首に巻いた冷やしタオルを新しいものに変え、うちわで扇ぐ。


「クレア、だいじょーぶ?」


 一方、クレアと同じくらいお風呂ではしゃいでいたフィルはピンピンしている。


「フィルはまず服を着ようか」

「えー、クレアだって着てないじゃーん」


 体にバスタオルを巻いただけのクレアを覗き込んで、フィルは言い訳をする。


「クレアさんはとりあえず横になってないといけないから。フィルは風邪ひくよ?」

「兵器だからへーき!」

「はいはい、わかったから」


 上手く言えたと思ったフィルはムッと膨れる。


「もー! わたし寝るからね!」


 フィルはそう言ってクレアの横に寝転ぶ。



 ギュッと目をつぶって数分後には寝息を立てていた。


「……本当に寝たな」

「……寝ましたね」


 体調が戻ったクレアは、恥ずかしそうにパジャマを着る。

 弱っていたとはいえ、泣いたことが恥ずかしかったのだろうか。


「……ボクたちも寝ようか」

「そうですね」


 クレアは明かりを消しフィルの左側に、リタは右側に入る。

 クレアがいつも一人で寝ている大きなベッドには、三人で寝ても余裕がある。


 楽しい思い出を胸に、クレアはフィルを抱きしめて目を閉じた。



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