第6話最初の買い物は、悪徳企業の買収
『帝国システム開発』の社長室。
「おい大河原、あの佐藤ってガキはどうした」
ふんぞり返る禿頭の社長、根津が、葉巻の煙を燻らせながら大河原を睨みつける。
大河原は、包帯でぐるぐる巻きにされた右手を震わせながら、冷や汗を流していた。
「それが、あいつ何か怪しい術を……私の手がこんなに……」
「言い訳はいらん! 損害が出たらお前の給料から引くからな!」
根津がデスクを叩いたその時、社長室の重厚なドアが、ノックもなしに開いた。
「失礼します」
「テメェ、佐藤! 何の用だ!」
大河原が立ち上がるが、俺の姿を見て一瞬で顔をこわばらせ、一歩後ろに下がった。
根津社長は不機嫌そうに鼻を鳴らす。
「お前が佐藤か。会社を無断で辞めてタダで済むと思うなよ。損害賠償を請求して――」
「これ、見てください」
俺はスマホの画面を、根津の目の前に提示した。
そこにあったのは、この『帝国システム開発』の全株式の「51%」を、俺が先ほど市場で買い占めたという証明書だった。
「は……? なんだこれは」
「要するに、俺がこの会社の筆頭株主、つまり新しいオーナーです、根津さん」
「な、何を馬鹿なことを! うちの株を買う金がどこにある!」
根津がガタガタと立ち上がる。
俺は支部長から貰ったVIPカードをチラつかせ、冷ややかに笑った。
「ダンジョンの富を舐めない方がいい。……さて、新社長としての最初の命令だ」
俺はデスクを指差す。
「根津、お前は今日からヒラの平社員だ。そして大河原、お前はその根津の『お世話係』になれ。明日から毎日、二人でオフィスのトイレ掃除を24時間体制でやってもらう」
「ふ、ふざけるな! そんな命令――」
「嫌ならクビですが? ああ、その代わり、今までお前たちが社員にやってきた違法残業の証拠、全部警察に提出しますけど」
俺がポケットから社外秘データの入ったUSB(第3話で回収したもの)を取り出すと、二人の顔から完全に血の気が引いた。
「あ、あの、佐藤様……いや、佐藤社長……!」
手のひらを返して縋り付こうとする大河原。
俺はそれを一瞥し、かつて自分が座っていた狭いデスクを見下ろした。
「せいぜい、命を切り売りして働いてくれよ。俺の会社のために」
社長室を後にする俺の背中に、現代社会のルールが音を立てて崩れていく感覚が心地よかった。
だが、これで終わりではない。
俺のこの異常な「力」と「富」に、現代の別の『捕食者たち』が目を付け始めていたのだった。
読んでいただきありがとうございます!
評価とブックマークをしていただけると執筆の励みになります。
次回もお楽しみに。




