第5話1億倍の買取価格
「な、なんだこれは……!?」
猪瀬が椅子から転げ落ちそうになりながら叫ぶ。
トレイの上で輝いていたのは、もはやただのボス魔石ではなかった。
不純物が完全に消え去り、太陽のように激しく明滅する、伝説級の『神純度魔石』。
現代のギルドが数年に一度、最深部で見つけるかどうかという超希少品だ。
「レインボー……いや、ゴッドクラス!? ば、バカな、鑑定エラーか!?」
猪瀬の短い指が、キーボードをパチパチと狂ったように叩く。
しかし、画面に表示された推定買取価格の数字は、変わらない。
『35,000,000円』
三千五百万円。
さっきの一万五千円から、実質2000倍以上の大化けだ。
「どうします? 売るのやめて、別の大手ギルドに行きましょうか」
俺が魔石に手を伸ばすと、猪瀬が血相を変えてフロントガラスにへばりついてきた。
「ま、待ってくれ! 頼む! 私のミスだ、今すぐこの価格で買い取らせていただく!」
このレベルの魔石を他所に持って行かれたら、こいつの査定員生命は終わりだ。額に脂汗を大量に浮かべ、必死に頭を下げてくる。
「いいえ、結構です」
俺は魔石をひょいと掴み、カバンに仕舞った。
「ひっ、あ、待って――」
背後で青い顔をして絶望する猪瀬を無視し、俺はロビーの反対側にある、ギルド最上級の『特別買取VIPルーム』へ直行する。
そこには、騒ぎを聞きつけたギルドの支部長が、すでに直々にスタンバイしていた。
「佐藤様ですね! お噂はかねがね。我がギルドの総力を挙げて、最高値でお取引させていただきます!」
揉み手で迎える支部長。
ものの数分で、俺のスマホの口座アプリに、国家予算の一部のような大金が振り込まれた。
ピコン。
『預金残高:35,000,000円』
社畜時代、身を粉にして働いて、毎月手元に残るのは数万円だった。
それが、たった一瞬でこれだ。
「金なんて、ただの数字だな」
さて、手に入れたこの大金。
何に使うかは、もう決まっていた。
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