第4話換金所の嫌がらせ
東京・新宿にある国内最大級のダンジョンギルド、その換金窓口。
昼下がりのロビーは、一攫千金を狙う冒険者たちでごった返していた。
「おい、次。並んでるんだから早くしろよ」
パーテーションで区切られた受付の奥から、だるそうな声が響く。
席に座っていたのは、仕立ての良いスーツを着た小太りの男。査定員の猪瀬だ。
俺は無言で、カバンから第2話で手に入れた深紫色の巨大な魔石を取り出し、トレイに置いた。
ゴトッ。
重苦しい音が響く。
その瞬間、猪瀬の目がギョロリと剥かれた。
「……ほう。これを君が?」
猪瀬はピンセットで魔石を弄び、値踏みするような視線を俺に向けてくる。
どう見てもただの一般人、しかもついさっき会社を辞めてきたばかりの男だ。プロの装備すら持っていない。
猪瀬の口元が、品下劣に歪んだ。
「まあ、悪くない輝きだがね。今の市場は飽和していてねえ。それに、素人が出所も分からん魔石を持ち込むのはリスクがある。……そうだな、一万五千円、といったところか」
一万五千円。
思わず鼻で笑いそうになった。
本来なら、数百万、いや数千万円の価値がある最高級のボス魔石だ。完全にカモにされている。
「ずいぶんと安いですね」
「嫌なら他所へ行くんだね。まあ、登録もしていない一般人の持ち込みなんて、どこも買い取っちゃくれないがね」
猪瀬は鼻を鳴らし、魔石を没収しようと手を伸ばしてきた。
現代社会の理不尽。
昨日までの俺なら、ここで諦めていただろう。
だが、今の俺には『時間の主導権』がある。
「そうですか。じゃあ、価値を分かりやすくしてあげますよ」
俺はトレイの上の魔石に、そっと指先を触れさせた。
――『時間搾取』、いや。今回は逆だ。『時間進進行』。
魔石の中に、ほんの数年分の時間を「流し込む」。
ピキピキと、深紫色だった魔石の表面に、金色の筋が走り始めた。
ダンジョンの魔石は、時間を経るほどに内部の魔力が凝縮され、純度が高まる性質がある。
一瞬で、数百年分の熟成。
まばゆい光が窓口を包み、周囲の冒険者たちが一斉にこちらを振り返った。
「何だあいつ!?」
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