第27話落ちぶれた元社長たちの懇願
世界を滅ぼすはずだった『深淵ダンジョン』の消滅から、数週間。
俺が買い取って新オーナーとなった『帝国システム開発』の、真新しい自社ビルのエントランス。
「佐藤社長! お願いです! どうか、どうか一瞬だけでもお話を……!」
警備員に両脇を抱えられ、床に涙を流しながら縋り付いている二人の男がいた。
かつて俺を奴隷のようにこき使い、自分の命を削らせていた元社長の根津と、チートの大河原だ。
今の彼らは、違法残業や横領の証拠を俺に警察へ提出され、会社をクビになっただけでなく、巨額の賠償金を背負って完全に自己破産していた。さらに、大河原は俺に3年分の寿命を奪われたせいで、実年齢より20歳も老け込んだヨボヨボの姿のままだ。
「佐藤社長……! 私が悪うございました! あなたを無能だと罵り、残業を押し付けたこと、心から反省しております! ですから、どうかその『時間を戻す力』で、私のこの老いた身体を元に戻してください! 賠償金も、一生かかってでも働いて返しますから……!」
大河原が、シワだらけの手を俺に向かって伸ばし、必死に床に頭を擦り付ける。
根津もまた、かつての傲慢な態度はどこへやら、高級スーツをボロボロの手で掴もうとしていた。
「そうだ、佐藤くん! 私も君に謝る! 君は我が社の、いや世界の英雄だ! 頼む、私をまた社長の座に戻してくれとは言わん! せめて、借金を帳消しにして、生活できるだけの金を……!」
エントランスにいた新しい社員や、打ち合わせに来ていた他の大企業の幹部たちが、冷ややかな目で二人を見下ろしている。
かつてはこの二人の怒鳴り声一つで、俺の胃はキリキリと痛み、夜も眠れないほど絶望していた。
だが、今の俺から見れば、彼らはただの「哀れなモブ」に過ぎなかった。
「おい、警備員。そいつらを早く外につまみ出せ。他のお客様の迷惑だ」
俺はポケットに手を突っ込んだまま、立ち止まることすらしない。
「佐藤社長! お願いだ! 助けてくれえええ!」
「誠くん! 誠くん!!」
背後で必死に俺の名前を叫ぶ二人の声が、エントランスの自動ドアが閉まると同時に、完全にシャットアウトされた。
復讐ですらない。今の俺にとって、こいつらはもう、怒りを感じる価値すらない存在だった。
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