第22話人類の英雄たちの敗北
新宿駅前。かつての繁華街は、崩壊したビルと、燃え盛る炎に包まれた地獄絵図と化していた。
上空の漆黒の渦から、見たこともない異形の魔物たちが次々と降臨し、街を脅かしている。
その最前線で、人類の「英雄」と呼ばれる世界ランク1位の冒険者、剣聖・アーサーが、大剣を構えて息を荒くしていた。彼の周囲には、世界各国から集まった最強のSランク冒険者たちが、血を流して倒れ伏している。
「ハァ、ハァ……ば、化け物め……! 我々の総攻撃が、かすり傷一つ、与えられないだと……!?」
アーサーの視線の先。
ビルよりも巨大な、漆黒の甲殻に包まれた深淵のラスボス『終焉の巨神』が、傲然と立ち尽くしていた。
その周囲には、不気味な黒いオーラが揺らめいている。Sランクの魔術師が放った核熱級の大魔法も、そのオーラに触れた瞬間に完全に霧散し、1ミリのダメージも与えられていなかった。
「キシャアアアアアアア!」
巨神が咆哮し、その巨大な腕を振り下ろす。
空間そのものが歪み、凄まじい衝撃波がアーサーたちを襲った。
「ぐわあああ!」
人類最強の剣聖が、防具を粉々に砕かれ、地面をごろごろと無残に転がっていく。
「これまでか……。人類の科学も、魔法も、この深淵の前にはただの無力な玩具に過ぎなかったというのか……」
アーサーは大剣を杖代わりに、なんとか立ち上がろうとするが、足が震えて動かない。
背後の避難シェルターでは、何万人もの市民が、生中継の映像を見ながら絶望の悲鳴を上げていた。
『嘘だろ……アーサーが負けた……』
『もうおしまいだ、誰もあの怪物を倒せない……』
巨神が、トドメを刺そうとゆっくりと足を上げる。その巨足が落ちれば、生存者たちは全員肉塊に変わる。
「おいおい、人類最強が聞いて呆れるな。随分と無様に転がってるじゃないか、剣聖さん」
戦場に、場違いなほど軽薄で、静かな声が響いた。
炎と硝煙の向こうから、ポケットに両手を突っ込み、高級なスーツを着こなした男が、散歩でもするかのように歩いて現れる。
俺だ。
「さ、佐藤誠……!? 来てくれたのか……! だがダメだ、引くんだ! あの怪物の防壁は異常だ! どんな攻撃も、触れることすらできずに消滅する! 人間が勝てる相手ではない!」
アーサーが、血を吐きながら必死に叫ぶ。
だが、俺は歩みを止めない。巨神の、ビルほどもある不気味な視線が、俺という小さな存在にロックオンされた。
「触れることすらできない、か。だったら、その防壁ごと、数万年先へ送ってやればいいだけだろ」
俺は巨神を見上げ、不敵に笑った。世界滅亡のカウントダウン。人類が絶望に泣き叫ぶこの場所こそ、俺のチート能力を世界に見せつける、最高のステージだった。
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