第16話海外からの刺客、上陸
岩崎財閥を味方につけてから数日後の深夜。
東京湾に面した、人気の途絶えた巨大なコンテナ埠頭。
月明かりすらない暗闇の中、突如として海面が不自然に波立ち、一隻の漆黒の潜水艇が姿を現した。
ハッチが音もなく開き、そこから音もなく飛び出してきたのは、奇妙な装備を身にまとった五人の男女だった。
彼らの身体の一部は、最先端のサイバーテクノロジーによって機械化されており、暗闇の中で人工の義眼が怪しく赤く明滅している。
「ターゲットの現在位置を確認。東京湾の埠頭に向かって、一人で歩いてきている。……罠か?」
電子合成されたような、冷酷な声。
彼らはアメリカの巨大軍事企業が極秘裏に組織した、対能力者用の特殊暗殺部隊『クロノス・ハンターズ』。
全員が全身をサイボーグ化され、さらに世界最先端の軍事科学で作られた「対魔導バリア」を搭載している、文字通りの人間兵器だ。
「罠だろうが関係ない。日本の総理大臣や大富豪を従え、時間を操るなどというバグ能力者、我が社の利益のためにここで処理、あるいは拿捕する」
リーダーの巨漢が、ガチリと右腕の超高出力プラズマカノンを起動させた。
「誰を処理するって?」
暗闇の奥から、ポケットに手を突っ込んだ男が、ゆっくりと歩いて現れた。
俺だ。岩崎財閥の情報網から、今夜海外からの「ネズミ」が上陸するという報告を受け、わざわざ出迎えてやったわけだ。
「佐藤誠。大人しく拘束に応じろ。拒絶するならば、この場で四肢を爆破して連れて行く」
サイボーグの女性隊員が、腰の超振動ブレードを抜き放ち、鋭い金属音を響かせる。
「海外の軍事企業か。日本のギルドの黒岩よりは、少しはマシな玩具を持ってきてるみたいだな」
俺は立ち止まり、ふっと笑った。
「玩具だと? ナメるなよ、イエロー・モンキーが! 我々のサイバーボディは、どんな魔法も、ステータス異常も完全に無効化するナノマシンで満たされている。お前の『触れたら終わり』のチートなど、我々の科学力の前には通用しない!」
巨漢のリーダーが咆哮し、地面を爆破するような速度で突進してきた。その速度は時速200キロを超えている。常人の目には、ただの残像にしか見えない。
「死ね!」
巨漢の機械化された拳が、俺の顔面に向けて放たれた。
空気が爆縮し、凄まじい衝撃波が巻き起こる。
だが、俺はやっぱり、一歩も動かなかった。
ただ、迫り来る鉄の拳に向かって、右手を静かに差し出しただけだ。
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