第14話総理大臣からの極秘要請
国会議事堂の最奥、一般人は立ち入ることすらできない「特別応接室」。
重厚なマホガニーのテーブルを挟んで、日本の最高権力者、総理大臣の宮治が座っていた。その周囲には、鋭い眼光を放つ若手の超エリート議員たちや、国家防衛のトップたちがずらりと並び、部屋には異様なプレッシャーが満ち満ちている。
だが、俺はそんな威圧感を鼻で笑い、案内された席にどっかりと腰掛けた。
「お忙しいところ、急な呼び出しに応じていただき感謝する、佐藤くん」
宮治総理は穏やかな笑みを浮かべているが、その目は笑っていない。俺の出方を慎重に窺っている。
「単刀直入に用件を言ってください、総理。俺も暇じゃないんだ」
俺が不遜な態度で言い放つと、隣にいたエリート議員の一人が激昂してテーブルを叩いた。
「貴様、総理の前だぞ! 弁えろ! いくらダンジョンで奇妙な能力を得たからと言って、国家の最高権力を前にしてその態度は――」
「静かにしろ、若輩者が」
俺はエリート議員を冷たい一瞥で黙らせた。
「国家の権力? そんなものが俺に通用すると思ってるのか? あんたたちの持ってる法律も軍隊も、俺がその気になれば、1秒で数百年分進めてサビつかせられるんだよ」
部屋の温度がストップしたように下がる。防衛トップの男が、思わず腰のホルスターに手を伸ばしかけたが、宮治総理がそれを鋭い手つきで制した。
「……そこまでにしてもらおう。佐藤くん、我々は君と敵対しに来たわけではない。むしろ、君のその規格外の『力』に、日本の、いや世界の命運を託したいのだ」
「命運?」
俺が眉をひそめると、総理は手元のリモコンを操作した。壁の大型スクリーンに、ある衛星画像が映し出される。
そこにあったのは、太平洋のド真ん中に、見たこともないほどの巨大な『漆黒の渦』が発生している光景だった。
「これは……ダンジョンか?」
「そうだ。ギルドの測定によれば、過去最凶の『災害級・深淵ダンジョン』。これが完全に開門すれば、そこから溢れ出る魔物によって、日本はおろか、世界が数週間で滅亡すると試算されている」
部屋の幹部たちの顔が、一斉に悲痛なものへと歪む。
「我が国の最高ランクの冒険者たちも、すでに絶望的な状況だ。最先端のミサイルも、あの渦の手前でかき消されてしまう。物理法則が通じない相手なのだ。……そこで、時間を操る君の力が必要なのだよ、佐藤くん」
宮治総理は、席から立ち上がり、なんと俺に向かって深く頭を下げた。国家のトップが、一人の一般人に頭を下げている。
「お願いだ、世界を、この国を救ってくれ。君が力を貸してくれるなら、国家の予算から、君の望むだけの富も、地位も、どんな特権も用意しよう」
周囲のエリート議員たちが、信じられないものを見る目で総理と俺を見つめている。
かつてブラック企業で使い捨てにされそうだった俺が、今や国家の命運を握り、総理大臣に土下座される立場にいる。
「富も地位も、もう自分で手に入れられるから要らないよ」
俺はゆっくりと立ち上がり、ニヤリと笑った。
「だけど、その世界を滅ぼすっていうラスボス、俺の『時間搾取』でどこまで耐えられるか、ちょっと興味があるな。いいだろう、その依頼、受けてやるよ」
世界滅亡の危機すらも、今の俺にとっては、ただの新しいチートの実験場に過ぎなかった。
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