第13話現代社会のルールが変わる日
シンの生配信、そしてギルド本部での黒岩の失脚。
あの夜を境に、世界は完全にひっくり返った。ネット上は、俺の持つ『時間を操る能力』の話題で一色になり、世界中のメディアが「物理法則を超越した人類」として俺の素性を暴こうと躍起になっていた。
だが、俺はそんな喧騒を余所に、自分が新オーナーとなった『帝国システム開発』の社長室で、のんびりと淹れたてのコーヒーを飲んでいた。
コンコン、とドアが控えめにノックされる。
「佐藤社長、本日のスケジュールですが……」
入ってきたのは、かつて俺を怒鳴り散らしていたチーフの大河原だ。
今の彼は、俺に3年分の寿命を吸い取られて50代のような見た目になり、完全に牙を抜かれた犬のようにおどおどとしていた。
「ああ、大河原。根津(元社長)と一緒にトイレの掃除は終わったのか?」
「は、はい! 隅々までピカピカに磨き上げました! 何か他に御用はございますでしょうか!」
大河原はペコペコと何度も頭を下げる。
「ならいい。今日の午後のアポイントは全部キャンセルにしてくれ。少し静かに過ごしたいんだ」
「かしこまりました! 失礼いたします!」
大河原が脱兎の如く部屋から出ていく。かつて自分を苦しめた人間たちが、今や自分の顔色を窺って這いつくばっている。スカッとする日常だが、これすらも今の俺にとっては、通過点に過ぎなかった。
俺はスマホの画面で、現在の世界情勢をチェックする。
アメリカ、中国、ヨーロッパ。世界各国の政府や、超巨大企業のトップたちが、こぞって俺の存在に危機感を募らせているらしい。『触れただけで兵器を無力化し、寿命を奪う男』。そんな存在を、国家が放置しておけるはずがないからだ。
「さて、次は何が来るかね……」
呟いた瞬間、社長室の固定電話がけたたましく鳴り響いた。
受話器を取ると、相手はギルドの新しい最高責任者からだった。その声は、これまで聞いたこともないほど緊張で震えている。
「さ、佐藤誠様でしょうか……! 突然の御連絡、大変失礼いたします!」
「なんだ? 黒岩の件なら、もう片付いただろう」
「いえ、違うのです! たった今、内閣官房から直々に、佐藤様への『特命要請』が入りました。……日本のトップ、総理大臣が、どうしてもあなたと直接お会いしたいと、国会議事堂の奥でお待ちになっておられます」
総理大臣。
国家の最高権力者が、ついに動き出したわけだ。
「総理が俺に何の用だ。まさか、黒岩みたいに国家の力で俺を拘束しようってわけじゃないよな?」
「滅相もございません! 国家元首たちは、あなたの力を『恐怖』しているのです。どうか、穏便にお話を聞いていただけないでしょうか……!」
受話器の向こうで、新しい支部長が必死に懇願してくる。
「いいだろう。国のトップがどんな顔をして俺に縋り付いてくるのか、ちょっと見てやるよ」
俺は上着を羽織り、社長室を出た。現代の法律も、国家の枠組みも、もはや俺を縛る鎖にはなり得ない。俺はただ、自分の気まぐれで、世界の中心へと歩みを進めるだけだった。
読んでいただきありがとうございます!
評価とブックマークをいただけると執筆の励みになります!
次回もお楽しみに!




