表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
からくりドッヂボール  作者: 水前寺鯉太郎
高校生編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

77/80

第77話:巨人の蹂躙、紅の処刑

 準々決勝。エクリプスが、己の全存在を懸けた死闘の末にベスト4を決めた、その直後。

 スタジアムの巨大モニターに映し出されたのは、もう一つの準決勝、タイタンズ(東京) vs 明星学院(東京)。それは、スポーツという名を借りた、一方的な「廃棄処理」の記録だった。

「……あいつら、一体何をする気だ。あれは、勝ちに来てる顔じゃねえ」

 丸山が、画面の中で冷徹に動くタイタンズを、震える指で睨みつける。

 明星学院は、星野光を中心とした精密射撃のエリート集団。だが、彼らの誇り高き「理論」は、タイタンズが放つ圧倒的な「暴力の正解」を前に、開始わずか数分で無惨に瓦解した。

 タイタンズの九条太陽が、神の如き不敵な笑みを浮かべて、鮮やかな**黄球イエローボール**を手に取る。

「……計算通りの静寂ノイズレスをプレゼントしよう。君たちの理論の不備を、その肉体で修正するといい」

 九条の放った黄球は、加速用スカイリングを敢えて歪ませて通過。予測不能な高周波を伴う軌道を描き、明星学院のエース・星野の足元で、鼓膜を劈く爆音とともに炸裂した。

 パァァァァンッ!!

「……っ、身体が……石になったみたいに動かない……!!」

【星野:10秒間の強制スタン発動 / 警告:全機能停止】

 からくりドッヂボール公式ルール、第6章。――『黄球によるスタン中の選手への攻撃は、有効打として認定される』。

 九条太陽はその「仕様」を、最も残酷、かつ最も合理的な形で利用した。彼がディスペンサーからゆっくりと引き抜いたのは、禍々しい紅蓮の光を放つ赤球レッドボール

「……九条、やめろ! 試合はもう決まったはずだ! 追撃の必要はない!」

 ベンチから、かつての同僚であった佐倉教諭の悲鳴が響く。だが、九条の冷徹な瞳に、一滴の慈悲も宿ってはいなかった。

「……退場パージの時間だ。システムに不要なバグは、粉砕するに限る」

 九条の放った赤球が、逃げ場のない星野の剥き出しの胸部へ、吸い込まれるように直撃する。

 ドォォォォォォンッ!!

 セラミック製のギアが砕け散る、骨身を削るような鈍い衝撃音がスタジアムを震撼させた。

 明星学院のエースは数メートル後方へと、糸の切れた人形のように吹き飛び、そのままピクリとも動かずにコートの中央に沈む。

【審判判定:明星学院・星野、重傷による戦闘不能(大破判定)。これ以上の継続は不可】

 静まり返る、凍りついたスタジアム。

 タイタンズはその後も、スタンさせた相手の無防備な四肢を、精密な赤球で狙い撃ちにするという「公開処刑」を繰り返し、明星学院の五人全員を、文字通りの再起不能へと追い込んだ。

【試合終了:タイタンズ 勝利(対戦相手全員が負傷による棄権)】

「……あいつら、人間じゃねえよ。ただの、心のない計算機だ」

 ゆなが、破れんばかりに握りしめた拳の震えを、特攻服の裾を強く掴むことで抑え込む。

「勝てばそれでいいのかよ……。あんな、相手の魂を壊すことが目的みたいなドッヂボールが、正義だってのかよ……!」

 智が、ログに刻まれた残酷な数式を見つめながら、絞り出すような声を漏らした。

「……あまりに効率的すぎる。黄球で回避率をゼロに収束させ、赤球で最大ダメージを確定させる。……九条は、ドッヂボールを『スポーツ』ではなく、単なる『廃棄物のプレス処理』だと思っているんだ」

 影の中から、黒瀬監督が静かに、だが熱を持った手でしょうたの肩を叩いた。

「……怖気づいたか、しょうた。あの圧倒的な『正解』の前に」

「……いいえ」

 しょうたは、ドバイの戦場以来、激しく、心地よく痺れ続けている左手を、強く、骨が鳴るほどに握りしめた。

「……あいつが、この世界から不純物ノイズを取り除きたいって言うなら……見せてやります。……どんなに叩いても、どんなに壊しても、絶対に取り除けない、消せない、僕たちの『生きた証』を」

 ウォッチが、かつてない激しさで震える。

 ジョスリーヌからの、一言だけの、血の滲むようなメッセージ。

【Venge-les(彼らの仇を討ちなさい)、Shota. ……あなたのノイズで、あの偽りの太陽を、永遠に蝕んで。】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ