↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/21

ようやく休めたおはなし


「んっ!」


 私の声に気づいて隣で水を飲んでいた小春がこちらを見る。

 何かの危険が迫っていると理解し、行動に移ろうとする。

 でもダメ……遅い、間に合わない。


 小春にぶつかる様に押し倒す。

 寸前まで小春の頭があった場所を、針が掠めて行く。

 数本の髪の毛が針に持っていかれたのか、パラパラと落ちてくる。


「綾姉っ?!」

「小春っ!敵よ、後に蜂」

 

 その一言で理解したのか、小太刀を構えて立ち上がり相手に対峙する。

 もう油断はしない。目の前の蜂を注視しながらも、他に仲間がいる可能性もあるので周辺に気を配る。

 

 蜂は懲りずに小春に針を飛ばしてくるが、先ほどの一発に比べたら狙いも甘い。そんな狙いで小春に当たるはずがない。

 おそらく理由は「怒り」だ。絶対殺せたと思った一撃を避けられて怒っているように見える。

 

 でもね……


 本当に怒っているのはこっちだからね


 蜂が針を射出した瞬間に合わせて小太刀を投げる。

 それは、私のことをまったく意識していなかった蜂の頭の中心に深く突き刺さった。

 蜂はそのまま地面に落ちて動かない。

 

「綾姉、ありがと」

「ううん、私がもっと周りを見てればよかったのに、ごめん」

「そんなことない。綾姉助けてくれた」 


 でも、気づくのが1秒でも遅かったらどうなったか、考えるだけでも怖くなる。

 目の前にいる小春の笑顔がもう見れなくなったかと思うと……

 

 パンッ!


 気持ちが沈みそうになったから、頬を叩いて気合を入れる。


 悩んでもしょうがない、まずは使える手札を増やそう。

 倒した蜂から魔石を取り出すために近づくと、死体の近くの地面が光り、箱が出現した。

 

 

「アイテムボックスね」


 通称ドロップアイテム。ダンジョン内でモンスターを倒した際に低確率で現れる箱で、中には武器やアイテム、スキルシードなどが入っている。

 多くの探索者がダンジョンに入る目的はこのアイテムボックスだ。

 小春がツンツンと突っついてくる。


「綾姉、開けたいっ!」

「いいわよ。念のために罠にだけ気をつけてね」

 

 今までアイテムボックスに罠があったという報告は聞いたこと無いが、念のために注意しておく。

 小春はオークのときと同様、アイテムボックスごと収納して中身だけ取り出した。手にはピンク色の液体が入ったガラス瓶が握られている。

 褒めて欲しそうな顔をしていたので、頭を撫でてあげると「えへへ」と恥ずかしそうに笑った。

 小春から渡されたビンを見る。この液体の色とビンの形はたしかポーションだったと思う。いざという時のために小春に収納しておいてもらった。

 


 小春が蜂の魔石を渡してくれたので食べる。小さかったので噛まずに無理やり飲み込んだ。

 ステータスを見ると『兵隊蜂の毒針』と言うスキルを手に入れたていた。


 それにしてもあの針って毒針だったんだ……。


 発動してみると指先に針が現れた。指から生えたわけではなく、大きな針が指先に覆い被さっているみたいだ。凶悪なと○が○コーンみたい。

 指先を近くの木に向けて心の中で引き金を引くと、指先から針が射出されて木に突き刺さった。

 これで遠距離攻撃の手段が手に入った。しかも、毒なら直撃しなくても掠っただけで致命傷にできる。


「綾姉、準備できたよ」


 十分休憩して、小春が水や謎の果実を『無限収納』に入れ終わったので湖を後にする。

 

 周囲を警戒しながら歩いていると、さきほどの蜂が近づいてきた。

 小春に注意を促して、接近される前に『兵隊蜂の毒針』スキルで攻撃してみる。

 蜂はこっちと違って針を飛ばす前に一瞬停止するので、そこを狙い撃てばあっさり倒すことができた。

 その後も移動中にオークや蜂と何度か戦闘になったが、こちらの被害は殆ど無く倒すことができ、レベルも4に上がった。

 さらに、ドロップアイテムでポーションを2本と槍を一本手に入れたので、小春に収納しておいてもらった。

 私は召喚したオーク刀と毒針で何とかできるけど、小春の小太刀はもうそろそろダメになりそうなので、私の小太刀も一緒に渡しておく。


 そうして歩いていると目の前に壁が現れた。つまり、このダンジョンの一番外側の境界。


「綾姉、壁がある」


 ダンジョンといっても無限に広がっているわけではなく、森や草原などのフィールド型のダンジョンは、一番端にある壁のどこかに階層を行き来する階段がある。


「だから、後はこの壁沿いに歩いていけば、上の階か下の階に行く階段が見つかるはずよ」

「おおっ」

「ちなみに階段の中には、モンスターが入ってこれない安全地帯もあるからゆっくり休めるわよ」

「綾姉、早く行こうっ」

「ここで焦って油断したら今度こそ怪我するわよ。慎重に行きましょう」


 2人で壁沿いを進む。

 森の中と違って、壁側からはモンスターに襲われることは無いが、逆にモンスターの集団に襲われた時に逃げることもできない。

 ある程度の距離を保ち、互いに見えない位置をカバーしながら、注意深く歩いていく。

 途中で出会ったモンスターは、移動の邪魔になりそうならできるだけ素早く倒していく。その際、小春の小太刀の1振りが折れてしまったが、それ以外は特に問題も無く、私達は目的の階段を発見した。 

 

「良かった……上り階段ね」

「うん」


 それなりに長い階段を上がっていくと、折り返し地点にある踊り場の周囲が薄く発行していた。

 「安全地帯」と呼ばれいているダンジョンの階段内にあるモンスターが侵入できないエリアだ。

 有名なダンジョンだと中に人の手で椅子や机、簡易ベッドなどが用意してあるが、ここには何も無かった。


 けど、そんなことは関係無しに、私はエリア内に入ると同時に床に倒れこんだ。

 横を見る。

 同じく床に寝ている小春と目が合う。

 どちらからでもなく、私達は泣き出し、そして笑い出した。


 ダンジョンは下に降りれば降りるほど、強力なモンスターが出てくる。逆に言えば上の階層に行けば、モンスターは弱くなる。


 レベルも上がって、この階でオークや蜂相手に戦えている私達なら、上の階層も問題なく進めるはず。

 絶対ではないが、一番の難所は越えたと思っていいだろう。

 

 私は家族や友人の顔を思い出す。


 みんなのところに帰るという決意、ここまで来れた自信、そして何より隣にいる小春の存在が私に勇気をくれる。


「小春」

「なに?」

「絶対帰るわよ」

「……うんっ!」




ステータス


西風田綾乃

種族 :【人間】

レベル:【 4】

スキル:【魔石喰い】

    『豚鬼の召喚剣』

    『兵隊蜂の毒針』


東雲小春

種族 :【人間】

レベル:【 4】

スキル:【無限収納】



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。