初めての実戦のおはなし
「『魔石喰い』ってなに?」
「モンスターから取れる魔石ってあるでしょ。あれを食べると、そのモンスターの持っていたスキルを使えるようになるみたい」
「すごいっ!見たいっ!」
小春に手に入れたスキル『魔石喰い』の効果を説明すると、予想以上の反応で驚いてくれた。
互いに背中合わせで話しているから、声だけしか聞こえないが容易に今の顔が想像できる。
「それじゃあ、次は小春ね」
「ん。『ステータス』」
小春がステータスとスキルを確認している間に、私は周りを再確認する。
気配を探ってみると、かなり離れた場所に2~3匹の何かがいた。
出現したばかりのダンジョンにこんなに早く探索者が入ってくるはずは無いから、おそらくモンスターだと思う。
こちらには気づいていない様なので、見失わないように動きに注意しておく。
後ろの小春に小さな動きがあった。
「小春、どうしたの?」
「……無限収納」
「えっ?」
「私のスキル『無限収納』だって」
やっぱり小春も私と同じでスキルを手に入れていたみたいだ。
でも、『無限収納』と言う名のスキルは聞いたことが無い。
現在判明しているスキルとその効果は、インターネットや書籍で調べることができる。私も探索者を目指していたのでそれらに目を通していたけど、『魔石喰い』も『無限収納』も初耳だ。
似ている名前のスキルは『空間収納』があるけど……。
それの上位互換かな『無限』って付いているほうが凄そうだし。
「聞いたこと無いわね。『空間収納』みたいなスキルなの?」
考えてもしょうがないので小春に聞いてみる。
本当に『空間収納』系のスキルなら、後々面倒なことになりかねない。
ダンジョンで手に入るモンスターの素材やドロップアイテムは想像以上に重くてかさばる。欲を出して大量に持ち帰ろうとした結果、荷物が邪魔になりモンスターにやられてしまう探索者も少なくない。
そのため、魔法でできた空間に多くのアイテムを入れて重量を気にせずに持ち帰ることができる『空間収納』スキルや、同じ効果のアイテムの『魔法の袋』は、全ての探索者にとって喉から手が出るほど欲しいものになっている。
「うん。でも、もっと凄い。倍以上入るし、中の時間が止まる」
小春もチートだった……
私の『魔石喰い』もそうだけど、良くないところに知られたら悪用されかねない。無事に帰還できたら、一度小春のおじさんに相談してみよう。
ん?
考えていたら、先ほどの気配がこちらに移動を始めた。
まだこっちには気づいていないけど、時間の問題だ。
ここがダンジョンの何階なのかが分からない以上、下手に仕掛けるのは危ない。
上層の弱いモンスターなら対処できるけど、下層の強いモンスターなら間違いなく殺される。
「小春、私が逃げてって言ったら、全力で逃げるよ」
「わかった」
いつでも逃げれるようにしながら、モンスターの影を注視する。
鉈のような武器を持った人型の影が3体歩いてくる。途中で光に当たると緑色の肌と、豚のような顔があらわになった。
「オークね」
こんな特徴のモンスターは一匹しかいない。
おじいちゃん達に聞いた限りでは、オークはオーガに比べるとぜんぜん弱いらしい。
たしかに、ヤマトに比べると隙だらけで、武器も振り回すためだけに持っている感じだ。
オークは嗅覚が優れているから、あまり近づかれると気づかれるし、ここは先手必勝で行こう。
冠を被ったり、鎧を着ている上位種が近くにいて、仲間を呼ばれたりすると厄介だ。
「小春、私が右のを倒すから、左のをお願い」
「任せて」
近づいてきていたオークが足を止めて鼻を鳴らしている。
どうやら匂いで気づかれたみたいだ。
――でも、遅かったね。
小春とタイミングを合わせて同時に片方の小太刀を投げる。
それは、匂いを嗅ぐことに集中していた右のオークの片目に深く突き刺さり、叫び声を上げさせた。
いきなりの奇襲に訳も分からず混乱している隙に、右のオークを仕留めにかかる。
後ろに回り込み、そのままの勢いを乗せて首を断ち切る。体が硬く、途中で小太刀が止まってしまったが、間違いなく頸椎は切断できているので殺せたはずだ。
「っ! おっと!」
殺気を感じたので一歩下がると、私がいた場所を刃が通り抜けて行った。
真ん中にいたオークがすごい形相で鉈を振り回し襲い掛かってくる。いきなり仲間が殺されて怒り心頭のようだ。
当たれば怪我じゃすまないけど、こんな大振りの攻撃は当たらない。
でも、反撃も難しい。私の小太刀は二振りともさっきのオークに刺さっている。
隙を見て回収しようかと思ったが……
「その必要は無くなったわね」
オークの動きが止まる。
大きく開いた口から小春の小太刀の刃が飛び出していた。
「綾姉。終わったよ」
「ありがとう小春。助かったわ」




