VSクララ会長
あてなは運動場のゴミ箱の裏に隠れていた。隣には相沢夏先輩がいる。
「くそ!奴らなかなかやるな。まさかさくらがやられるとは。」
あてな達三人は運動場裏側を陣地にしていたが開始直後にさくら部長があてなをかばい敵のスナイパーに撃たれてリタイアしてしまった。
「さくら部長!私のせいで」
「おい新人。」
夏先輩はあてなを呼び止めた。夏先輩は茶色のウルフショートのおしゃれな髪をサッとかきあげながら呟く。
「一つだけ言っておく。戦場では振り返るな!さくらの犠牲を無駄にするな!」
「はい!夏先輩すみません」
あてなは頭をブンブンと横に振る。(そうだ。後悔してる場合じゃない!勝つんだ。)
あてなはゴミ捨て場の裏から顔を出す。
「ウヒ。出てきましたね」
ホログラム弾がゴミ捨て場の裏に当たる。どうやら体育館のあたりから飛んできた様だ。
「ナイスあてな!」
夏先輩はナイフを手にするとフウッと息を吐いた。
「あてなのハンドガン、オレのサバイバルナイフ。正直言ってかなり厳しいな。近距離じゃないと役に立たない上にどっちも単独戦向きってわけだ。」
夏先輩は何をしようとしてる?
「敵は体育館の上だ。チッ上手いぜ。オレ達の武器種ならサクラだけ潰せば遠距離からの危険はないってわけだからな。しかも今回は時間内に何人生き残っていられるかがポイントだ。向こうからすれば四対二。このまま時間が過ぎるのを待つだけ。見晴らしのいい場所で待ち構えつつ、数人で狙撃者を援護すればいい……。」
相沢夏は一言。
「あてな。オレは突撃する。最低二人は仕留める。そうすればメイがやってきて二対二。時間内まで生き残って今回は引き分けにできる。だから生き残ってくれ!」
あてなは夏先輩を止めようとする。(夏先輩!一人でナイフだけで戦うなんて!私も行く!)
だが夏先輩はあてなを振り返ると一言だけ言った。
「じゃあなー生き残れよー新人くん」
行ってしまう夏先輩。ゴミ捨て場の裏から茂みを伝って体育館に乗り込むつもりなんだ。生き残れって言ってだけど……夏先輩が突撃した事をなるべく敵に見つからない様にしなきゃ!
メイちゃん……どこに行ったの?この戦いに負けたら……
やだよ。こんなに楽しいのに
デンサバできないなんて。あてなの手が震えかける。
◇
クララチームの陣地は体育館の裏にあった。全身迷彩服で固めた男は隣にいる、女神をプリントしたシャツを着る男に話しかけた。
「こちら『札束』。『クラララブ』さん?敵の動きはあります?」
「いやーないっすよ。次郎さんのスナイパーがある限り我らの勝利っすね」
札束と呼ばれた男は体育館を見上げた。屋上にいる次郎丸を護衛しつつ敵の動きを探る。これが任務だ。だがそれより大切な事が存在する。それはこの戦いの後四人のうち誰が女神から褒めてもらえるか……
「クララ親衛隊第三条忘れてないっすよね?」
クラララブと呼ばれる男に話しかけられる。
(危ない危ない親衛隊の大切な条約を忘れるところだった。)
「第三条ぅ!女神を愛するもの同士、抜け駆けはなし!」
二人で詠唱する。よっしゃ!親衛隊の力見せてやる!改めて拳に力を入れた。青春だなあ。なんだか体育祭を思い出す。(そういえばお腹痛めて欠席したんだっけ。いかんいかん、漫画とキヲクが混じってしまった。)
「ちょいカリスマさんのとこ見に行ってくるっす。」
前方には『暗黒時代のカリスマの野郎』が守っている。この勝負もらったぜ。札束は荒い息を押さえながらアサルトライフル『クロ15』を構えた。
その時だった。前方を見に行ったクラララブさんの悲鳴が聞こえた!
「女神様ァァ」
それは女神への愛に散った男の悲しい、悲しい断末魔だった。
◇
相沢夏は敵の一人に狙いを定めた。重装備のマシンガンを構えた歩兵だ。体育館の入り口を固めている。屋上にいるスナイパーを守る役割だ。
最低二人……。やるならやつだな。スナイパー単体では戦場では役に立たない。だからまずは護衛二人を道連れに。だけど……結構厳しいかもな。夏は息を吐く。スナイパーを守る護衛が一人見えているがあいつを倒すにはスナイパーが邪魔。夏は学校のフェンス外周を周りながら体育館に近づくが,ここからは敵に見つかるリスクを取らなければ近づけない。
(くそ!動けないなんて。こんな時、舞先輩なら……。いやなんであの人の事思い出すんだよ!落ち着くんだ。何かあるはずだ。)
十分ほどの静寂が過ぎていった。規定の一時間までは後30分ほどしかない。
「いっけぇ」
遥か後方で声が聞こえた。あれはあてな?夏が振り返るとゴミ箱裏から顔を出したあてながハンドガンで応戦している。(あいつ?何やってんだ。ハンドガンじゃ体育館まで届いてないし。)
「グフっ見つけましたでしゅ」
あてなに向かってスナイパーが弾丸を発射する。ゴミ箱に隠れるあてなが見える。ギリギリでかわしては顔を出すのを繰り返す。
「こっちこっち!」
相沢夏は直感した。そうか!スナイパーの注意が逸れている。
あてな!夏はナイフを構える。
「やるじゃねえか。」
茂みから顔を出して一直線に体育館に向かう。敵の護衛の一人に向かい風のように疾走していく。スナイパーの弾丸は飛んでこない。
◇
自動販売機の裏に隠れているメイ。
「さあさあ出てくるデースねー」
ガトリングガンの圧倒的な火力が自販機の扉にぶつかる。
もちろん実態があるわけではないので自販機自体を吹き飛ばしたりはしないが、このままでは出られない。(あてな!みんな……)
「真雪を無視するなです!」
自販機の逆側、メイのいる方向に真雪が飛び込む。
「因果流忍術『寒天刺し』」
空中で一回転しながら、ポケットに装填されたクナイを取り出しメイに向かって投げつけた。
「くっ」
メイはクナイに狙いを定めハンドガンを構える。撃ち落とせなかった幾つかのクナイを交わしながら自販機から抜ける。
「来たデース」
今度は道に出てリリーのガトリングの雨を潜り抜けていくメイ。
「属性付与!『雷神愚斬』デース」
リリーを閃光が包み込んでいく。属性付与……。高校生でも扱うのが簡単ではない……。相当な使い手。咄嗟にメイは判断して壁に向かって軽く飛び蹴りをしそのまま、壁伝いに走りながらジャンプした。空中で雷を交わしながらリリーに照準を合わせる。
◇
どうやら夏先輩が敵を一人倒したみたいだ。これで三対二。いけるかもしれない。あてなはもう少し外の様子を見ようと顔を出してみる。スナイパーの弾丸は飛んでこなかった。
夏先輩は体育館の裏にいるのか見えない。
◇
相沢夏は駆け抜ける。一人倒した際に、もう一人の敵に見つかってしまった。そいつはさくらと同じサブマシンを装備している。敵との距離は約12メートルくらいだった。敵は慌てたように弾丸を発射してきた。ホログラム弾が何発か体に当たる。夏のライフゲージが半分を切った。
「さて覚悟決めっかな」
夏は敵目掛けて跳躍した。俊敏な獣が獲物を狙うような素早い動きで敵を狙う。サブマシンガンの弾幕がますます厚くなる。
(夏,獲物を仕留める際は迷っちゃダメ)舞先輩……。夏の体にはすでに戦闘不能ギリギリのライフしか残っていない。あと一発もらえばアウトだ。夏の目が弾丸を捉えた。かわせない……。夏は覚悟を決めて思いっきりサバイバルナイフを右手から放つ。力任せに投げつけたナイフは真っ直ぐ敵に向かい、その胸を貫くのと夏に最後の弾丸が当たるのははほぼ同時だった。
二対二……。悪いなあてな。背負わせちまって。メイ。早く来てやってくれよ。夏はライフゲージがゼロになり倒した敵と同時に倒れ込んだ。




