堕天高校
「マナの導きを感じますね。」
呟いた少女は、薄紫色の髪を靡かせながらそう言った。綺麗に整った顔立ちは実際の年齢より大人びた印象を与える。
「ミス魔月川、また変なこといってどうしたと言うのデスカ。」
ピンク色の長髪に青いリボンで結んでいる少女は魔月川と呼ばれた少女を睨みつけながらそう言った。
「堕天のリーダーである瑠衣さんに対して『変なこと』などとは許せません。」
更にもう一人の少女が片言を喋るピンク髪の少女を遮る。
「ミス因果またあなたデスカ。大体ダテンのリーダーはワターシなのデス。この一年にしてダテン選抜チームに選ばれたことのある桜庭リリーを置いて他に誰がいるのデスカ」
最後に現れた因果と呼ばれた藍色のショートボブが似合う女の子は、桜庭リリーと名乗る少女に対してホログラムナイフを向けた。
「訂正して下さい。あなたがいくら下級生から活躍しようが今のリーダーは魔月川瑠衣です」
「何をイウデース。三年であるワタシが……」
「年功序列ならあなたの一年生の時の自慢だって」
「桜庭リリーは特別デース」
その時だった。今まで口を結んでいた魔月川瑠衣が一言。
「真雪、リリー、やめてください……怒りますよ」
あまりに寒気がする空気にリリーも真雪も黙り込む。
「久しぶりに感じるのです。紫耀メイ。あなたのマナを」
プレハブ小屋の正面。フェンスで囲まれた運動場では,約三十人ほどの部員達が兎跳びをしているのがみえる。皆足腰を極限まで痛めつけられ中には肩で息をしている部員もいる。
「水……」
「誰が水飲んでいいなんていったんや?」
「すみません。萌火先輩」
萌火と呼ばれる赤髪の少女は不敵に笑いながら蹴りを入れた。
「最近の若いやつは根性足りへんわ。そう思わへんか?因果、リリー?」
突然振られた因果こと因果真雪は振り返ることもなく答える。
「萌火先輩は壊しすぎです。とはいえ……」
リリーと目が合う。
「堕天に弱いやつはイラナイデース」
三十人から選ばれた選抜レギュラーの四天王。瑠衣はこの圧倒的なメンバーを一年生にして束ねるリーダーとなっていた。堕天は夢ヶ丘地区だけでなく全国優勝を狙える戦力で、集められたメンバーは全国屈指の精鋭だ。
瑠衣は三人の少女を見つめながらふと空を見上げる。
(メイちゃん……中学生以来ですね。あなたはこのデンサバで何を見出したのですか?)
◇
週初めの月曜日。授業後にあてなは運動場に向かっていた。いよいよ今日が決戦の日だ。明星あてなが運動場に着くと既にさくら部長と夏先輩、そして蒲生会長が睨み合っていた。一方メイちゃんはまだ来ていなかった。
(メイちゃんまだ来てない)
「ちょっと!メイ様が来てないなんてどう言うことよ!」
蒲生会長がさくら部長に詰め寄っている。
「くらげこそなんだよ。変な奴ら連れてきてよー」
夏先輩が睨みつけると会長は一瞬後ろに下がったみたいだった。しかしすぐに夏先輩を睨みつける。
「こいつらは私の僕よ!」
「グフフ……わたくしクララ姫防衛隊最強の戦士。職業デンサバ趣味デンサバのクララ姫の王子こと『次郎丸』でしゅしゅ」
さくら部長や,夏先輩の前に現れたのはチェック色の服を着たいでたちのお兄さんだった。
「うげ……」
余りの迫力に蒲生会長も思わず後退りした。あてなはポカンとしていた。(えーとどうしよう)
試合は次郎丸さん、札束さん、暗黒時代のカリスマさん、クラララブさんの四人対あてな達デンサバ部だ。だけど……こっちはメイちゃんがまだ来てない。
「約束の時間だわ。来なくても始めるわよ!」
蒲生クララが高らかに宣言する。
「そんな……四対三なんて」
さくら部長も言い返そうとするが会長チームの人達が難しい事を言ってさくら部長は押され気味みたい。
「むふふ。約束は約束でしゅよ。電脳サバイバルではルールは絶対。」
「俺たちが怖くて逃げたんじゃないか?」
あてなはそれには反論する。
「そんな事ない!メイちゃんはくるよ!」
あてなは力強くそう言った。
◇
アテナ達がグラウンドに集まる数分ほど前の事だ。紫耀メイは授業後に近くのコンビニに来ていた。お茶を買うために並んでいると同じ学校の生徒たちがたくさんいるのが見える。その中に何人か見慣れない制服の生徒もいた。今日はいよいよデンサバ部の初陣だ(そろそろ行かなくちゃ)メイはお茶とおにぎりを買うとコンビニの運動場に出て学校に向かう。
コンビニから学校までは歩いて五分ほどの距離になる。
メイが道路を横切り学校の正門に向かおうとした時だった。
正門に向かう道を塞ぐように誰かが立っている。怪しい人物は二人組のようだった。二人ともこの学校ではない制服を着ていた。
メイは無視して通り過ぎようとする。
「紫耀メイさんですね」
突然呼び止められて足を止めるメイ。
「なんなの」
悪いが急いでいる。メイはなるべく関わりたくないと言った様な口調で答える。
「ガチャ……」
何かが回転する音が響く。
「ふふふ!ユーが紫耀メイ!ミーは堕天のエース桜庭リリーよ。今すぐワタシのガトリングの餌食になるデスね」
片言で喋るその少女は胸を突き出して自信満々に声を上げる。
巨乳どころではない爆乳と言うしかない凶器がそこにあった。
メイは自分の胸を見てしまう。
「私急いでるから」
一旦後ろに回ろうとしたところ背後にももう一人少女がいた。
「私は真雪。因果真雪……。紫耀メイさん。あなたと勝負させてもらいます。」
もう一人の少女も同じ制服を着ていた。デバイスを操作するとクナイの様な武器がその手に現れる。メイはふと真雪の胸を見てしまう。小さい……
「今!バカにしましたね!真雪の事絶対バカにしました!」
真雪の顔が真っ赤になって怒っているのが分かる。
真雪がクナイを投げつけると同時にリリーの凶悪なガトリングガンが火を吹き始める!
自販機の裏に隠れるメイ。
(やるしかないわね。早く終わらせなきゃ)




