いけるかも
(行けるんじゃないか?)(堕天がまさか負ける?)さくらの体に入り込んでくる熱い高揚感。身体中の血液が沸騰してるみたいな今までとは違う感覚だ。
「行くわよ。」
さくらはサブマシンを二人に向けて乱射する。
「きゃっ」
逃げ遅れた茶髪の子、確かレミアとか言う名前の堕天の選手にマシンガンの弾が突き刺さる。
「ふざっこんなの!」
左手でガードしているけど、さくらの弾に力がこもっているのか押し負けているように見える。
「何やってんのよ!麗姫!はやく援護して」
「はっはい」
もう一人の女の子が黒い日傘を向けた。
日傘から青白いレーザー状の光線がさくらに向かうが、さくらは軽く避ける。
「ふう。」
体が軽いし、相手の照準がズレてる。メイが四天王を倒した事で、観客の見方が変わって、それがアストラルシステムを通してだっけ。やっぱり思った通りね。試合が落ち着く前に速攻しなきゃ。
「行くわね。『桜バレット』」
桜色の弾丸は地面に触れると爆発して、派手なエフェクトを撒き散らす。
(私でこれなら……あの子なら。)
さくらが乱射した弾丸の爆発に巻き込まれて、地面からは砂埃が上がっていた。
その中に二つのシルエットが浮かぶ。
「やってくれたわね。雑魚高校のくせに」
「ここで負けたら推薦取れなくなっちゃう」
木でできた杖を向けるレミアと傘を広げる麗姫。その体力ゲージは、初手の攻撃により、一割ほどけずれていた。
◇
弾丸の雨が降る。あてなの手を引きながら夏は瓦礫の中を逃げ惑っていた。
「どこに逃げても無駄デスね。ハラキリデース」
桜庭リリー。堕天高校三年で選抜チームの一人。なんて圧力だ。圧倒的な実力を感じる。
「夏先輩!」
あてなの叫びが聞こえる中突撃する。
リリーの弾丸は高速で更に破壊力もある。一度距離を放したら、弾丸の雨が待っている。
「あてな!隠れてろ。」
リリーは夏を視認するとピンク色の髪を振り乱して笑う。
「かかりましたね!ハレルヤっ成敗デス」
夏は軽くジャンプする。宙に浮いた夏の脳裏には長い黒髪の記憶が蘇って……。
「いい、夏。相手が重装備なら遠距離はだめね。」
懐に飛び込む。夏が飛び込むと記憶の中の舞は夏に銃を向けた。
「甘いわ。飛び込みながら円を描くように回り込むの。」
夏は、着地すると右回りに、ダッシュしながら、桜庭リリーの足にナイフを向け小さく切り込む。
「痛いデス!やりましたね。」
リリーはバランスを崩しながら倒れそうになる。
夏は懐に飛び込んだ。リリーの首元に向かってナイフを突きつける。
「これでどうだ!」
ナイフが首元に当たる瞬間から夏は浮遊感に包まれている。
体が軽い。それは、理想的な動きを可能にするが、最後の最後で力が入らない。
(なんでだ。緊張してる?)
(夏迷ったらダメ)
ひと突きでいい!
夏が繰り出したナイフはリリーの首筋を僅かに逸れ地面に突き刺さった様に見えた。
「死んだかと思ったデス」
強烈な痛みが腹にきた。ブーツで蹴り上げられた。
「ぐっ」
腹の中に鉛が埋め込まれたみたいに痛い。宙に浮いた夏に向かってガトリングの軌道音が聞こえる。
向こうから誰かが走ってきてる?あれはあてな?
リリーはまだ気づいていない。
「だめ!」
あてなが叫ぶとリリーはギョッとした様な顔をしながら急いで標的を変える。やばい。リリーの斜線上に、あてながいる。その距離は10メートル。あてなのエキドナは走りながら的外れな場所に球を飛ばしている。ガシャッ。ガトリングのシリンダーが回転して物凄い爆音と共に火花が散った。
火力の化け物。今まで見たことのない程のエネルギーが発射されている。手を伸ばしても届かない。
あてなが立っていた場所にオレンジ色の火花が舞い上がる。
(これは……。)
(先輩……。私は大丈夫)
オレンジ色をした火花が左右に弾け飛ぶ。
その真ん中に青白い炎のような見たこともないエネルギーを身にまとったあてながいた。
「なんでなのデス?私のミニガンに耐えられるはずないデスよ。」
桜庭リリーが焦っている?
地面に叩きつけられた夏が見たのは、ガトリングガンのビーム状のエネルギーをまともに受けながら立っているあてな。
「はあはあ」
あてなの息遣いが聞こえる。なんだ?なにが起こってる?
(夏!なにしてるの!)
さくら?さくらの感情がアストラル気流を通じて伝わる。
(私もあと少ししか持たないかも。頼んだわよ。)
前半は後五分。夏は、ナイフを握りしめる。
「これならどうデスか!サムライ魂デース『雷電黄龍』〈ライデン〉」
オレンジ色のガトリング弾からビリビリと電流が走る。どんどん強くなる電流!夏の髪が逆立つ。
今だ。仕留めるんだ。夏が這いつくばりながらリリーに近づく。やつは背後に気づかない。
「はあはあ!夏……先輩。今……撃ちます」
あてなはエキドナを構える。いくつもの雷があてなに直撃するが青白い膜で覆われたあてなには届かない。
「いっけえ」
エキドナの中心に青白いエネルギーが点火する。あてなを包む膜の色が薄くなる。
「きゃああ」
そうか。攻撃に転じたらあのエネルギーの鎧が弱まる。あてなは気づいていない?やばい。
「あてな……攻撃しちゃ……ダメ」
くそ。言葉が出てこない。
あてなのエキドナに光の球が現れる。
体が熱い?これは……アストラル気流?
(まさかリリーのミニガンが効かないなんて)
(堕天が負けるぞっ)
(がんばれ)
あてなの鎧が回復してる?それに、リリーのミニガンの威力もだいぶ弱まっている。
夏は足を引き摺りながら立ち上がる。
ナイフを持って足に力を入れる。痛い。
激痛が走る。ふざけんな。後輩が頑張ってんだ。
さくらのライフゲージが残りわずかになっている
夏はそのまま足を引きずってリリーの背後につく。
「行きます!」
あてなの銃身にエネルギーが溜まるのが見えた。リリーはミニガンの照射を止めると背後を振り向き逃げようとする。夏はバランスを崩しながらリリーの右足目掛けて、飛び込んだ。
「足が痺れるデス!ええい!邪魔デスね。」
リリーの左足が夏の顔を踏みつける。夏の顔が苦痛に歪む。それでもリリーを睨むとリリーの顔は真っ青に震えていた。
「あ、あ、ありえないわ!」
そして青白い閃光がリリーを包み彼女の姿が消えた。
その声を聞いた時前半終了の合図が鳴った。
◇
前半の休憩時間にあてなはさくら部長の横に座る。ぼろぼろのビルの跡地にキャンプが現れる。
さくら部長によると簡単なテントでもちろんホログラム。ハーフタイム専用みたい。
夏先輩が通りかかりあてなに質問する。
「なあさっきのなんだ?あてな大丈夫か?」
あてなは首を傾げる。
「多分だけど、アストラルシステムの感応現象だと思う。」
「感応現象?」
「スタジアムの熱気や,空気によって力が変化することがあるとかね」
さくら部長が言うと,メイちゃんも何か言おうとしてる。
「更にパワー・シンクロニシティも起こってるんじゃない?」
「?」
あてなはまたもや首を傾げた。夏先輩が冷たいタオルをかけてくれる。
「デンサバはね。時に対戦相手や周りの力に引っ張られて実力以上に力が出ることがあるのよ。まああてなはもともと力がある上に,メイちゃんや夏とずっと試合してたわけだし。」
さくら部長がスポーツドリンクを渡しながら説明してくれた。さくらの花びらみたいないい匂いがする。
えっそうなんだ。すごい。強い相手とやればやるほど強くなるってこと?
「だからって油断すんなよな。あてなの力は制御できてないみたいだから防御専用って感じだ。」
そっか。あてなは拳を握る。(これが私の力なんだ。みんなを守りたい。)
「でも……」
さくら部長は少し遠くを見る。
「実際私にもよくわからなくて。もし気分悪くなったら言うのよ。」
そう言って頭を撫でてくれる。
あれメイちゃんがじーっとこちらを見てる。
その時、キャンプ場にアナウンスが流れる。
「さあ、まさかの前半戦!堕天高校は二人をロストするという大事件です!選手交代の情報が入りました。矢見レミアに変わり魔月川瑠衣、真白麗姫に変わり、八木萌火選手に交代です!」
いよいよだ。意識の中にさまざまな人たちの感覚が入り込んできた。体が熱い。
「さあ後半戦のスタートです!」
あてなはエキドナを構えて、廃墟のキャンプを振り向く。キャンプはすでに消えていて、そこには真っ赤な髪をした女の子が倒れたビルに寄りかかっていた。バンドみたいな毛皮のコートを着たその子は、真っ赤なポニーテールを揺らす。
「さくら部長!敵」
あてなが叫ぶがメイちゃんやさくらが見ていたのは、空に浮かんだ真っ白なお城だった。
「あれ何っ。じゃないです。後ろっ」
「まあまあ焦るなや。ちびっ子。すぐに片付けてやるから」
体がオレンジ色に光り出すと、周りの空気がグラグラ揺れる。
熱い。これは?ビルの鉄骨がだんだん赤く染まり、そこから黒い煙とゆらゆらが溢れてきた。
「おりゃ」
蹴りが入った。そのオレンジ色に燃え出した女の子に対して夏先輩の顔面蹴りが決まった。その子はビルの鉄骨の剥き出しになったところに飛ばされていった。
「あてな!こいつは俺がやる!お前はさくら達の援護だ!」
「そんなっ夏先輩、さっきのバトルで。」
「いいからいけ!」
燃え盛る鉄骨の中から少女が現れるのを確認するとあてなはさくら達の援護に向かう。




