お嬢様の冒険
夢北のデンサバセンター。繁華街の中にある特設施設の中で蒲生クララは銃を握っていた。
「初めてコース」を横目で流しつつ「上級コース」を選択。
ガイドに従って銃の登録を自前デバイスに入力する。(デンサバなんて大っ嫌い)かつての記憶が蘇る。クララは練習用ハンドガン『バロック』を手に表示させようとした。アストラル認識率をデバイスデータから上げようとするとガイド音声が止めにかかる。
「何よ。子供用だって馬鹿にして」
アストラル認識率を、低くした簡易版デンサバは主に、子供用の遊びとして使用されている。
そういえば前に子供達がアストラル空間から戻れなくなる事件とかやってたっけ。
クララは認識率を標準まで上げようとする。
手が震えてる。なによ。新しいことにチャレンジする時ってなんだかとても怖い。
えい!クララは認識率を年齢標準まで引き上げた。
目の前がスローになった。つい最近の出来事が頭の中に再現される。あれは?メイ様?エリザベス?だんだん記憶が過去に遡る。パパ? 真っ赤な空と緑の大地を爬虫類が歩いていた。そして、海……。水の泡の音。
目が覚めた。クララはデンサバセンターで練習用ハンドガン『バロック』を片手に射撃場に立っていた。
狙いを定めて撃つ。上手く繋がらない。上級コースの的は全く当たらない。それどころか弾が発射されたのかすら分からない。
「ふふふ」
射撃場の外でこちらを見ていた何人かが指を刺して笑っていた。
「初心者のお嬢様が上級コースかよ」そんな声が聞こえてくる。
見てなさい!ヲタクども。クララは力を込める。弾丸はまたしても発射されなかった。
「何だよ。あの子。可愛い顔してるけど初心者じゃん。」
「お前教えてやれよ。」
何やら騒いでいる。クララが射撃場から出ると、目を伏せる。
あーもう。もう一度射撃場の外にある機械にデバイスを近づける。クレジットの取引の音が響いた。
「違うでしゅ!」
なかなか話しかけて来ない見物人の中から一際太ったヲタクが話しかけてきた。
「そんなんじゃないでしゅ。もっとアストラルを見るでしゅ」
「うげっうるさい!」
クララはそのまま無視して射撃場の中でうろうろしていた。
的は細かく動き回り、銃からは弾丸は発射されない。(説明書には書いてあるのに!やっぱつまらない!)でも……
メイとエリザベスと喜ぶデンサバ部。あの時の戦い。クララ軍もデンサバ部もみんな楽しそうだった。これじゃあ何の為に、生徒会がアームズ杯出場を認めたのかわからないじゃない。
いつしか観客は消えていた。何回目かのチャレンジをしようとそのまま射撃場に入る。さっきのヲタクは美少女柄がプリントされたTシャツを射撃場のガラスに目いっぱい近づけて何やら叫んでいる。勘弁してよ……。
相変わらず弾が出ない。ヲタクはガラスに顔をくっつくながら叫ぶ。
「念じるでしゅ!イメージするでしゅ」
そう言っていた。クララはしょうがなくイメージをする。ええとヲタクの顔じゃなくて、メイ様!メイ様のしなやかな腕がクララの小さな手を取って導く。そのまま、意識を鎮める。
メイ様に抱き抱えられたまま銃を的に向ける。今!勢いよく念じた瞬間、的に向かってハンドガン『バロック』は弾を発射した。
「よっしゃー!」
勢いよくガッツポーズし、窓越しにヲタクとハイタッチしてしまう自分に気がついてクララは小さく咳払いした。
「なっ何見てんのよっ!」




