緊張の初戦
大会開始前の抽選会から一週間が経過した。さくら達は、部室から、歩きで会場に向かっていた。
「急いで!あと少しで始まっちゃう。」
「まったく何で歩きなんだよ。普通バスくらい学校が用意するだろ。」
「仕方ないのよ。殆ど休部してたんだから。大会の受付だって生徒会が協力してくれなかったら危なかったし。」
会場は、夢見ヶ丘市民センターだ。ここから勝ち上がるにつれて、より本格的なステージで勝負できる。
大会が始まる。夏のアームズ杯第一回戦の相手は、川登高校に決まっていた。天城院さくらは、会場に着くと気合いを入れ直す。
「いい。相手は、そこまで強いわけじゃないけど、夏の初戦は別物だから。一回戦勝てば、次は恐らく、夢西、そして三回戦で羅刹館対堕天の勝者と当たるわね。」
さくらの口ぶりにみんなも真剣な表情だ。
あてなやメイは一年生。ここは、自分や夏が引っ張らなきゃ。
夏の太陽が照りつける中会場に向かうさくら達デンサバ部。
「みんな!公式戦では衣装も決められるみたい。どれを設定するか選んで」
「さくら部長はやっぱこれだな。」
夏がさくらの分のセッティングをしてしまった。
「ちょっと変なのはやめてよ」
「私は普通の」
メイは黒いスーツを選択した。
「じゃあ私はこれ!なんか可愛い」
あてなはうさぎのコスプレ。胸元まで開いたバニーコスだ。
あてな……それ恥ずかしいやつよ。
「じゃあこれにします」
結局あてなが選んだのは、白の羽の生えた天使のコスチュームだった……。腰のあたりを白いレースが覆い背中から天使の翼が顔を出していた。
「あてな……相変わらずね」
メイがため息をついた。
そしてさくらは自分の姿を見てため息をつく。ピンク色のエプロンが肩から掛かっていた。
「やっぱさくらはエプロンだろ」
「似合います!さくら部長」
「ええ……」
メイだけが顔を引き攣らせていたが、褒められると悪い気はしない。
「よし。電華高校デンサバ部!泣いても笑っても最後の夏よ。後悔したくない!絶対勝ちましょ」
さくらの掛け声と共に円陣が組まれた。
「電華高校!サバイブ!」
いよいよ大会が始まる。
◇
天城院さくらは、対戦相手をチラリと見る。動きはあまり洗練されている感じではない。
「それでは整列してください」
アナウンスの声に従って整列した。さくらの横に夏、そしてメイ、あてなへと続く。
「よろしくお願いします!」
電脳サバイバル大会『アームズ杯』第一回戦が始まった。
市民センターは、ホログラムで作り替えられた空間へと変化している。そこは、廃墟のような空間だった。倒れたビル街に三人の姿を確認する。
あてな、メイ、夏に向かって合図をしながら呼び寄せる。
「いい、公式戦は、前後半の三十分ずつ。ハーフタイムに交代が許されてるけど、うちは四人だから交代はなし!」
「それでは……前半スタート」
アナウンスの声が響いた。
「とりあえず移動しましょ」
さくらは手に持った練習用サブマシンを構えながら先行する。メイが辺りをスナイパーで狙いながら、夏はメイの護衛に着く。
廃墟街の中を歩き回る。さくらが路地の角を曲がった時だった。いきなり銃撃が始まった。
咄嗟に瓦礫に隠れるさくら。だが大通りからの銃撃でさくらは分断されてしまった。
敵は大通りに陣を張り四人で瓦礫のバリケードを作ってそこから銃撃していた。
さくらは敵の銃撃が瓦礫から逸れているのを見逃さない。
(射撃の腕は余り良くないわね。)
手で合図をする。
メイがすかさずライフルを構えた。
「そこ」
メイが引き金を引くと早速敵のライフがゼロになった。
やた!さくらは小さくガッツポーズする。最後の夏初戦。
まずはリード!
夏が突撃した。敵は、ライフルを警戒して、突っ込んでくる夏に気がつかない。あてなが壁から身を乗り出していた。
「あてな待って」
さくらは手で合図する。
あてなを静止すると、瓦礫から飛び出してマシンガンを取り出した。
サブマシンガンを構えて。マナを集中させる。
「『桜花乱舞さくら式!』」
陽動兼牽制。乱射したマシンガンが敵の瓦礫を吹き飛ばしてダメージを与えていく。思ったよりも体のキレがいい。今日の朝は何も食べられなかったほど緊張してたのに。
敵陣に切り込んだ夏が一人を見据えた。
「おりゃー『斬撃のJ』」
夏が思いっきり振りかぶると恐ろしいほどの踏み込みを見せる。夏が敵を切り裂いた。
「しゃっー」
夏が雄叫びを上げた。
さくらの銃弾が敵を仕留めていく。最後の一人が闇雲に乱射した銃弾が天使の羽を貫いて……。あてなが倒れた。あてな!あてなは壁から出たところに流れ弾が当たって倒れてしまっていた。




