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デンサバ!  作者: 豚まん
第四章
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始まる。夏!

 夢の中であてなは、城塞の上に立っていた。(ここは?)

 鉄で出来た大砲や、投石器が置かれている。やだ。思い出したくないのに。

 昔、読んだお伽話に出てくるようなお城だ。城のバルコニーからは,緑色をした海があたり一面に広がっていて。空は燃えるみたいな夕焼けがあてなを照り尽くす。

「そう。わたしは力を求めてる」

 お城から見える、空の中にあてなが浮いていた。違う。あてなは自分だ。もう一人のあてなだった。彼女は,バルコニーにいるあてなから見て真正面、緑色の海の上に浮遊していた。

 夕映の中を何かが飛んでいる。

 あれは?恐竜?小さな頃に、いとなちゃんから見せてもらった図鑑に載ってた。確か翼竜とか言うやつだ。

 もう一人のあてなはニヤリと笑う。(何する気?)

 大砲から弾が発射された。音はあまりしなくて、「ボヨン」と水中で濁った音がしただけだった。

 弾は翼竜の腹部に着弾した。

 鉄で出来た嘴が割れて中からネジが飛び出してきた。翼竜はオイルを垂れ流しながら緑色の海に沈んでいく。

「ふふ。力ってすごいよね。何でも出来ちゃう。あてな、欲しいでしょ」

 息が詰まる。こんなの欲しくなんかないよ。

「いらないよ!こんなのわたしじゃない!」

 もう一人は,口角を引き上げる。

「私ってわがままなんだよ。そして誰も信頼できない……」

(違うよ!わたしは,やっとみんなと一緒に戦うのが嬉しいだけ。)

「じゃあこの城は何?わたしでありおまえの願望そのもの。」

 大きなお城だ。あの力があれば……。違うよ。

「素直になりなよ。あてな。あなたは,必ず私を求める。」

 背を向けた。こんなのダメだよ。何だかうすらざむい。それが間違っている事をあてなは直感した。

 あてなは夢の内容を思い出す。

 このドアを開けたら部室だ。

 両手でパチンと、頬を叩くと勢いよくドアを開けた。

 ◇

 その日の部室にて、あてなは緊張の表情をしていた。隣にはメイちゃん、夏先輩がスマホの画面に釘付けになっている。

 スマホには,アームズ杯の組み合わせ抽選会の様子が映っていた。

「さくら部長!頑張ってください」

 スマホの中のさくら部長は硬い表情をしている。

 あてなは昨日の夢を忘れようと笑顔を作って笑おうとした。

「あてな大丈夫?」

 隣にいたメイちゃんに肩を叩かれた。

 あてなは深呼吸する。大丈夫。

「うん!大丈夫だよ」

 スマホを覗き込むと、中にいるさくら部長は,硬い表情のまま電華高校のプラカードを握りしめている。

 ◇

 天城院さくらは緊張していた。

 大会の組み合わせ抽選会が始まって十分ほどたっている。まだ電華高校は呼ばれていない。

 隣には羅刹館三好原、堕天魔月川瑠衣と錚々たる面々。せめてしっかりしなきゃ

「それでは堕天高校、くじを引いてください」

 アナウンスと共に、魔月川瑠衣が鋭い眼光を光らせる。緊張が強くなる。

「3番!何と堕天は羅刹館と同じAブロックに!」

 その瞬間地響きのような歓声が上がる。次だ。Aブロック以外……

 さくらは震える手でくじを引いた。ここで一生分の運を使ってもいい。少しでもみんなといたい。

 さくらが引いたのは,Aと書かれたくじで,会場は,前の話題で持ちきりだった。やっちゃった。

 ◇

「はーい私、まちぱんの『みんなのデンサバ』始まりますよ!何とですね、今回は優勝候補『堕天高校』に来ております!。過去大会で三度の全国優勝、二度の準優勝を誇る名門です!ではキャプテンの魔月川さん,チーム紹介お願いします!」

 電華高校の食堂テレビにあてな達は集まっていた。隣のメイちゃんは食い入るようにテレビに見入っている。

「はい。私が堕天高校のキャプテン魔月川瑠衣です。」

 テレビの中の人物の声が聞こえる。瑠衣師匠だ。師匠……いつもより声が小さいような。

「瑠衣さん。落ち着いて」

「せやで、リラックスせえや。」

 隣の二人はチャチャを入れると瑠衣師匠はキリッとした顔で睨む。

「さっさすがですね!迫力あります。魔月川キャプテン!さてさて聞くところによると、魔月川キャプテンは、アイドルが大好きだとか!噂はほんとなんですか?キャプテン」

 瑠衣師匠は、氷のような顔をして隣の女の子を睨みつけた。

「誤解ですよ。アイドルの皆さんのパフォーマンスは、デンサバにも活かせると思って、研究していたところなのです。」

「あれま、うちが見たハートポーズも、何らかのパフォーマンスちゅうわけかいな。さっすがやな」

 瑠衣師匠の顔に青い筋が見えた。師匠、かっわいいなあ。隣のメイちゃんが心配そうに見つめている。

「あなた達,テレビで私が手を出せないと思って、普段の仕返しですか!あとで覚えて」

「ということで堕天高校から中継でした!最後に一言ください、瑠衣キャプテン」

 瑠衣師匠は、すうっと息をはく。冷たい空気に一瞬で、周りが凍りついたように見えた。

「私には勝ちたい人がいます。憧れて来た人がいます。今回の夏が、私と彼女の因縁の終着点になるでしょう。全てを賭けて夏をとります。」

 テレビが切り替わり、隣のメイちゃんはテレビから目を逸らさずに見つめていた。


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