合宿後半
お風呂気持ちいい~~」
旅館のお風呂って最高。あてなはあれから状況を説明し、いつものようにさくら部長が呆れ夏先輩が乗って来た。
「すいません。先輩。私、部活の事馬鹿にされてついムキになって」
メイちゃんが謝る。
「まあ仕方ないわよね。」
「とりあえず風呂でも入りながら考えようぜ」
夏先輩とさくら部長は顔を見合わせながら笑っている。
夏先輩の一言でデンサバ部は旅館の大浴場に来ている。
あれメイちゃんは?メイちゃんはタオルで体を隠して隣で体を洗っていた。相変わらず引き締まっていてスタイルいいなあ。
「メイちゃーん」
メイちゃんは自分の胸を何度か擦ったりしてマッサージをしているみたい。それから何故かこっちを見てくるメイちゃん。
「アテナのくせに……」
え?メイちゃんがこっちを見てジト目をしながら呟く。メイちゃーん。なんで怒ってるの?
「やめろよ。部長」
夏先輩が叫んでいた。
「だめよ。まだ浸かってないのに出ようとするなんて」
「いいじゃねーか。俺は水が嫌いなんだよ」
なおも逃げようとする夏先輩を捕まえようとするさくら部長。
最後は全員で風呂に大風呂に入る。
「よっしゃ!早く試合したいぜ」
「待ちなさい、夏。全員十数えるまででちゃだめよ。」
あてなとメイは顔を見合わせて笑う。
◇
旅館の休憩スペースにあてな達は腰掛けていた。三好原さんに呼ばれたのは確かここのはず。
場所をメイちゃんから聞いたあてなは早速下見に来ていた。
すごい。思わず息を飲む。今の時代なら休憩室や、娯楽室にデンサバ用のステージがあるのは聞いていた。だけどここにあるのは今まで見たことないくらい大きな特性ステージだ。
「早いわね。あてな」
「あっさくら部長にみんなも」
メイちゃんは腕のデバイスをステージに登録していた。
「あてなもやらないと出れないわよ」
登録?ステージに登録ってどうやればいいの?
「ここのボタンを押して念を画面の印に集中するの」
デンサバ用スタジアムは一区画がドームみたいになっている。その隣に自動販売機の様な機械が聳え立っていた。
あてなは早速自販機に近づいて、ボタンを押すが、目の前の画面が切り替わらない。
「部長、念じるってどうやるんですか」
「うーん。どう説明すれば……そう、いつもみたいにそこに撃つつもりで。」
今度は、あてなは集中して、自販機の画面のバツ印に頭の中で標準を合わせる。
「登録完了」
その機械音と共に、また体の中を風が吹き抜けていく不思議な感じがする。
これは瑠衣師匠に教えてもらった時と同じ感覚だ。
あてなはふと自販機の画面に映る自分の顔が気になった。
そこには一瞬だけ、違う自分がいる様な気がして……。
「三好原里香様の到着!ってなんで先に来てんのよ。ムカつくわね。」
三好原さん達が休憩スペースに入ってきた。
「それじゃあ早速始めようかしら」
三好原さんもデバイスをかざす。
「あてな、たしかステージを使ったデンサバは初めてじゃない?」
「はい。さくら部長。でも今までのとステージでの戦いって何が違うんですか?」
「違うわ。何もかも。ステージを使ったデンサバは主に公式戦で使われていて、夏のアームズ杯もこっち。仮想ホログラムでまるで現実みたいな風景が再現されるから、だから壁にあたれば穴が開くし、ビルも倒れてくる。瓦礫に当たってライフが消えたりとか、銃弾だけホログラムの非公式戦とは別ものだから気をつけて。」
メイちゃんが説明してくれるけどちょっと長くて分かりにくい。メイちゃんは少し得意げに見えて可愛い。
「ちょっと早くしてよね。」
三好原さんの声に対して夏先輩や、さくら部長が相手の方に向き直り部長達三年生と三好原さん、そして肌の白い可愛い女の子の二チームが向き合う形になった。
◇
学校の景色が見える。あてなはあたりを見渡してみた。見たことない学校。ここは?どうやら場所は校庭みたい。
さくら部長やメイちゃんもいた。
「みんな気をつけて始まったわ」
さくら部長はそう言って武器を実体化させる。アレは、サブマシンガンだっけ。たしか練習用の部室にあったやつ。
メイちゃんも武器を出した。映像じゃなくて初めて見た。青いホログラム製の長いスナイパーライフル。メイちゃんが中学時代使ってたやつだ。
あてなはみんなのいる場所に駆けつける。
「気をつけろ。どこからくるかわからねえぞ。」
夏先輩が見上げる先には校舎が立っていた。あてなは校舎の上を見上げた。誰がいる?
「先輩!校舎の上」
夏先輩はナイフを構える。さくら部長もマシンガンを、メイちゃんはライフルを、あてなも構えた。
「ふっふっふ。さあ見せてやりなさい。エレナ。『あれ』を」
アレは三好原さん。真っ赤なツインテールが風に揺れている。
「はい」
エレナと呼ばれている女の子が静かに答える。
「新生羅刹館が誇る新入生、エレナ・ティーグヴィナ・ズメイノワの必殺技行くわよ!」
三好原さんが真っ赤なマントを翻しながら校舎の上から叫び続ける。
「何かしてくるぞ。」
夏先輩が注意を呼びかけた時だった。
「着弾地点確認!」
三好原さんの声が響く。指をこちらに向けて隣にいるエレナちゃんに何か指示している
「はい」
「放心冷却!」
「はい」
「エネルギー充電!」
「よし」
「ふっふっ!羅刹館最強の破壊力『ツングースカ砲』の威力,存分に見せつけてやりなさい!いでよ!大艦巨砲主義の威力に跪け!」
ビルから何かが落ちてきた。
あてなは確認したのは真っ白な肌の女の子。エレナと名乗る女の子が背の倍以上もある,巨大な斧?の様なものを空中から叩きつけた瞬間だった。
爆風。あてなは痛みを感じる。熱い。なんで?ホログラムなのに!校舎が地響きを立てて崩れていく。デバイスで確認しなきゃ。既に味方の3つのライフがゼロになっていた。
さくら部長や,夏先輩が倒れているのが見える。けれどあてなも動けない。既にライフはゼロになってしまっていた。
◇
「……初めて。」
その女はそう呟いた。
「初めて私の技の範囲を見抜いた奴は……」
その目は真っ直ぐ紫耀メイを見つめてきた。メイは確信していた。「当たらない」と。
あのケルベロスを手にした際に戦った、もう一人の自分との戦い。あの時もそうだった。何故か分かる。当たらないと直感した場所へ導かれる様に移動した。その結果爆破範囲を避けることができた。
メイは爆心地に目を移す。さくら部長や,夏が倒れている。
そしてその横にはあてな!あてなが倒れていた。
「う……」
多分痛みを感じているかもしれない。精巧なホログラムは、あまりにもリアルな体験として、アストラル界を通じ魂に擬似的なダメージを再現してしまう事がある……だったかしら。前に雑誌で読んだ情報を思い出す。
(ファントム・ペイン)メイはつぶやく。でもライフがゼロならもうアストラル界との繋がりが切れてるから痛みは入らないはず。
「エレナ!『ツングースカ砲』の再装填は?」
「……十分」
三好原……。メイは倒れている仲間を見る。青いホログラム製のスナイパーライフルの輝きが更に激しくなる。
「いいわ。待ってあげる。」
「は?」
「万全の状態で撃ちなさい。砕いてやる」
三好原の顔に笑みが戻った。
「ふふふっバカね!消し飛ぶのはあんたよ!もう一度大艦巨砲主義の威力見せつけてあげる!」
三好原が叫ぶと,エレナが斧を構える。斧が白く光り輝いていく。冷たい冷気みたい。
「砲身冷却!」
「はい」
「エネルギー充電!」
「はい」
三好原の掛け声にエレナが答える
「いでよ!羅刹館最強の大技『ツングースカ砲』受けてみやがれ」
その声に答えるようにエレナが動く。ゆったりとした動作から自分よりも大きな斧を遠心力を利用して一回転させてから、こちらに向ける。
寒気がしてくる。あの斧からは冷気を感じる。冷気の属性エネルギーを帯びているんだ。メイは直感した。
エレナが走る。真っ白に凍てついた赤黒い斧を背中に振り回してメイに向かってきた。
当たったらただじゃ済まないわね。でも……。なぜだろう。
相手の動きがやけに遅い。まるでスローモーションみたい。
エレナの血に飢えた斧の振り回す一瞬,止まった時間の中で確実に光るポイントが見える。
ケルベロスが叫んでいる。
「そこ」
引き金を引く。宿主を失った冷気が辺りに充満する。真っ白な霧のヴェールがメイを包んだ。
その霧の中に、エレナが倒れている。勝った。
「エレナ!大丈夫?」
三好原は倒れたエレナに駆け寄る
「よくも!くらえ『万能ニ丁拳銃』」
銃を軽くいなして引き金を引く。
その瞬間メイのデバイスに電華高校デンサバ部の勝利が浮かぶ。
「メイちゃん」
あてなの声が聞こえてメイは振り返る。




