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デンサバ!  作者: 豚まん
第二章
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猫騒動

「たっだいまー」

「あーおかえりお姉ちゃん」

 あてなが自宅のドアを開くと妹の明星いとながゲームをしながら振り返らずに答える。

「デンサバ!デンサバ!いとなちゃん!デンサバ部ついに作っちゃった!」

「来たよデンサバお化け。てかちゃん付けしないでよ。子供じゃないし」

 いとなはゲームボタンをポチポチしていたのを一旦やめて面倒そうに振り返える。あてなの妹である明星いとなは現在中学一年生になったばかりだ。

「へー大丈夫なの?お姉ちゃん例の『熱中症』じゃないの?」

 いとなが笑ってあくびをした。

 いとなが言う熱中症というのは以前からあらゆる物に興味を持ってはすぐに冷めてしまいがちな、熱しやすく冷めやすいあてなの性格をいとなが茶化してそう読んでいるのだ。

「違うって!今度は本気!ま・じ!」

「はいはーい」

 妹の反応にもめげずにあてなは二階にある自室に向かおうとする。その前にふと窓ガラスに自分の顔が反射しているのに気づいた。

「あれ?」

 あてなは首を傾げる。何かおかしい様な、輪郭が歪んでいる気がしたのだった。しかしそれは一瞬の出来事で……もう一度目を凝らしてみるといつもの自分の顔に戻っていた。

「お姉ちゃん?どしたの?」

「ううん、なんでもない」

 あてなはそう言って自室へと繋がる階段を上がっていった。

 ◇

 紫耀メイはベッドの上に寝転がっていた。隣にある熊のぬいぐるみを優しく抱きしめながら頭を抱える。

 (デンサバ好き?)(うん!)あてなの返答を思い出してしまう。

 メイは制服のままため息をついた。

(絶対プロになりたい!)

(私デンサバ大好きだから)

 口癖の様にそう言っていた同じ黒髪で長身の少女の姿が浮かぶ。

「お姉ちゃん……」

 高校卒業後、家を出た姉のアリサは現在は大学には行かず独立リーグからプロを目指していると聞いた。幼い頃、姉妹揃ってデンサバをやっていた頃を思い出してしまう。メイは抱きしめていた力を強める。(高校で補欠だったお姉ちゃんがプロになんてなれるはず無いのに……)

 メイの目に先程とは違う少女の姿が現れた。

(瑠衣!やる気ないなら帰って!)

(ごめんなさいメイちゃん)

 小さな体で目いっぱいメイについてこようとするその子に対しメイは強く当たる。(瑠衣ちゃんごめんなさい。)

(私がしっかりしなきゃ)

 いつの間にか勝たなきゃいけない重圧を他人に押し付けてしまっていた。そんな自分が嫌でメイはデンサバから逃げたのだ。

「パ……お父さん……お姉ちゃん」

 熊のぬいぐるみに両手両足を強く絡ませた。ぬいぐるみはメイの涙で濡れてしまっていた。

 少し気分転換しなきゃ。メイはそう思いつくと制服からジャージに着替え夢ヶ丘の商店街まで歩いてみようと思いつく。

 ◇

 あてなはぼんやりしながら最近起こった出来事について思い出していた。初の部活。初のバトル。そして初めての勝利!

 受かれ気分のあてながニヤついていると突然いとなが部屋に入ってきた。

「いとなちゃんどうしたの?」

「おっねえーちゃん」

 口元を膨らませるいとな。この時のいとなはだいたい何か不満がある時の顔だ。

「私のアイス食べたでしょ」

「えー食べてないよ」

 いとなは怪しむ様にあてなの部屋を凝視する。

「あそこに捨ててあるカップそうだもん。あれ限定発売だったのに!」

 あてなは慌てて思い出そうとした。そう言えば最近食べた様な食べてない様な?

「お・ね・え・ちゃん」

 いとなの顔に漫画でしか見たことない青筋が入っている。

「わーごめん代わりに買ってくるから許してー」

 あてなは慌ててドアを開けたまま飛び出した。

 夢ヶ丘の商店街へと向かうあてなはいつもの通学路に行き着いた。ここらは普段人通りがあまりなく住宅地の塀がずっと並んでいる。するとそこに見慣れた人物がいるのを見つけた。

 その人物は通学路を右に曲がる。そっちは確か側溝があるだけだったはず?

「夏先輩?どうしたんですか?」

 突然声をかけられた相沢夏はビクッとした動作をした後不意に誤魔化す様に

「いやっなんでもないぜ」

 と言う。あてなはなんとなく夏が嘘をついていると直感した。

「むむ……怪しいです夏先輩」

「いや~~怪しくないない」

 その時急に茶色の物体が塀を飛び越えて夏とあてなの間に着地した。

「あっ見つけたぜ。にゃーすけ。あてな捕まえてくれ」

「えっ?」

 気づいた時にはにゃーすけこと茶色の猫はあてなの膝をすり抜け通学路の方に行ってしまう。

「見つかっちまったらしょうがねえな。」

 相沢夏から聞いた話はこうだ。

 ◇

 数日前の雨の日の事だった。相沢夏は傘を差しながら通学路から外れた裏道を歩いていた。

 通学路。決められた道。夏はそんな言葉になんとなく反発したくなる。人生は未知数だから楽しい。それはデンサバでも同じで……。だからこそミラクルと呼ばれる試合に人々は熱狂するのだ。

 雨が少し強くなり夏の肩に横殴りの雨が突き刺さる。

「うわ」

 夏は水も苦手なのだ。運動神経が良いから昔から泳ぎも得意だと思われがちだが、夏はそもそも水に濡れるという行為自体を好きになれない。

「あーもう!天気最悪じゃねーか」

 通学路から外れた小道は補装状態も良くないため、歩きにくい。

 そんな裏道を抜けたところに一つの段ボールが落ちているのを見つけた。

(なんだろ)

 何気なく近づくと小さな声が聞こえてきた。 

「ミャー」

 と言うか細い声を聞いた夏は段ボールを開いた。

 見つけたのは小さな子猫だった。茶色の体色をしている猫は夏を見上げると無邪気な瞳で見つめてきた。夏は自分が濡れるのも構わずに猫に傘を差しながら抱き抱えていた。

 ◇

「というわけなんだ」

 その後夏の補足でその猫はにゃーすけと名前をつけて極秘に世話をしているとのことだった。

「うち動物買えないんだよな。あてなのうちは?」

「私もいきなりは」

「確かにな。とりあえず学校の裏庭に隠してるんだけどいつ見つかるか。」

「心配……ですね。」

 あてなは思わずつぶやいた。

 その時あてなの後ろから猫の鳴き声が聞こえた。

「にゃーすけ!こっちくるんだ。そろそろ帰る時間だぞ」

 猫は夏の方を一目見ると「フン」と済ました顔をしたみたいに思えた。

「あーにゃーすけのやつ馬鹿にしやがって!」

 夏先輩意外と子供っぽいところあるんですね。あてなはそう思ったけれど黙っていた。

 にゃーすけは小道をどんどん進んでいく。猫を追いかけるなんて無防すぎる。相手は民家だろうがお構いなしであてな達はその度に遠回りというわけだ。

「にゃー」

「このやろー」

 夏先輩早すぎだよ。あてなは息が上がってきた。にゃーすけの後を動物の様な身のこなしで駆け抜けていく。

「へへ捕まえた。」

 そう言って笑った夏先輩。あてなは疑問に思ったことを聞く。

「その子の家が見つかるまでどうしよう。」

「んーとりあえず学校いきながら考えっか」

 ◇

「だめよ!部室でかうなんて」

 電華高校にある部室棟。

 さくら部長と夏先輩が怖い雰囲気になっていた。あてなは子猫のにゃーすけを抱きしめながら夏先輩を信じる。

「だって裏庭は最近運動部の奴らがうろうろしてるしここしかないだろ」

「だからって……」

 夏の剣幕に押され気味のさくらがあてなの方を見た時だ。

 それまで動かずにいたにゃーすけが走り出しさくらの胸の中に飛び込んだ。

「ふわふわ……可愛い」

「だろ?」

「でも……だめよ。バレたらまた廃部よ」

「さくらぶちょう~~その子をよく見てくださいーお願いです」

 あてなは必死で伝える。(確かに廃部は嫌だけど。こんなに可愛いにゃーすけを捨てるなんてやだ)

 しばらく時間が止まる。さくらに抱かれたにゃーすけは祈る様な目でさくらを見つめていた。

「分かったわ。でも引き取りてが見つかるまでね。」

「部長~~」

 さくら部長に抱きつくあてな。

「今回だけだからね」

「さくらは押しに弱いからな」夏はそう言って笑うがとても楽しそうだった。よかった。あてなも笑顔になる。メイちゃんにも見せてあげなきゃ。

「にゃーすけはミルクが好きなんだよな」

 その言葉にあてなはあることを思い出した。(いとなちゃんのアイス!)


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