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貧乏貴族から成りあがれ! ~独り身イズミの転生譚~  作者: あんぜ


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第15話 神殿の特待生

 エスラ先生は、私が落ち着いたのをみて、授業に戻っていた。


 授業が終わると私の周りに同級生たちが集まってきた。


「どかーん!……って、オレびっくりしたぞ」

「先生たちも驚いてたよ、すごいね」

「お名前、なんていうの?」


「あ、あの……」


 いっぺんに話しかけられて困っていた。すると――


「すごいだろ! アンリエット君は、他の小魔法(キャントリップ)もこんな感じで規格外だったんだぞ!」


 アフマズルさんがそう言った。すると、周りの子たちも目を輝かせる。


「あれ? アンリは文句を言ってなかったか?」

「そうだよ。神殿の特待生だから、平民の試験をしないといけないって」


 平民?――誰かが呟いた。


「平民なの? あなた」

「……はい、そうです」


 子爵の……お父さまの娘と名乗れないことが歯がゆかった。

 答えた途端、周りのみんなは急に興味を失ったように、あるいはよそよそしく、私から離れていった。


「すまない、アンリエット君。そんなつもりじゃなかったんだ。オレは君のことを評価してる」

「……いえ、私は何も。ありがとうございます」


 だけど、その話はそれだけで収まらなかった。



 ◇◇◇◇◇



 午前中の授業を終えた私は、昼食をひとりで取った。混雑する食堂で同級生から離れて、ひとりぼっちで。

 だけど、私と同じようにひとりぼっちの女の子がもうひとり居た。


 ただ、よく見るとその子――ベルチカさんは、背筋を伸ばし、他のどの子よりもずっと貴族らしく食事していた。落ち込んでいる私と違って、毅然としていた。なんとなく、すごいなって思った。


 午後の授業は地母神様の秘儀の授業だった。女子寮の地階、料理をしている場所とは別のところに、窓のない広い地下室(ダンジョン)があった。そこでは、女子寮で如何に清潔を保つことが大切か、そして清潔を保つ方法を教わった。地母神様の秘儀は、お母さまから教わった事だけだったので、すこし恥ずかしい話もあったけれど、ちゃんと聞いていた。



 その日の授業が終わると、同級生の女の子たちはそれぞれに集まりを作ってお話したり、どこかへ出かけて行った。そんななかでひとりだった私は一旦、寮へ帰る。


 寮へ帰った私は、教わったことを見直していた。黒板に書かれた先生の文字を、木皮紙に書き写すのは楽しかった。木皮紙とインクをこんなに自由に使えるのは国のおかげだと説明された。少し前までは、神殿の学び舎のように書字盤や木板だったみたい。


 時間を忘れたくて、ずっと読んでた。


 バタン――勢いよく部屋の戸が開いた。


「アンリエット! あなた、文官の子じゃなかったの!?」


 アノリさんが声を大きくして詰め寄ってきた。


「……はい、亡くなった父は文官ではありませんでした」

「よくも騙してくれたわね! あたし、てっきり王都住みの文官の子かと思ってたのに!」


「私はなにも……だって、どうして文官の子なんて」

「荷物を運び込んできた寮の侍女に聞いたのよ。文官に荷物を頼まれたって。あなたも否定しなかったでしょ!?」


 私は自分の出自を言いたくなかった。お母さまに平民だと偽るように言われていたのもあったけれど、平民だと自分から言うのも恥ずかしかったのかもしれない。


「ごめんなさい……」


 いたたまれなくなった私は、部屋を出た。そして、誰も居ない場所を探し、そこで泣いた。



 ◇◇◇◇◇



 バサバサバサッ!――鳥の羽ばたきで目が覚めた。辺りは真っ暗。


(ああ、そうだ。私、人の居ない場所を探して……でも、ここは……)


 暗く、天井が斜めになった部屋。埃っぽくて、窓がふたつ。窓の外からは暗い部屋に月明かりが差し込んでいた。月は膨らみかけた三日月だった。


 立ち上がって窓へ近づく。斜めの天井から突き出た出窓には、格子に玻璃(ガラス)が嵌っていた。王都では珍しくない透明の玻璃(ガラス)


 私はその出窓のある小さな空間によじ登る。


 格子窓は掛け金を外せば開くようになっていた。少し開いて覗くと、そこはとても高い屋根の上。


(思い出した。4階の上り階段。あの不思議な階段を上ったんだ……)


 窓から見える景色は、4階からは見えなかった白の館(ヴァイスハイム)の屋根の上が見えるくらい高かった。王城をぐるりと囲う城壁も見えたし、王都の高い所を走る白い水道橋というものもよく見えた。そして月もまだ、それほど大きくないので星がたくさん見えた。


 少し寒かったけれど、窓の外を眺めていた。


「――それで、どう思うんですか? アシスス」


 声がした。それもこんな屋根の上、外からの声。


「どう思うも何も、拙刃(せつじん)は特別な力があるわけでもない。お主も知っての通り、神などと言っていたのはまやかしだ」

「わかってはいますが、他に相談相手が居ないのですから……」


 私が身を乗り出すと、キィ――と格子窓が音を立てる。


「――誰かいるのですか!?」


 外の声は、そう言って窓へと近寄ってくる。

 コトコトと瓦の上を歩く音に、私は怖くなって出窓から降り、後退った。


 窓に立つ人影は帯剣していた。


「――おや。君はどうやってこの部屋に入ったのかな?」


 月光に青白く輝く短い髪が風に揺れた。







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