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赫刃  作者: あああ
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【第2章 第5話:初対決、デュエル拒否】

魔導学園にはひとつの“制度”がある。

それは、「魔導試合――デュエル」。


正式名称は、《立位魔導試合権限制度》。

生徒が生徒に対し、魔法での決闘を申し込む権利。

勝者は、敗者の「所属地位」「講義優先枠」「推薦資格」などの“記録的特典”を一時的に奪える。


言い換えれば、それは――

“記録における立場”を賭けた魔導戦。


だが、澪=クローデルにはその制度が適用されない。


彼女には“記録”がない。

よって奪う地位もなく、奪われる資格もない。


**


だが、それでも。

ひとりの上級生が、彼女に挑んだ。


「私は、あなたのような“例外”をこのまま許すつもりはありません」


そう宣言したのは、選抜課程三年、魔術部副主将――

エヴァン=ローズクラフト。


貴族階級の中でも古参家系。

規律と血統の誇りを重んじる者。


彼は澪に対し、宣言通告を出す。


「澪=クローデル。貴様が“記録不能”であることを以て、学園の秩序を乱す存在と断定する」


「よって、魔導試合を申し込む」


学園全体に緊張が走った。


“挑まれた”澪はどうするのか――

そして“記録されない者”に対して、制度が本当に通用するのか――


学院長アルシェは淡々と告げた。


「試合は成立する。

 ただし――“敗北の定義”が成立しなかった場合、試合は“無効”ではなく、“敗者喪失”とする」


当日。

場所は魔導戦技演習場。観覧席には教師と生徒がぎっしり詰めかけていた。


澪は、何の準備もなく現れた。


刀を鞘に納めたまま。

戦闘衣も着ず、制服のまま。


エヴァンが先に動いた。

詠唱時間わずか1.4秒。雷の球体が空中に浮かび、澪へと撃ち出される。


同時に地面に展開される結界陣――


**


――バチィイイッ!!


**


だが、雷撃は澪に届く前に“空気ごと霧散”した。


雷が消えたのではない。

“雷が雷であるという定義”が破壊されたのだ。


術式構造が、その瞬間に“魔法として存在できなくなった”。


観客席がざわめく。


「な……詠唱は完璧だったはず……!」

「何をした……? いや、“してない”……?」


その間も、澪は一言も発さず立ち尽くしていた。


やがて――


エヴァンが叫ぶ。


「答えろ! 貴様は、何者だ!」


そのときだった。


赫刃の鞘が、かすかに“音”を立てた。


そして、エヴァンの表情が――変わる。


「……え……?」


彼は手の中の杖を落とす。

周囲の生徒がざわめく。


「どうした!?」「立てよ!」


だが、エヴァンは立ち尽くしていた。


そして呆然と、こう呟く。


「……誰と……戦っていたんだ、俺は……?」


彼の記憶から、澪という“名前”が消えていた。


魔導試合終了。

勝敗記録――成立せず。試合履歴、“空白”。


ただ、ひとつだけ残されたのは、

「観客の心に刻まれた“何か恐ろしいものを見た”という記憶」だけだった。


その夜、澪は静かに刀を撫でていた。


「抜かなくても、“名前”って消えるんだね」


赫刃は静かに、確かに“肯定”の震えを返した。


そして、記録官の手元には――こう記されていた。


澪=クローデル

魔導試合履歴:挑戦多数・敗北なし・記録対象外


彼女の名だけが、制度の中で浮かび上がる“異物”として、

確かに――学園の“記録”に穴を空けていった。


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― 新着の感想 ―
2章読んでます。澪にとっての本当の意味で初めての友達が出来たのは嬉しくもあり、今後が恐ろしくもあります( 魔法の術式そのものを消してしまうというか、最初からなかったことにされてしまうの恐ろしい……と…
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