表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赫刃  作者: あああ
PR
13/177

【第1章 第11話:赫刃の封印と異端の儀】

王都セレフェリカ──

重厚な議事堂の最上階、魔導議会の特別室では、

重々しい沈黙が会議を包んでいた。


そこにいたのは、王家直属の魔導卿たちと、聖銀財団の筆頭祭官、そして王族数名。

議題は一つ。


“赫刃・無明の保有者にして異端児” 澪=クローデルの処遇。


「封印だ」


王国の第一王子、ルシアン=アークライトがそう言ったとき、

部屋の空気が一段階、冷たくなった。


「すでに、周囲の空間に“定義の歪み”が発生している」

「記録が失われる症例も確認され、対象と接した者の認識にも影響が出ている」

「このまま放置すれば、国家秩序すら危うい」


それは、議論ではなかった。

既に決定された“処刑未満の封印”。

表向きは「保護」とされているが、実態は完全な“隔離”と“管理”だった。


聖銀財団は特に強硬だった。


「この世界において、“名を斬る”という行為は、神の定義に対する反逆に等しい」

「我らが教典においても、“存在を名により束ね、記録により清める”と明記されている」

「名を拒む存在は、祝福を拒む“異端”である」


彼らの理論は、古く、そして強い。


“存在”とは“名”であり、“名”とは“祝福”であり、

それを斬るということは――神の支配そのものを否定すること。


赫刃の持ち主が“無明”と呼ばれていること自体、もはや預言の範疇だった。


王家と教会の利害は一致していた。

澪は、あまりにも“完全”すぎる。

愛され、恐れられ、記録を拒む力を持つ。


それは“偶像”でも“兵器”でもない。

――“支配できない存在”。


ゆえに、封印が選ばれた。


封印の形式は、“異端の儀”。


対象の名を、七つの聖句で覆い、

四種の魔導金属で編んだ封印具を心臓の真上に装着する。


それにより、**“名の再定義”と“記録の固定”**を強制する。


存在を“神の記録帳”に縫い止め、彼女を“祝福されたもの”へと矯正する術。


だがそれは、澪の“本質”――

自由に斬る者としての性を“殺す”ということだった。


封印を執行するのは、“聖銀財団直属封印騎士団シグナ・セラフィム”。

かつて“神喰らい”とまで呼ばれた異能者を三日三晩かけて“定義し直した”という逸話を持つ。


その作戦名は――


《赫ノ嬰児記録改編儀・第一段階》。


議会は解散した。

その結論は王の印とともに、密命としてクローデル家に届く。


澪の父、ロジオン=クローデルは、書簡を読んで静かに笑った。


「世界は、娘を恐れたか。……ようやく、面白くなってきた」


だが、その笑みの裏に、

愛でも忠義でもない、**「恐れ」でも「怒り」でもない、“戦の気配”**が滲んでいた。


そしてその夜。

澪は夢の中で、“神の声”を聞いた。


「そなたは、名を拒みし者」

「ならば、名なきまま世界を渡り歩くがよい」


その声が、誰のものだったのかはわからなかった。

ただ――赫刃が震えていた。


(……また、斬らなきゃならない日が来るんだね)


澪は目を開き、微かに笑った。


「面倒だな。神まで出てくるのか」


その声に、赫刃がほんの少し、喜ぶように共鳴した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ