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4話:王都への旅路



あっという間に王都に向かう日が来て、わたくしはお父様とお母様と一緒に馬車に揺られております。今世では初めてのお出掛けですので、わくわくが止まりません。



最近では前世の記憶と今世のわたくしが混ざり合い、境界が分からなくなってきました。自我の落とし所が見つかった、というべきなのでしょうか。年相応の感覚で見るもの全てに新鮮な感動を覚えます。




「あ、街が見えてきました!お父さま、次の休憩はあちらですか?街歩きの時間はありますか?」




「ふふ、シアは外出が楽しくて仕方ないのね。日程にも余裕がありますし、次の街の滞在はいつもより長くしてみては?」




「そうだな。そろそろうちのお姫様を歩かせてあげないと。馬車の中で走り出しそうだ」




「いやだわ、お父様。わたくしはもう立派な淑女ですのよ」




ぷくっと頬を膨らませてみせれば、はははっ、と破顔したお父様はわたくしの手を取って恭しくお辞儀をして見せます。




「私めにあなた様をエスコートする栄誉をいただけますか、レディ?」




「えぇ、よろしくってよ」




「…あら、それでは淑女ではなくて稀代の悪女のようだわ」




そうして皆で笑い合っている内に街に到着します。馬車を降りる前にお母様がボンネットをわたくしに被せるよう侍女に言い付けます。あごの下のリボンをしっかりと結んでおくように、とも。フリルとレースでいっぱいのボンネットは視界が遮られ、少し窮屈に感じます。物言いたげに見つめるわたくしにお母様は言います。




「淑女たるもの、みだりに顔を見せてはならないのですよ」




「…はい、お母様」




唇を尖らせたわたくしの鼻をちょん、とつついてお母様はにこりと微笑みます。そして自身もベール付きの帽子を被ると、お父様の手をとって優雅に馬車から降ります。わたくしはまだステップに足が届かないので従僕に抱かれて降ります。



お父様とお母様と手を繋いで沢山のお店を見て回って買い物を楽しんだ後はカフェへ向かいます。わたくしたちの席はテラスに続く大きなガラス窓の近くでした。今日は良いお天気なので窓が大きく開かれ、爽やかな風と開放感に溢れています。



こちらでは採れたての果物で作ったジュースがいただけるそうです。早く来ないかしら、と待ち遠しく思っていると、道行く親子連れがお互いに買い物袋を持って笑いながら歩いていくのが見えます。微笑ましい様子を眺めていると、子どもが石畳につまづいて転んでしまいました。持っていた袋の中の果物が辺りに転がっていきます。




「拾うのを手伝って差し上げて」




側に立つ侍女に言いつけて、わたくしは親子の方に向かいます。子どもは母親に抱き起こされていましたが、転んだ時に擦りむいたのか膝に血が滲んでいます。




「…よろしかったら、こちらを使ってください」




そう言ってハンカチを差し出すと母親はおろおろと戸惑ってしまい、受け取ってくれそうにありません。わたくしは子供のそばにかがみ込んで怪我の様子を見ると、そっとハンカチを傷に当てます。




「お、お嬢様…っ、ハンカチが汚れてしまいます…っ!?」




「ハンカチは汚れを取るためにあるのです。どうぞお気になさらないで。こちらは差し上げますわ」




幸い傷は浅く、汚れもほとんど付いていなかったので後できれいに洗えば跡も残らずに治りそうです。




「…ご親切に感謝します、お嬢さ…まっ…!?」




丁寧なお礼を言っていた母親がひゅっ、と息を呑み、その腕に抱かれた子どもは目を見開いてぱちぱちと瞬きを繰り返しています。見たことない反応に首を傾げつつ、わたくしは親子に声をかけます。




「どうかしましたか?傷が痛みますか?」




「い、いえっ、何でもありませんっ。どうも、ありがとうございました…っ!!」




慌てた様子で言った母親は子供の頭を手で押さえ、地面に額が付きそうなくらいのお辞儀して動かなくなってしまいました。




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